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単なる価値観の違いじゃない…「おごりたい」男性と「おごられたい」女性がすれ違う根本原因

プレジデントオンライン / 2021年10月27日 12時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kieferpix

■「おごり・おごられ論争」に新たな火種が…

いつまでも終わらない論争のひとつに「デートでは男が払うべきか?」という「おごり・おごられ論争」というものがあります。「住居は賃貸か? 持ち家か?」と同じように、時折、思い出したようにこの話題がネットを賑やかすのですが、また新たな論争の火種となるかもしれない調査結果が発表されました。

これは内閣府男女共同参画局が実施した「令和3年度 性別による無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)に関する調査」といわれるもので、20代~60代の全国男女約1万人が対象者です。無意識の思い込みを調査したというわりには、質問にそのまま回答するだけの意識調査形式となっていて、これで無意識下のバイアスが検出されるのかどうかは疑問ですが、それは置いておいて、今回のテーマである「おごり・おごられ論争」に関わる項目に着目してみましょう。

■「男がおごるべき」実は男性側の理論だった?

質問は「デートや食事のお金は男性が負担すべきだ」となっており、それに対し、「そう思う」「どちらかといえばそう思う」「どちらかといえばそう思わない」「そう思わない」の4段階で回答するものです。「そう思う」「どちらかといえばそう思う」というTOP2を「男がおごるべき派」とすると、全年代平均で男性37.3%、女性22.1%という結果となりました。

内閣府ではこの質問をした調査ははじめてらしいですが、私は2015年から継続的にこの調査を男女配偶関係別に実施しています。それによると、多少のバラつきはありますが、大体どの年でも男性は35~40%、女性は20~25%の間におさまっています。ほぼ内閣府の調査と同じと言えます。

さて、ここで、違和感をもった読者もいるのではないでしょうか?

そもそも「おごり・おごられ論争」の論点は「男はおごるものだと主張する女」vs「女はいつもおごられて当然と思うなという男」という構図だったのではないでしょうか。しかし、この調査の男女差をみると、「デートでは男がおごるべき」と考えているのは、女性のほうではなく、男性のほうが多くなっています。言い方を変えると、「男はおごりたい」「女はおごられたくない」ということになるわけです。「おごりたい男」が多数なら本来「俺がおごるって言ってるのにどうして断るんだよ」的な論争になるはずなのに、実際は正反対です。

なぜ、そんな奇妙な現象になるのでしょうか。

■「おごるべき」の意識が強いのは中年層の未婚女性

その前に、内閣府の調査では触れられていない配偶関係別の状況を深堀りしてみたいと思います。ポイントは、未婚男女、かつ、年収別に「おごりたい・おごられたい」意識に違いはあるのだろうかという点です。当然、「おごりたい男」というのは年収も高いはずだと思うでしょう。

まず、40~50代をご覧ください。

やはり、男性は年収が多いほど「おごるべき」意識が高くなっており、未婚男性全体の平均を超えるのは年収500万円以上で45%となります。既婚男性でも同様です。一方、40~50代女性は年収にかかわらず一定ですが、すべて女性全体の平均を上回るとともに、500万未満までは男性より上回っています。未婚女性の場合、20~30代の若年層より40~50代の中年層のほうが「男がおごるべき」意識が高いということになります。年収が高いほど「男がおごるべき」意識が下がる既婚女性とは真逆の傾向です。

「男がおごるべきだ」男女未既婚年代別比較

■男性の「おごりたい」意識は低年収と高年収で二分化

興味深いのは20~30代のほうです。300万円未満の未婚男性低年収層がおごれないのは分かるとして、500万円以上の高年収層も低く、「おごりたい男」は真ん中の中間層に集中しています。既婚男性と比較すると真逆になっています。既婚男性は、むしろ低年収と高年収が「おごりたい」派です。同じように20~30代の未婚女性も未婚男性とまったく同じで、中間層が「おごるべき」となっています。

結婚適齢世代である20~30代未婚男女だけに着目すると、実は、同じ年収層同士の「おごるべき」価値観はほぼ一致していて、男女が揉める要素はないといっていいわけです。つまり、ネット上でいがみあっているのは、「男がおごるべきだ」と譲らない40代以上の未婚女性と、40代以上で「おごりたくない」低年収男性との間で起きている中年未婚男女戦争ではないかと推測できます。40代以上の高年収未婚男性は「おごりたい」派ですが、その対象は若い女性に向いていると思われます。

■そもそも付き合うこともない男女が喧嘩しているようなもの

実際、婚姻に結びつくカップルというのは、年齢や年収が近い同類婚が多くなっています。当連載の<岡村隆史さんの「年の差婚」を羨ましがる中年男性に降りかかる現実>でも解説したように、かつてのような、夫年上婚は激減しています。出会いのきっかけも、職場や友人の紹介が今もなお多い。

すると、当然同類コミュニティの中でのつながりになるため、年齢が同じなら年収もほぼ同じになる可能性が高まります。要するに、リアルな世界において、マッチングする同士では「男がおごるべきだ」「いや、女も払うべきだ」なんて諍(いさか)いは起きないわけです。

ずっと続いてきた男女間の「おごり・おごられ論争」とは、極論すれば一生一緒に食事をすることも、ましてや、付き合うこともない男女同士が喧嘩しているようなもので、まったく意味がなかったことになります。

■「ファミレスごときでおごられても…」と言うけれど

そして、もうひとつ着目すべきは、未婚男性と逆に20~30代で結婚した若い低年収既婚男性が「おごるべき」だと強く考えているという点です。

300万円未満の年収で男性が全額おごるのは大変だと思いますか? しかし、それこそ、他人の価値観を自分の価値観だけで判断してしまう悪い癖です。彼らは高級フレンチレストランには連れていけないかもしれませんが、自分の払える範囲のお店で精一杯おごります。それがチェーンの居酒屋であろうと、ファミレスであろうと関係ありません。そして、どういうお店であろうと、自分が支払うという気持ちに対して、素直に「ありがとう」と言える相手を伴侶として選ぶのでしょう。

オムライス
写真=iStock.com/iam555man
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/iam555man

「ファミレスごときでおごられても、自分が安くみられているようで嫌」という女性はそもそも好きにはならないから安心してください。そもそも出会うことすらないでしょう。

最後に、せっかくなので、「男がおごるべき」という考えに影響を与えている男女の意識的・性格的特徴を一覧にしてみました。各項目を点数化して未既婚男女別にランキング化、▲表示は「男がおごるべき反対」が上回るということです。男女の共通点と違い、未既婚での違いも明確になります。

「男がおごるべき」賛成派の意識特徴

■「おごるべき」と考える人ほどモテるし男らしさを気にする

「男がおごるべき」という意識が強いほど、男女ともに恋愛強者(モテる)で男女規範意識(「男は男らしく、女は女らしく」)が強い。おもしろいのは、「容姿に自信ある」女性ほど「男がおごるべき」と考えていて、反対に「容姿に自信のある男」はおごりません。つまり、おごる傾向が強い男性とは、容姿に自信はないが結果として恋愛強者となった男といえます。

「男がおごるべき」と考える女性の上位には、「他者優越感」「承認欲求」などが並びます。おごられたい女性にとって、それは単に食事代を払ってくれるというものではなく、自己の満足感を高めるための手段でもあるわけです。それを心得ている男性は、たとえ容姿に自信がなかろうが、勝負できる。所詮、金の問題だと言ってしまえば身も蓋もありませんが……。

■「男らしさ・女らしさ」は撤廃すべき悪なのか

ついでに解説すると、「女にはおごらない未婚男」の特徴とは、「知性に自信がある」「損得勘定で物事を考える合理主義者」「オタク気質」というものになります。オタク趣味を持ってそちらにお金を費やしていれば、そもそも「デートで全おごり」という行動も出費も合理的ではないのです。

「デートで男がおごるべきか否か」に普遍的な正解などありません。どんな環境にいるどんな2人の関係性なのかによって相対的に決まるものであり、論争自体が愚かなことなのでしょう。

昨今、男女平等が叫ばれ、「男らしさ・女らしさ」という男女規範はまるで撤廃すべき悪のように言われています。「男は男らしさから降りろ」と言う人までいます。しかし、こと男女間の恋愛において、それぞれが自分の男らしさ・女らしさを訴求しようと努力することは決して否定されるべきことではありません。良し悪しの問題ではなく、少なくとも、男女規範の強さと恋愛強者度とは強い相関があることは事実です。

さて、あなたはおごりたいですか? おごられたいですか?

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荒川 和久(あらかわ・かずひさ)
コラムニスト・独身研究家
ソロ社会論及び非婚化する独身生活者研究の第一人者として、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌・Webメディアなどに多数出演。海外からも注目を集めている。著書に『結婚滅亡』(あさ出版)、『ソロエコノミーの襲来』(ワニブックスPLUS新書)、『超ソロ社会―「独身大国・日本」の衝撃』(PHP新書)、『結婚しない男たち―増え続ける未婚男性「ソロ男」のリアル』(ディスカヴァー携書)など。韓国、台湾などでも翻訳本が出版されている。新著に荒川和久・中野信子『「一人で生きる」が当たり前になる社会』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)がある。

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(コラムニスト・独身研究家 荒川 和久)

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