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警戒しながらも「アラブ皇太子と友達の男」にロレックス転売話で440万円騙されるまでの一部始終

プレジデントオンライン / 2021年11月15日 11時15分

※写真はイメージです(本文とは関係ありません) - 写真=iStock.com/felixmizioznikov

「海外から高級腕時計ロレックスのデイトナを仕入れて、買い取り店で売れば儲けられる」――。30代女性はマッチングアプリで出会った自称資産家の40代日本人男性と対面した際、そんな話を持ちかけられ、時計2本分として後日、計440万円を男に振り込んだ。ジャーナリストの多田文明氏は「転売することで計360万円儲かるという話でしたが、時計は女性の元に届かず、男はすでに海外出国していました」。なぜ女性は見ず知らずの男の話を信用したのか――。

■警戒しながらも…怪しい「おいしい話」に乗ってしまうまでの一部始終

今年9月、27歳の男が警視庁に逮捕されました。この人物は「海外から高級時計を仕入れて、買い取り店で売れば儲けられる」と20代男性に嘘の投資を持ちかけて約200万円をだまし取った疑いがあります。被害者は200万円を借金して支払ったといいます。

このニュースをある30代の女性に見てもらったところ、「私からお金をだまし取った相手の顔とは違います。ただ『時計を購入すれば、儲けられる』との手口はよく似ています」と話します。

どうやら、高級時計ロレックスの転売を装い、お金を詐取する手口が横行している可能性があります。

女性は今年初めに、マッチングアプリで出会った40代男性から、ロレックスの時計の購入を持ちかけられて、400万円を超える被害に遭っています。

都内で会った男は次のようなことを言ったそうです。

「自分はドバイに高層マンションを持っており、ドバイを中心に車関係の仕事をしている」
「自分には多額の資産があり、アラブの皇太子との付き合いもある」
「アメリカでアクセサリー事業にも成功して、映画でも主演を務める有名俳優Kとも友達だ」

いかにも怪しい話ですが、女性はそのフレンドリーかつ落ち着いた話し方などから、そうは思わなかったようです。

「今にして思えば、金持ちであり、有名人との交流をしているという嘘をアピールしていたのですね」

そうした会話のなかで、男は、自分にはお金持ちのアラブ人との付き合いがあるので、「ロレックスの時計を優先的に購入できる」とさりげなく話します。まさかこれが詐欺行為への布石とはつゆ知らず、彼女は興味を持って耳を傾けます。

■「今ならロレックスのデイトナが…」1本転売で180万円儲かる話

だまされるかだまされないか。それを分けるのは、タイミングです。ある瞬間、ツボにはまってしまうとあっと言う間に、相手の術中にはまってしまいます。

彼女の場合、最近、エルメスのバーキンやロレックスのデイトナが高値で買い取りされ、高額転売して儲けている人がいるとの話を知人の社長から聞いていました。その時、実際に店を回ってみると、該当商品はどこも売り切れだったそうです。それゆえに、「商品が優先的に手に入る」という男の言葉に聞き入ってしまったのです。

一週間後、再び会った時、男は女性に言いました。

「今なら、ロレックスのデイトナの値段が高くなっていて、400万円ぐらいで買い取ってもらえる。自分なら、220万円で購入できますよ」

その差額分180万円が儲けになります。そこで彼女は「購入したい」と話し、男の口座にすぐにそのお金を振り込みます。彼女はこの時、万が一の時のために、男の運転免許証を本人の承諾を得て写真に撮りました。

その後、「2週間以内には、商品は届く」と男に言われますが届きません。

連絡すると「もう一度、2週間以内に時計を受け取れるように手配した。もしこれよりも配達が遅れてしまうようなら、いったん全額返金する」と話します。

2015年11月、トルコ・アンタルヤの店に並べられた腕時計
写真=iStock.com/Murat Deniz
※写真はイメージです(本文とは関係ありません) - 写真=iStock.com/Murat Deniz

■「100ドル分のビットコインを海外の自分の口座に送金して」

しかし、時計は届きません。ちょうど、この頃、男は彼女に不可解なお願いをしてきています。

「100ドル(約1万円)分のビットコインで、『海外の自分の口座に送金してもらえないか』と言うのです」

理由を尋ねると、「実は稼ぎ過ぎていて、日本の口座には預金しきれない。そこで、アメリカの銀行に口座を開設したいのだが、ビットコインでの入金実績が必要なんだ。上乗せして返金するから、手伝ってもらえないか?」と言います。

彼女は、海外の口座については詳しくないので、「そんなものだろうか」と思います。まあ、1万円程度なら、いいかな。そんな気持ちもあったかもしれません。そして送金すると、後日、1万円に上乗せした額が振り込まれます。

その後も指示を受けて、数回、送金します。そのたびごとに、入金以上のお金が戻ってきました。

しかし、これはわなでした。

出したお金より、多く戻ることを繰り返し見せることで、彼女からの信頼を取り付けていたのです。

■「コロナでドイツの時計屋の発送遅れた」「税関で時計が止まった」

その後、男から連絡があります。

「ロレックスの白デイトナの注文にキャンセル出たから、それをあなたに譲りたい」

しかし最初の時計もいまだ届かない状況です。彼女は断りますが「一週間後に、最初の時計と一緒に届けられるから」と執拗(しつよう)に言われ、会って話すことになりました。

そして男から1本目と2本目の代金計440万円のお金の預かり証にサインをしてもらうことを条件に、彼女は翌日にお金を振り込みます。

しかし、商品は届きません。こうなると儲けが2本購入したロレックスで計360万円出るもくろみで、1本220万円計440万円のお金を男に渡した彼女はいてもたってもいられなくなります。

彼女が矢の催促の電話をするたびに、男は「コロナの影響でドイツの時計屋の発送が遅れている」「税関で時計が止まっていたようだ」などと言い訳をします。謝罪をしながらも、自分に非はないという感じで、のらりくらりとかわすのです。彼女が電話口で烈火のごとく怒ると、「直接、自分でドバイに取りに行く」と。もちろん口から出まかせです。

ドバイのパーム・アイランド
写真=iStock.com/AndreyPopov
※写真はイメージです(本文とは関係ありません) - 写真=iStock.com/AndreyPopov

ついには、男からの連絡もなくなり、彼女は警察に相談します。調べてもらうと、男はすでに国外(アラブ方面)に出国していることがわかりました。しかし、その行方は不明のままです。

■男のマンションを直撃……騙しの実態がみえてきた

彼女は男の免許証の住所を頼りに、マンションを訪れて、この男について管理人に尋ねました。すると、「ああ、半年くらい家賃滞納していたね。警察、弁護士、回収業者などがたくさん出入りしていたよ」と教えてくれました。

彼女にしたことと同じような、お金を借りては支払わない行為を繰り返していたようです。管理人は「今年の*月*日には出て行ったね」と付け加えます。

彼女は、心底驚きました。

その日は彼と会った日だったからです。お金に困り、マンションを引きはらったにもかかわらず、その場所に今も住んでいるように見せかけていた。しかも、借金まみれで、家賃も滞納していたにもかかわらず、「資産がある」「稼ぎすぎている」という真っ赤な嘘をつく。最初から、彼女から金を騙す目的で会っていたとみてよいでしょう。

■被害女性は“愚か”なのか? なぜ、まんまと騙されたのか

なぜ、だまされてしまうのか? と思われる読者もいるでしょう。筆者もそう思いました。単刀直入に聞くと、「自分をだましているようには……とても思えなかったんです」と話しました。

「関西弁で、とてもフランクな感じの明るい話し方でした。まるで昔からの友達のような感じでお願いしてきました」

男は、その時に子供がいることを話し、子育てのエピソードも披露したそうです。彼女は父親として頑張って働いていることに、つい警戒心を緩めてしまったのです。

男に子供がいるのは事実でした。すべてが嘘であれば、話にボロが出るのですが、本当の話に、嘘を交えてくるために、被害者は相手のだましに気づきにくくなってしまいます。

この男がいかに、だましの話術に長けていることがわかります。

「警察からは、他にも被害者がいて同様な相談が寄せられていると聞いています」

彼女は悔しそうに話します。

今、実際に、ロレックスの時計などが高値で転売されています。その事実に嘘の転売話を組み入れて、お金をだまし取る手口が今後も広がる恐れがあります。マッチングアプリなどのネット上で出会った相手から、高級品の転売話を持ちかけられたら……それは身の破滅を招く可能性もある危険な誘いかもしれないと最大級の警戒をする必要があります。

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多田 文明(ただ・ふみあき)
ルポライター
1965年生まれ。北海道旭川生まれ、仙台市出身。日本大学法学部卒業。雑誌『ダ・カーポ』にて「誘われてフラフラ」の連載を担当。2週間に一度は勧誘されるという経験を生かしてキャッチセールス評論家になる。これまでに街頭からのキャッチセールス、アポイントメントセールスなどへの潜入は100カ所以上。キャッチセールスのみならず、詐欺・悪質商法、ネットを通じたサイドビジネスに精通する。著書に『サギ師が使う交渉に絶対負けない悪魔のロジック術』、『迷惑メール、返事をしたらこうなった。』、『マンガ ついていったらこうなった』(いずれもイースト・プレス)などがある。

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(ルポライター 多田 文明)

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