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ナンバー2を押さえる、反対意見は無視しない…マッキンゼー式「人を動かす話し方」3つの鍵

プレジデントオンライン / 2021年11月17日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/boggy22

人を動かすには、どのように伝えればいいのか。コンサルタントの赤羽雄二さんは「人を動かすためのプロセスには、仕込み・仕切り・仕上げの3つがある。全体を把握してポイントを知ればかなり高い確率で結果につながる」という――。

※本稿は、赤羽雄二『マッキンゼー式 人を動かす話し方』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。

■人を動かす話し方には、3つの鍵がある

私のマッキンゼーでの仕事は、クライアント企業の経営改革を支援することでした。

経営改革とは、ビジョン・戦略立案、組織改革、業務改善、経営人材育成などです。通常、月1回は報告会があり、いろいろ提案しますが、最初のうちはなかなか思ったように提案が聞き入れられず、はがゆい思いをしたことも多々あります。

「こんなにいい提案なのにどうして聞いてくれないのだろうか」「どうして伝わらないのだろうか」とさんざん悩み、一方的に提案してもうまくいかないことを嫌というほど学びました。

また、一方的でないとしてもその場で突然提案してもむずかしいということを経験しました。試行錯誤の結果、私が編み出した方法をご紹介します。

赤羽雄二『マッキンゼー式 人を動かす話し方』(クロスメディア・パブリッシング)
赤羽雄二『マッキンゼー式 人を動かす話し方』(クロスメディア・パブリッシング)

それは、「人を動かすためのプロセス」を次の3つに分けて動かすことです。

・話す前の「仕込み」
・話している間の「仕切り」
・話した後の「仕上げ」

これらがうまくできれば、かなり高い確率で結果につながります。うまくいかないときもありますが、確率はかなり上げることができます。

結果を出すプロセスの全体をできるかぎりコントロールすることが可能になるからです。

■普段からの関係構築が効果を大きく左右

【第1の鍵】話す前の「仕込み」

「人を動かす話し方」の第1の鍵は、話す前の仕込みです。相手にとって好ましくない状況、受け入れがたい状況になってから、どのように話し方を工夫しても手遅れになりがちです。

話す前にある程度は整えておく必要があります。スケジュール感などもできるだけ事前に伝えておきます。

他部署から突然何か頼まれても、こちらにも段取りがあるし、部署内の合意形成も必要なので、受けたくても受けられないこともありますよね。そのような前さばきをしておく、ということです。

その場でどう話すか以上に、話す手前の準備、お膳立て、普段からの関係構築が結果を大きく左右します。

関係が悪ければ、あわてて話そうとしても、口をきいてくれることすらむずかしいかも知れません。

「普段あんな態度のくせに、急に会いたいなんて都合のいいやつだな」と思われて終わります。試合前にゲームセットしてしまうようなものですね。不戦敗、あるいは反則負けと言ってもいいかもしれません。

これを防ぐには、普段からの心がけが大切です。ただ仕事やプライベートで、突然接点ができて話さなければならないこともしばしばあります。

この場合は、話す前の仕込みができないので、自分の普段からの姿勢と持てる力で勝負するしかありません。

■望む方向にうまくリードできるか

【第2の鍵】話している間の「仕切り」

仕切りとは、「こちらの望む方向に相手あるいは相手のチームを動かしていくこと」です。

話をしていると、相手が同意したり、反発したり、元気になったり、気落ちしたりします。

それを把握しながら、こちらの望む方向にうまくリードしていかなければなりません。成り行き任せでは目的を果たせないからです。

「話している間の仕切り」は、相手が誰か、何人か、相手との関係がどうかによって大きく変わります。

経営会議での決定を引き出すなど、相手先の会議でプレゼンして望む結論を得るには、会議をうまくリードする(=仕切る)ことが必要になります。

1対1で話している場合でも、相手のエネルギーレベル、気力レベルを常に観察し、最大限上げていくように仕切っていきます。具体的に見ていきましょう。

■相手が2人のときは参同してくれる人に向けて話す

1対1のミーティングのとき

話しながら相手を真剣に観察し、どういう気分なのか、今何を考えているのか、何に引っかかっているのか、などを考え続けます。

事前の想定をベースに話しつつ、相手を観察し、反応によって対応を変えていきます。相手の反応によっては、準備していたシナリオをさらに柔軟に変えていかなければなりませんし、感情的な爆発をうまく鎮めていかなければならないこともあります。

ただ楽しくおしゃべりする、というのはだいぶ違いますが、少し慣れればできるようになります。

1対2のミーティングのとき(2人が同僚)

相手が増える分、若干複雑になりますが、実はそれほどむずかしくありません。

人の顔色と理解度、納得度などを見続けるという意味では、やるべきことが増えますが、2人のうちより賛同してくれる人に向けて話し、心をつかむようにします。

その上で、もう1人の合意を得るように働きかけていきます。

このとき、もう1人が明らかにつまらなそうにしていると危険です。まとまる話もまとまらなくなる可能性がありますので、人の関係や温度感を考えながら、決して放置しないようにします。

さらに注意すべきは、1人がその気になっているということが気にいらなくて、もう1人がそっぽを向いてしまう、ということが結構起きやすい、という点です。

人が合意してくれそうだからといってあまり喜びを表に出さず、抑制した姿勢でもう1人に納得してもらうことが大切です。

■社長以外のナンバー2も取り込んでおく

1対2のミーティングのとき(2人が上司・部下)

2人が上司・部下の場合、通常は上司に話しかけ、合意すればほぼ問題ありません。ただ、上司が部下に任せようとしている場合もあり、そのときは上司にも注意を向けながら、部下に話し、合意します。

部下が合意したら、それを聞いていた上司に対して、若干の補足説明をしつつ、お礼の気持ちを伝えます。

成功に沸くビジネスチーム
写真=iStock.com/Blue Planet Studio
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Blue Planet Studio
1対多のミーティングのとき

相手先の会議に参加して提案する場合は、1人で会議全体を動かしていく必要があります。大人数の会議では、1人ひとりが何を考えてどういう発言をしようとしているかの詳細な状況の把握はむずかしくなります。

その代わり、テーブルでの座っている位置、年齢、他の人への接し方などから誰が一番えらいのか、誰が本当に影響力があるのかを早めに見定めます。

社長は比較的わかりやすいですが、その会議で「社長以外で、誰が本当に影響力があるのか」はよく注意しないとわかりません。

社長が全部決めるなら簡単ですが、ご意見番の経営企画室長が全部取り仕切って意見をまとめるケース、古株の営業本部長が合意しないと進まないケース、皆に意見を言わせて社長が間をとろうとするケースなどがあります。

状況を正確に把握し、その場でもたもたしないために、私は事前に聞けるときは必ず聞くようにしています。相手先の経営会議への突然の出席はあまりなく、事務局や担当者などと事前に話すことが普通なので、そのときに確認できます。

基本的には、その場でポジションが一番上の人に話しかけ、質問されたら答えつつ、本当に影響力がある人を見定めて、合意できるようにしていきます。

ただし、社長であっても、自分だけが納得して部下が不満に思うかもしれないとか、取り残されるとかを気にするので、出席したナンバー2の人にもしっかり話しかけて取り込んでおきます。

この2人の同意を得られれば、ほぼ大丈夫です。

■フォローがないと実際には動き出さない

【第3の鍵】話した後の「仕上げ」

話をして相手と合意できたとしても、その後、物事が期待通り進むとは限りません。話した後が、実は肝心です。

フォローとは、相手が動かざるをえない状況をつくっていくことです。何かを合意してもらう、許可してもらう、程度であればいいですが、組織を動かしてもらう、何かの骨を折ってもらう、という場合は、合意後の丁寧なフォローが不可欠になります。

合意後に忘れていることも多いですし、やろうとしてうまく動かなくて止まったままになるケースも少なくありません。

いい話ができてその気になってくれても、その後、丁寧にフォローしなければ、実際には動き出さないことが普通だと考えましょう。相手は別に悪気があるわけではないのです。

動き出さない理由はいくつもあります。

1.相手が合意後、部下に指示をし、組織を動かそうとしている場合

いかにも動きそうですが、実際は、しっかりフォローしないと前に進みません。

組織は、普段と違う動き、新しい動きをすることが決して簡単ではないからです。そもそも、上司から部下に、部下からその部下にしっかりとした指示を下ろさないと動きませんし、部門間の相互調整も必要です。

十数人の組織でも業務プロセス、仕事の流れなどは何らかの形で決まっていますので、それを変えたり、新たに動いたりすることそのものに抵抗を示します。

組織センスに優れた一部の経営トップはこの点を理解していますが、多くの方は自分が指示をすれば組織が動くと思っています。

部下は、指示を受けていつも動いたふりをするので、トップは長年、動いているものと思い込んでいるからです。ただ、実際はトップの指示の一部を選んで、通していることが多いのです。

少しでも調整が必要だったり、トップのわがままに見えたり、一部の部下の価値観に反していたりすると、ごく簡単なこと以外、無視されがちなのはこれが理由です。

もちろん、トップの指示を表だって無視できないので、「承知しました」と返事はするわけですが、そのあと、なし崩し的に放置します。

あるいは、責任を果たしたとばかり、さらに自分の部下に指示しながら、「いつものことだから、ほうっておけばいいよ」的なメッセージを伝えたりもします。

経験のない人は、経営者や組織の実力者が合意してくれたと安心して何もせず待つことが多いですが、それで動くことは期待できないと思ったほうがいいです。

■反対意見を無視しての強行は好まれない

2.組織内に反対意見があり、かなりの調整が必要な場合

組織内の反対意見をなだめたり、場合によっては反対者を排除したりしないと前に進まないこともあります。

経営トップは、自分がいいと思っても、組織内の反対意見を無視しての強行をあまり好みません。相当に強力なトップでもかなり気をつかいます。

例えば、ある画期的な営業強化プログラムの導入を社長が決断しても、古参の営業本部長が渋ることはよくあります。

社長は、営業本部長の仕事がなくなるわけではないこと、営業の本質がぶれてしまうわけではないことを説明し、何とか納得させます。

無理に導入させても、明らかに使われないからです。また反発されて、より上の層にチクられたりしたら、目も当てられません。

したがって、こういうことまで考えた上で、こちらからのフォローやトップへの助言、あるいは経営幹部・社員への説明会などが不可欠になります。

■ばかばかしいと思うと気持ちは相手に伝わる

3.相手が心底合意してくれたわけではなく、「原則合意」だった場合

心底合意したわけではなく、「そこまで言うのだから、その熱意を買ってのいちおうの合意」や「合意しておかないと世間体が悪いので合意」もよくあるケースです。

その場では「合意」であり、相手もそう言ってくれていても、実際はやっと出発点に立っただけです。こういう場合は、出発点から2合目、4合目、7合目とフォローしながら進めていきます。

このプロセスを楽しみながら進めていかないと、到底やっていられません。義務的に感じたり、内心でばかばかしいと思ったりしていると、その気持ちが相手に伝わってしまい、態度が硬化しがちです。

相手が合意するだけで特にアクションの必要がない場合もあります。例えば、マンション管理組合の運営方針を理事会に提案し、決めていただくといったときです。ただこの場合でもリーダー、ボス的な存在の理事とまず話し、次に他の理事の意見も聞いてまとめたあとに提案したほうが断然スムーズにいくことが多いです。

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赤羽 雄二(あかば・ゆうじ)
ブレークスルーパートナーズ マネージングディレクター
東京大学工学部を1978年に卒業後、小松製作所で建設現場用ダンプトラックの設計・開発に携わる。1983年よりスタンフォード大学大学院に留学し、機械工学修士、修士上級課程を修了。1986年、マッキンゼーに入社。2002年、「日本発の世界的ベンチャー」を1社でも多く生み出すことを使命としてブレークスルーパートナーズを共同創業。著書に『ゼロ秒思考』『速さは全てを解決する』(ダイヤモンド社)、『マンガでわかる! マッキンゼー式ロジカルシンキング』(宝島社)、『成長思考』(日本経済新聞出版社)、『アクションリーディング』(SBクリエイティブ)などがある。

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(ブレークスルーパートナーズ マネージングディレクター 赤羽 雄二)

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