「新規営業が驚異的な確率で成功する」電話口で営業コンサルが使っていた"最初のひと言"
プレジデントオンライン / 2021年12月23日 9時15分
※本稿は、大塚寿『できる人は、「これ」しか言わない』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。
■5回に1回は受注できた「最初のひと言」
独立直後、オーダーメイド研修を手がける会社を設立するも、顧客がいるわけではありません。研修会社も山ほどありますから、その中で顧客を開拓していくには、いかにキーパーソンに会うことができるかがポイントでした。
当時はまだ電話営業が一般的でしたから、とにかくひたすら企業に電話しまくるわけです。とはいえ、そもそも受付の人が担当者につないでくれるとも限りませんし、キーマンにたどり着けても会ってくれるとも限りません。「じゃあ、資料送っておいてください」「興味があったらこちらから電話します」という断り文句であしらわれてしまうのが関の山。おそらく、100件電話をして3件アポが取れればいい、というのが当時の常識だったと思います。
しかし、私はこの電話営業で受注率19.8%という数字をたたき出しました。つまり、5回に1回は受注できる。会ってくれるのではなく、受注できるのです。これがいかに驚異的な数字かは、新規開拓の営業をしたことがある人ならおわかりいただけると思います。
では、その秘訣は何かというと、電話での最初のひと言にあったのです。
具体的には、電話口に出た人に対し、このように伝えたのです。
「リクルートOBでMBAホルダーの私が御社のケースメソッド研修をオーダーメイドでお作りします」
キーワードはゆっくりと、間を取りながらも一気に言い切るのがコツです。実際、私は何度も何度も練習し、よどみなく言えるようにしていました。
■「フックの数」をなるべく増やす
ポイントはフックとなる言葉が、一つではなくいくつも入っていることです。どの言葉が刺さるかは人それぞれ。「リクルート」「MBA」が刺さる人もいれば「御社の」「オーダーメイド」が刺さる人もいるはず。なるべく多くの接点を作り、それを最初に伝えることで、相手の興味関心を一気に惹きつけるのです。
もちろん、一つひとつの言葉に引きがあるのは当然です。リクルートという言葉は今も昔も研修最大手として人事系の人には効果抜群ですし、MBAも今と比べてあまり一般的ではありませんでした。「オーダーメイドで」という言葉は、相手に特別感を抱かせるキーワードになりました。
ちなみにこの営業電話が業界でも評判となり、私は「研修業界のフェラーリ」と呼ばれることになりました(「オーダーメイド」と何度も繰り返していたから、同じオーダーメイドのフェラーリと対比されたのです)。
あなたが伝えたいことの中で、相手が特に注目をするであろう言葉はなんでしょうか。そして、それを一つだけでなく、三つでも四つでも重ねて、一気に言い切る。それが電話営業のポイントです。
このアプローチにより、たった一人の会社が上場企業を含む百数十社の研修を受注。その中には日本を代表する企業も数多くあり、中でも「◯◯社を制するものが日本を制す」とまで呼ばれていたある会社からも見事に受注し、その後十数年にわたって研修を担当することができました。
思い返しても、営業において「これ」しか言わないという決めゼリフを使ったからこそ、今の自分があると思います。
■売れる営業と売れない営業の根本的な違い
売れる営業と売れない営業の違いは何かをひと言で表現しろと言われたら、こう答えます。
「売れない営業は製品を語り、売れる営業はベネフィットを語る」
これもまた、実例を見てもらったほうが早いでしょう。食品加工機械を扱う会社の例です。
×「この製品は今期、弊社が最も力を入れているもので、従来の2倍のスピードで野菜のカットができる上に、対応できる野菜の種類も弊社従来品の3倍に。消費電力も抑えられていますから、エコでもあります。また、サイズも従来品の4分の3に小型化することに成功しました」
◯「この製品を導入してもらえれば、野菜のカットなどの下準備の時間が半分になりますよ。サイズも小さいのでスペースも広がります」
前者は自社の製品の性能をこれでもかと羅列していますが、すべて「売り手目線」であることがおわかりいただけると思います。
■ベネフィットを語れば短い言葉でより強い印象を与えられる
特に最初の「今期最も力を入れている製品」のくだりは、買い手側にとっては「知らんがな」という話ですが、世の中の営業パーソンは往々にしてこうしたセールストークを使いがちです。「今イチオシの商品」「目玉商品」とは、言ってみれば「自分たちがただ売りたいだけの商品」と同義であることに気づいてください。
一方、後者の例では、「準備の時間が半分に」「スペースも広がる」と、相手にとっての利益(ベネフィット)を伝えていることがおわかりいただけると思います。こうすることで相手には、実際にその製品を導入した際のメリットが、イメージとともに伝わります。それが大事なのです。
「売れない営業は製品を語り、売れる営業はベネフィットを語る」という意味がおわかりいただけたかと思います。
語るべきは製品そのものではなく、それによって顧客にもたらされる利益(ベネフィット)。それを端的に伝えるほうが、長々と製品を語るよりもよほど短い言葉でより強い印象を与えることができるのです。
■ベネフィットは「1本」に絞れ
さらに言えば、「悪い例」では、情報をあれもこれもと詰め込みすぎです。これでは「なんかいろいろすごいらしいけど、何がすごいのかよくわからなかった」という印象になってしまいます。
やはり訴求力を高めるには、最も相手に刺さると思われるベネフィット1本に絞ったほうがいいでしょう。
展示会に行くとよくあるのが、大きなスペースを取ってあれもこれもと製品を紹介しているブースには閑古鳥が鳴いているのに、狭いブースでたった一つの製品を紹介しているところには人だかりができていること。これもまた、「ベネフィットは絞ったほうがいい」という好例だと思います。
もし、あなたが扱っている製品のベネフィットが1本に絞り込むことができなかったら? それはひょっとすると、製品自体のコンセプトがぶれているのかもしれません。
あれもこれもではなく「ここがすごい」で勝負する。それは、営業だけではなく製品作りにも、さらに言えばあらゆる企業に求められていることなのだと思います。
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営業コンサルタント
1962年群馬県生まれ。リクルートを経て、サンダーバード国際経営大学院でMBA取得。現在、オーダーメイド型企業研修、営業コンサルティングを展開するエマメイコーポレーション代表。著書に、『リクルート流 「最強の営業力」のすべて』『法人営業バイブル 明日から使える実践的ノウハウ』『50歳からは、「これ」しかやらない 1万人に聞いてわかった「会社人生」の正しい終わらせ方』(以上、PHP研究所)や、『40代を後悔しない50のリスト』(ダイヤモンド社)など多数。
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(営業コンサルタント 大塚 寿)
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