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「ご挨拶だけでも」という営業トークはもう通用しない…これからAIに淘汰されるダメ営業マンの共通点

プレジデントオンライン / 2022年6月16日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/AmnajKhetsamtip

なぜ営業は「きつい仕事」と言われるのか。エグゼクティブ営業コーチの河合克仁さんは「『売りたい』という本音を隠してしまうとキツくなる。営業の仕事は『51%の真心と49%の下心』から始めていい」という――。

※本稿は、河合克仁『今日からできる ゼロストレス営業』(すばる舎)の一部を再編集したものです。

■「話を聞くだけでも結構ですので」のウソ

営業パーソンが口癖のように口にするこうしたセリフ。

・ご挨拶だけでもさせていただければと思いまして
・話を聞くだけでも結構ですので
・(商品/サービスの)ご紹介だけでもできればと思いまして

定番のセールストークです。……が、こうした言葉って本心でしょうか?

十中八九、本心ではないですよね。本音はシンプルに、

・買ってください!
・今、契約書にサインしてください!
・紹介もお願いします!

ではないでしょうか?

でも、本心を伝えたら、会ってもらうことすらできなくなってしまうのでは……。だから、「せめてお会いするだけでも」というニュアンスのトークが口から出てしまうことはあると思います。しかし、このように本心でないことをオブラートに包もうとすると、営業はしんどいものになっていきます。

そもそも、相手にもバレていますよね。営業の本音が。自分も、そんなことはわかった上で、つい言ってしまう……。その違和感の積み重ねがボディーブローのように効いてくる……。これが「営業がキツい仕事」と言われる理由の一つです。

■まずは、51%の真心と、49%の下心でいい

では、どうすればいいのでしょうか?

私は、「99%の真心と1%の下心」というスローガンをおすすめしています。下心は、あっていいのです。

むしろ、売りたいという本音は隠さなくて構いません。

「この場で決めていただけたら……嬉しいのですが」と伝えてもいいのです。

でも、それ以上にお客さまの立場で提案したり、お客さまのためになることは何だろうと考えて行動する割合を増やしたりしていくことで、営業はラクになり、結果もついてくるようになります。

まずは、51%の真心と、49%の下心。

「あわよくば契約につながったり、他のお客さまにつながったりしたらいいなぁ」というくらいのスタンスで、営業をしてみることをおすすめします。

真心というのは、お客さまにへりくだってご機嫌を伺う、ということではありません。自分が相手のためにできることを考えてみる、その割合をだんだん増やしていきましょうということです。

■営業トークをそのまま家族にできるか

例えば、お客さまの話を真剣に聴くことだってその一つです。

もしもお客さまが自分の家族だったら、親友だったらどんな提案をするのか?

自分がお客さまの立場だったら、どのような関わりをしてもらえたら嬉しいか?

そのように考えて動くことが真心による行動です。値段も機能も考慮した上で、ベストな提案は一つ。でも、予算感や優先順位で、2、3の選択肢があったほうが決めやすいでしょう。

本音を交ぜながら、お客さまのことを考えるとはどういうことか?

これは、「今の営業スタイルのままで、家族に話したり、提案したりできるか?」が基準としてわかりやすいと思います。

あなたがいつもしているままで、家族をはじめとする、あなたの身近で大切な人に伝えられますか? ということです。

■無理なく続けるには自然体であるべき

私が尊敬する経営者のお一人であるB社長は、創業した会社を上場まで導き、その後は完全に事業転換をされ、新たな分野で活躍をされています。

B社長はどうして事業転換をされたのか? お話ししてくれたのがこんなことでした。

「会社を上場させた時には、『すごい活躍だね』とまわりに祝福されたけど、正直、きつかったなぁ。誇りを持って事業を行ってはいたけど、じゃあ、家族にそのサービスを使ってもらうとなるとちょっと……って躊躇しちゃってたなぁ、正直。利益を追求したり、規模を拡大したりっていうのは、企業としては正当なこと。だけど、それが『お客さまに本当に喜んでもらいたい』っていう気持ちからきていたかというと、だいぶ違っていたかなと思うんだ。

でも、今は『必要としてくれる人たちのために』っていう思いから事業を組み立てて、社員やパートナーにも還元できているっていう自負もあるし、うちの商品をぜひ使ってほしいと心から納得感があって仕事ができているんだ! 家族に提案どころか、良い事業じゃないかって、妻や父にも手伝ってもらっているくらいだよ」

この考え方は、営業でも同じことが言えます。やはり、無理なく続けていくことを考えると、自然体をベースにして、お客さまと接していく方法が一番満足度も高く、いい結果につながると私は考えています。

■営業は「そのうち消える仕事」ではない

前置きが長くなりましたが、これまで述べてきた「真心」こそ、営業という仕事が持つ唯一無二の価値であり、スキルだと私は考えています。

営業という仕事は、「未来になくなる仕事」としてよく挙げられます。需要も供給も高度なAIで管理するようになれば、間に入る営業はいらなくなる、ということです。確かに今後、必要とされなくなる営業パーソンはたくさん出ることでしょう。

システムやIT、ロボットに頼れば「ミスなく、完璧に、滞りなく」ということはできるようになります。しかし一方で、そうして機械化が進んでいくほど、かえって「人を介してものを買いたい」と考える人も一定以上出てくるのではないでしょうか?

今でも、商品はネット販売ではなく、リアルな店舗で買いたい。本は電子よりも紙で読みたい。おいしいものは出前ではなくお店で食べたい。といった趣味嗜好があるように、人とのやりとりが与えてくれる安心感や楽しさ、気づきなどは機械化が進むほど重視される気がしないでしょうか?

より複雑な商品であったり、高価なものであればあるほど、「どこで誰からのおすすめで買うか?」が大切になることでしょう。「プロポーズ時の結婚指輪、サイズもぴったりだったからメルカリで買ったんだ!」とは、なりませんよね。

定期的な購入は通販であったり、本でもネットで購入する機会が増えましたが、実際の書店に行くと思いもよらぬ新たな本との出会いもあります。レジは自動化されてきていますが、本選びのアドバイスをくれる「コンシェルジュ」さんがいる書店もあるほどです。

コンシェルジュサービス
写真=iStock.com/Pornpak Khunatorn
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Pornpak Khunatorn

つまり、営業という仕事がなくなるのではなく、「営業に対する意味や期待が変わる」ということになるのです。ですから、そんな未来を見据えた時に営業で重要なことは、決まったマニュアルに従うことだけではありません。

・商品の説明を丁寧にできる
・「ほしい」とお客さまに言われた商品を手配する
・昨年まで購入いただいたものと同じものを再度提案し、購入いただく

このような仕事は、残念ながら淘汰(とうた)されていってしまうでしょう。これらはいわば予測可能な作業であり、機械やAIに置き換えられても誰も困らないからです。

一方で必要とされるのは、「自分の気持ちをくんでくれる」「自分では気づけていないことに気づかせてくれる」「思わずワクワクするような提案をしてくれる」など。つまり、前述した「真心」のある仕事ができる人なのです。

■マニュアルに固執する人はトップセールになれない

「昨年まで○○を購入されていた方には、さらに△△の特徴を強調した□□というモデルと、よりマイルドで親しみやすい××というモデルがおすすめなのですが、以前、●●さまは、『▲▲』とおっしゃっていたと記憶しているので、□□がぴったりかと思います。一度お試しになりますか?」

このような会話は、お客さまとのお付き合いの中で生まれてくるメッセージです。

今までの成果指標ならば、短時間に、高単価で、できるだけたくさんの商品・サービスを売る営業パーソンが「トップセールス」とはやし立てられてきました。

しかし、これからは会社に評価される営業ではなく、お客さまに愛される営業こそが必要とされ続け、長期間にわたって活躍でき、営業成果も年々上がっていく。そして、「結果的にトップセールスになっていた!」という人が重宝されていくだろうと私は考えています。

そのためには、マニュアルどおりに営業をするのではなく、「マニュアルを見直してみよう」ということです(マニュアルが存在しない場合も同じで、いつものトークを疑ってみてください)。

そもそもマニュアルやトークの型というのは、組織のためにあることが多いのではないでしょうか。組織における営業の役割とは、近視眼的に見れば「組織に利益をもたらすこと」。もちろんそれは企業の存続や繁栄には大切なことで、全営業パーソンが目標を達成していくことは組織として健全だと言えます。

しかし、考えていただきたいのは、そこにどれだけのお客さま視点があるか? です。

■「お客様目線の販売」の実例

例えば高級車販売をする会社で、「客単価の目標を達成するために、乗り換え時には1ランク上位のモデルか、同等のモデルから提案を始める」というマニュアルがあったとしましょう。

売上を上げることは会社には大事なことですが、お客さまにとっては必ずしもそうではありません。このお客さまには必要なさそうだ、と感じた場合にはマニュアルどおりに進めるのではなく、あえてこんな聞き方もできるでしょう。

〈車販売のセールストーク例〉

○○さま(お客さまの名前)、以前乗っていただいていた△△クラスですが、メインでは奥さまがお乗りになることが多かったと伺いました。△△クラスは、確かに高級感を感じながら運転いただけるメリットはありますが、正直、○○さまから伺った用途や、車庫入れや縦列駐車時、普段の運転のしやすさを考慮すると、□□クラスに、AとB、もし後部座席にお子さまが乗られるようでしたら、Cのオプションを付けられる乗り方も、実は実用的かと存じますが、いかがでしょうか?

このような提案をしたら、どうでしょうか。

実はこのエピソードは実際にあった話で、私が大変お世話になったD社長の奥さまから伺ったものです。

河合克仁『今日からできる ゼロストレス営業』(すばる舎)
河合克仁『今日からできる ゼロストレス営業』(すばる舎)

D社長はこの接客で購入を即決されたと言います。D社長の性格を考えると、乗り換え時もこの担当の方にお願いするのはもちろん、「このような対応をしてもらえた」というエピソードを友人に話して、そこからの紹介、さらにはお子さんの車までもこの営業の方が担当されることになるのではないかと思います(現にこうやって、私のところまでエピソードが伝えられていますよね)。

短期的にはダウングレードで、単価も低い車を提案した。でも、お客さまが喜ばれて、追加の発注や紹介が生まれ、トータルの売上は上がるのです。

「本当にお客さまにとってのベストを考えた」真心が感動を生み、結果、成約につながるという好例です。こうした能力を備えた営業パーソンは将来にわたっても活躍し続けることができると、私は信じています。

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河合 克仁(かわい・かつひと)
人材教育コンサルタント
1982年、愛知県豊橋市生まれ。2006年に筑波大学体育専門学群卒業後、人材教育コンサルティング会社に入社。2014年に独立し、株式会社アクティビスタを設立。筑波大学非常勤講師(キャリア教育、起業家教育)。内閣府地域活性化伝道師。共著に『世界中の億万長者がたどりつく「心」の授業』(すばる舎)『世界のエリートが実践する心を磨く11のレッスン』(サンガ)などがある。

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(人材教育コンサルタント 河合 克仁)

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