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「底辺校から東大へ行く子vs地頭がいいのに深海に沈む子」明暗決める12歳までの親の"ある行動"【2021編集部セレクション】

プレジデントオンライン / 2022年6月26日 10時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/ranmaru_

2021年にプレジデントオンラインで配信した人気記事から、いま読み直したい「編集部セレクション」をお届けします――。(初公開日:2021年6月20日)
進学校ではない高校から東京大学に進む子は何が違うのか。作家で教育カウンセラーの鳥居りんこ氏は「偏差値が低い底辺校などから東大に合格した人たちは12歳までの過ごし方に共通点がある。それは親が実践する4つの習慣によってつくられた心穏やかになれる生活時間を過ごしていることです」という――。

■同じく子供を持つ「親」……なぜ、天と地ほどに違うのか

親の「実力」はこれほどまでに違うのか……。

今回、2冊の書物に触れる機会があった。書籍『ドラゴン桜「一発逆転」の育て方』(以下、一発逆転本)と、雑誌『プレジデントFamily2021年夏号』(いずれもプレジデント社)だ。

前者は、人気ドラマ「ドラゴン桜」(TBS系)のリアル版、すなわち、低学力・底辺校・不登校などハンデがあったにもかかわらず東京大学に合格した高校生とその親へのインタビュー集。なぜ奇跡を起こすことができたのか、そこには本人の努力だけでなく、親の献身や関与があった。

後者の目玉記事は、現役の東京大学の学生249人に実施した小学生時代のアンケート。この記事を読むと、有名な私立中高一貫校の生徒でないケースでも合格できたのは、やはり親の存在があったからだということがよくわかる。

筆者は、長年、教育カウンセラーとして活動し、中学・高校・大学受験する子供やその親からの相談を受けるとともに、学校の現場に足を運んで取材している。その中で東大生、もしくは東大生の親から話を聞くことも多いが、そこから得た知見と、今回の2冊から感じたポイントは同じだ。

■東大合格者の家庭には世帯年収350万円以下が8%もいる

それは賢い子が育つ家庭には“共通点”があるということであり、東大生の親の育て方は他とは似て非なるものだということだ。

東大合格者の半数の家庭が世帯年収950万以上だと言われる。世帯年収350万円以下の家庭はわずか8%。データ上は、高年収家庭が圧倒的有利だが、経済的に豊かとは言えない家庭からも、その壁(18歳世代120万人のうち、東大進学者は約3000人。同世代では0.25%という狭き門)を突破する子供はいる。

「一発逆転本」に登場する10人の学生はまさにそうした人たちだ。家庭は裕福ではない、低偏差値の高校出身、不登校経験あり、成績低迷といった困難を見事に乗り越えた。

以下、「東大生アンケート」の結果と合わせて「奇跡を起こした東大生の親」の子育て(主に小学生時代)にはどんな秘密が隠されているのか探ってみたい。

■子供に東大へ進ませる親が12歳までに実践する4つの習慣

筆者が「賢い子に育てる親」が実践していると感じたのは次の4つの習慣だ。

1 良い習慣(含む勉強)の確立
2 ルールありきの中での自主性を育む
3 愛情を持って褒めて伸ばす
4 知的好奇心を刺激する

この4ポイントが、たとえお金持ちの家庭でなくても、わが子を頭のいい子にすることができる秘訣。なぜ、そう言えるのか「一発逆転本」に登場する東京大学の学生A~Eさんの例から検証してみよう(書籍内では、実名)。

■1 良い習慣の確立

ケース:女性Aさん・教育学部3年・私立日本大学三島中高(静岡県)卒
ドラゴン桜「一発逆転」プロジェクト&東大カルペ・ディエム『ドラゴン桜「一発逆転」の育て方』(プレジデント社)
ドラゴン桜「一発逆転」プロジェクト&東大カルペ・ディエム『ドラゴン桜「一発逆転」の育て方』(プレジデント社)

東大を目指す受験生の勉強時間は1日10時間以上に及ぶことも珍しくない。この猛勉強を支えるためには家族のバックアップが欠かせないが、Aさんの場合も東大合格には母(自営業)の力も極めて大きかった。仕事の合間を縫って1日3食、栄養バランスを考えた手料理を決まった時間に用意していたのだそうだ。食事時間以外は机に向かう娘の唯一のリラックスタイムだからこそ「そうしてあげたかった」ということだが、そのおかげでAさんは受験中も規則正しい生活を送ることができたという。

「東大生アンケート」にも、幼い頃から食事作り、早寝早起きへの誘導、整理整頓、共に食卓を囲むといった生活習慣を整えてくれた親への感謝が数多く寄せられている。

「1日にやるべき勉強範囲の習慣付けを根気強くしむけてくれた」(文科2類・学部1年・男子・埼玉県立伊奈学園校卒)
「朝に勉強する習慣を付けてくれた」(文科1類・高3・女子・静岡県立浜松西高卒)

子育てに励む多くの家庭を見てきた筆者の経験では、「東大生の親」に限らず、良習慣化を実行できる親は子供の「睡眠・食事・遊び(ごっこ遊びのようなお手伝いも含む)」を非常に大切にしている。規則正しく暮らしていくことに重きをおいているのだ。

逆に、中学受験塾の宿題のために子供を深夜まで起こしてやらせる親や、口だけで指示してそのフォローをしない親(例:歯磨きの習慣化は親がある程度、フォローしていくことによって身に付く)がいる家庭には良い習慣は根付かない。一貫性に乏しいため、「安定した時間」が得られず、子供が心穏やかな生活を送ることはできない。

■2 ルールありきの中での自主性を育む

ケース:女性Bさん・文科3類2年、私立富士見中高(東京都)卒

Bさんの小学校の成績は「よくできました」が1~2個で、あとは普通。勉強面では「並」の子だった。親は子供に「勉強しなさい」と言うことはなく、教育方針は「何かを始める場合は基本的には子供の希望通りにさせる」というもの。

ただ、そこにはルールがあった。それは「中途半端はいけないので3年は続けて基礎を学ぼう」。Bさんの希望で始めたピアノもそろばんも、それほど上達したわけではなかったが、「うまくいかなくても諦めない」という教訓が東大受験時に生かされた。

東大生が育った家庭は総じてのびのびとした自由な家風だが、「何でもOK」ではない。「始めたら最低3年は続ける」のような家庭のルールに沿って、その中で子供の自主性を育てる傾向があるのだ。

反対に「子供を潰しかねない親」の特徴はルールがないことだ。

例えば、「子供が望んでいるから」となんでもかんでも許容する。携帯電話、ゲーム関係など端末を簡単に買い与え、時間制限なしに使わせるというようなことだ。

「何でもOK」派の真逆、「なんでもダメ」な親も問題がある。こうした親は子供から夢や希望という話が出るや否や、「それはやめろ」「どうせ無理だ」と否定に走りがちだ。そうなると「自分が何をしたいかすらもわからない」子供になる可能性が高い。

ドラゴン桜
©︎Norifusa Mita/Cork

■3 愛情を持って褒めて伸ばす

ケース:男性Cさん・文学部4年・私立共栄学園中高(東京・特待生)卒

Cさんの両親は自営業で世帯年収は300万円。通常、経済的に苦しい家庭は家族の関係がギスギスしがちだ。ところが、Cさん宅は違う。両親は「いいことは口に出して褒め合う。悪いことは、厄は落ちたから、もう起きないと考える」が共通認識だ。

東京大学
写真=iStock.com/Veerachart
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Veerachart

なぜ、ネガティブな捉え方をしないかといえば「お金が苦しい上に、夫婦や親子で喧嘩したら、やっていけなくなるから」。そういう智恵・習慣があったため、小さなことでも褒め合う。お互いを肯定し合う家庭の雰囲気が、家族の病気や経済苦、Cさんの高3時の“全落ち”といった試練を乗り越え、前を向く力になったのだという。

「東大生アンケート」でも、「親が良いところを褒めて自信を持たせてくれたか」が79.5%に達した。やはり親が「褒めて褒めて褒めまくる」→「愛情をたっぷり注ぐ」→「興味を持ったことを好きなようにやらせる」という方針を貫くことが今の時代の子育てに合っていることが証明された。

アンケートでは「親が子供の趣味や好きなことを応援してくれた」91.1%、「親が話をよく聞いてくれた」90.4%、「親が失敗を責めなかった」84.3%となっており、同じ目線で寄り添い、会話する。そんな親の人間性が見えてくる。

ところが、“普通の親”は、こううまくはいかない。点数・順位・偏差値といった相対的な、他人様が決めた尺度で子供を褒めたり褒めなかったり。わが子自身の成長をしっかり見ずに、誰かと比較するのだ。そのため否定や苦言、叱責が多くなる。

筆者はこれまで子供の成績に一喜一憂して情緒不安定になる親をたくさん見てきたが、これをやめない限り子供の伸びしろが小さくなるばかりか、下手すればやる気を失って、潰れてしまうリスクがある。もともと地頭がよく、将来は東大も夢ではないが、親のせいで深海魚のように沈んでしまう子供の事例は数知れない。

■4 知的好奇心を刺激する

ケース:男性Dさん・法学部3年・県立水沢高校(岩手県)卒

Dさんが通った岩手県の小中学校は各学年40人程。周囲には田んぼが広がっている田舎の中の田舎だ。そんなD家では毎晩欠かさず、本の読み聞かせをする習慣があり、これが東大受験に影響をもたらし、「国語の勉強に困らなかった」そうだ。休みの日には、家族全員で東北各県の博物館を回り、そこで開催される体験イベントに積極的に参加したという。

少年
写真=iStock.com/kohei_hara
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kohei_hara

東大生アンケートでも「小さい頃読み聞かせをしてくれた」83.2%。「本や新聞を読むことを勧めてくれた」75.9%。「博物館や科学館に連れて行ってもらった」64.6%と高い率になっている。自由回答では「本だけは好きなだけ買ってくれた」が目立った。

「質問したことを真剣に答えてくれた」というものも多く、子供の疑問を放置せず、親が分からなければ「親子で一緒に調べる」という経験をしていることも特徴だ。

このことが、いろいろなものに興味・関心を持ち、さらには「わかる喜び」を知るという人間に育つのだということが見て取れた。

■普通の親は「カナブン」に何の興味も示さない

一方、普通の親はこんなに子供に時間を割いていない。やれ仕事だ、やれスマホだ、とオフの時間を自分自身のために使う。先日、散歩の途中で、幼稚園児と思しき女の子と歩いていた父親もそうだった。女の子は、父親に「こないだ見つけたカナヘビ(トカゲ)」について一生懸命語っていたが父親の耳には全く入っていない。歩きながら女の子はカナブンの死骸を発見し立ち止まったが、パパはそれに気づかずズンズン先に行く。そして、こう言った。「さっさと歩け!」。女の子は小さな声でカナブンに「バイバイ」と手を振った。

これだけのエピソードでこの女の子の未来を計ることはできない。だが、父親が面倒くさがらず、ほんの少しでもカナブンなどの生き物に興味を示していれば、さぞかし娘は満足し、父親との楽しい時間を思い出にできたのではないだろうか。

東大生の親は優先順位が違う。「幼い子供の脳と体を健康に育てること」を何よりも大切にしているのだ。

結局のところ、親の庇護の元で暮らすしかない小学生以下の子供たちに親ができることは、日々の暮らしをちょうどいい塩梅に整えるということだと筆者は確信している。それには、親自身が子供と共有する時間が限られていることを知り、その時間を楽しもうとすることが最も大事なのだと思っている。

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鳥居 りんこ(とりい・りんこ)
作家
執筆、講演活動を軸に悩める女性たちを応援している。「偏差値30からの中学受験シリーズ」(学研)の著者。近著に『親の介護をはじめる人へ伝えておきたい10のこと』(ダイヤモンド社)、近刊に『神社で出逢う私だけの守り神』(企画・構成 祥伝社)、『1日誰とも話さなくても大丈夫 精神科医がやっている猫みたいに楽に生きる5つのステップ』『たった10秒で心をほどく 逃げヨガ』(取材・文 いずれも双葉社)など。

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(作家 鳥居 りんこ)

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