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「小6の息子が『塾をやめる』と言い出した」母親からの悩み相談に浜学園の副理事長が出した答え

プレジデントオンライン / 2022年7月14日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/takasuu

中学入試を控えた子供が「塾をやめる」と言い出したら、どうすればいいか。関西を中心に展開する進学塾・浜学園の橋本憲一副理事長は「小学生は勉強するだけで偉い。親のほうから折れたほうがいい。幸いにも中学生とは違い、小学生の反抗期はちょっと角度を変えてアプローチすれば、対応できることが多い」という――。(第2回/全2回)

※本稿は、橋本憲一『中学受験に合格する子の学んだら忘れない勉強ルーティーン』(ポプラ新書)の一部を再編集したものです。

■「勉強しないなら塾をやめなさい」と怒鳴る母親

教育相談で毎年必ずあるのが、「6年生になって反抗期が始まった。どう対応したらいいだろう」という保護者からの問い合わせです。

あるとき、「息子と喧嘩中だ」というお母さんが塾に相談にきました。我々に息子との仲を取り持ってほしいというわけです。その子どもは入塾テストもきちんと合格していますし、一時は上位クラスにいたこともあって、学力が十分に伸びる可能性を持っている子どもです。

ところが、小6生になった途端、本人が「勉強しない」と言いだし、家庭学習の課題も常に最初のページと最後のページしかしないと言います。なかなかユニークですが、お母さんはそのいいかげんな課題のやり方を見てものすごく怒り、「勉強しないなら塾をやめなさい」「ああ、もう僕やめるわ」と、親子喧嘩になったということでした。

私は小6生の反抗期というのは、周囲に対して「リアクションできるようになった」現れだと思っています。

1日中誰に対してもむっつり不機嫌な中学生の反抗期とは質が違って、小6生の場合は、お母さんと喧嘩してプンプン怒って家を出たとしても、塾に着いたら友だちとゲラゲラ笑い合っているというように、怒りを根に持たず、自然に気分の切り替えができるのです。私はそれが偉いと思います。中学生はそうはいきません。

小6生の反抗期は、親がおびえたり怖がったりする類のものではなく、向き合う親や周囲の側がちょっと角度を変えてアプローチしたら、いくらでも修正可能なのです。

■親側が折れない限り、子供に勉強をさせるのは難しい

例えば、家では親に反発したり言うことを聞かない子どもでも、学校の先生や塾の講師と「この人なら信頼できる」という関係が築けたら、すごく素直に変わります。これが中学生になってしまうと、学校で多少は信頼している教師に対しても、「何言うとんのや」という感じで反発していきますが、小学生はだいぶ様子が違います。

塾でも、講師側が子どもとの信頼関係を構築できたら、「あの先生が言ったから」と、それだけで本気になって計算練習を10問でも、20問でもやってくれるのです。子どもとの信頼関係を築くまでには、講師も手を替え品を替え、日々さまざまなコミュニケーションの努力をしているわけですが、親の場合はその倍ぐらい努力しなければ絶対に子どもには伝わりません。親にもそういう「努力の段階」が必要なのです。

子どもの反抗は、彼らが親と向き合うとき、「自分が不利なこと」がある場合に起こることが多いのです。例えば「テストの点数が悪い」とか「勉強がわからない」とか。子ども側にしたら、毎日学校に行って、塾に行って、自宅でも勉強して、それだけでも十分頑張っているというのに、その日常はなかなか親には響きません。ましてや、よい成績をとっても「塾に行ってるんだから、当たり前」と言われてしまう。

日々頑張っていることも認められなければ、成績がよいことも褒められず、悪ければ文句を言われる。子どもに為す術はありません。そんなときに友だちに「面白いゲームあるよ」と誘われたら、勉強を休んで遊びたくなるのも道理だと私は思います。

もしも、その横道にそれそうなところで、子どもに勉強してもらいたいと願うなら、それはやはり親側が折れない限り、うまくはいきません。

例えば、教育相談の場でも、私がお母さん側ではなく子ども側に立ち、「いろいろお母さんは言うけど、キミのほうが合ってるかな」と口を添えると、それだけで彼らは聞く耳を持つようになってくれます。聞く耳を持ってくれたら、あとはちょっとずつ変わっていきます。小6生の反抗期はまだかわいいものなのです。

息子を叱る母
写真=iStock.com/takasuu
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/takasuu

■小学6年生の夏に失速してしまう生徒も

「四六時中、勉強することが楽しくてしょうがない」というタイプの子どもでも、小6生の夏をピークに失速してしまい、入試本番で合格を勝ちとれないことがあります。

小学生にとって本番にピークを合わせるというのは、なかなか難しいものなのです。子どもがすごく勉強に集中しているときというのは、食事中も移動中もかまわず、とても前向きな状態で勉強漬けになっています。

そんな彼らでも睡眠時間は確保しなければならないですから、それを優先すると、1日のなかに勉強以外のことをする余裕はなく、起きているあいだは、学校・塾・家庭学習(課題)・自主的な勉強と、「常に頭を働かせている」ことになります。この集中した状態が続くことで、「解答をつかむスピード」が「瞬時」になってくるのです。

ところが、そのピークの時期によっては、勉強の勢いが失速する場合があるのです。小6生の春先から夏にかけての時期をそういう状態で過ごした子どもが、そのまま年明けの入試本番まで走り続けられればいいのですが、1年近くをトップスピードで走り続けるのは容易なことではありません。

例えば、体調を崩したり、ちょっとしたことがきっかけで脱線すると、勉強のリズムが崩れ、「過去の勉強の蓄積」に頼ろうとするようになります。問題に対するアイデアや、じっくり考える力というのは、そんなに急になくなるものではありませんが、ここで問題になるのは、まず「精度」です。

経験則の積み上げによって得た「パターン能力」の精度というものが、脱線という間を置くことで、短期間のあいだでやはり少し鈍ってしまうのです。

■夏・秋・冬で勉強のペースを調整したほうがいい

現時点でまだ、多少学力が劣っていても「いま」勉強が楽しくて、常に自分で考えてワクワクと取り組んでいる子どもと、「過去」の知恵で戦っている子どもとの勝負は、かなりの確率でやはり前者に軍配があがります。これが、「中学入試の合格確率を上げるひとつのポイントは勢い」と言われるゆえんです。

ライバルより能力があっても、勉強のピークがずれてしまったことで、「勢い」で負けてしまうケースが中学入試には本当にたくさんあります。

橋本憲一『中学受験に合格する子の学んだら忘れない勉強ルーティーン』(ポプラ新書)
橋本憲一『中学受験に合格する子の学んだら忘れない勉強ルーティーン』(ポプラ新書)

しかし、もともとの能力が高いばかりに、すでに勢いを失い、過去の蓄積に頼る状態になっていることに、親も子どももなかなか気がつきません。親は逆転されたことが許せず「いままで勝っていたあの子になんで負けたの?」と、子どもを責めますし、子どもは子どもで、自覚がないので「ちょっと夏休みボケで9月、10月とあんまり勉強してなかったからなぁ」などと思っています。

このようなケースの場合は、逸早く親が子どもの変化に気づいてあげて、焦らせずに11月からでも再度ペースを上げて12月・1月と「四六時中勉強を我慢してこなしている」受験生に仕上げていけば、もとの蓄積があるのでまったく心配いりません。夏休みが終わって学校が始まり、9月・10月には勉強のペースを崩す受験生がたくさんいるという情報を頭に入れておけば十分に対応できるのです。

従って、大半の受験生は小6生の春先から夏休み前までは短時間の集中した勉強に取り組み、夏休みに一度「寝る以外は勉強」の精神で「四六時中勉強を我慢してこなしている」受験生に近づく努力をしてほしいです。そして、秋は短時間の集中した勉強に戻して睡眠をしっかりとって乗り切り、夏の経験をもとに12月・1月と「四六時中勉強を我慢してこなしている」受験生に仕上げていくのが一番いいと思います。

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橋本 憲一(はしもと・けんいち)
浜学園 副理事長
創立1959年以来、関西でトップをいく進学塾として実績を重ねる「進学教室 浜学園」にて2003年より2022年春まで19年の長きにわたり、学園長を務める。2022年春、副理事長に就任。浜学園は兵庫県西宮市に本部を置き、復習主義、テストで学力を伸ばすなど、独特の指導方法を展開。2005年春入試から2022年春入試まで18年連続、灘中合格者数日本一を達成し、特に2019年春から2022年春入試で4年連続灘中合格者数90名突破を達成する。担当教科は算数。著書に、『中学受験に合格する子の学んだら忘れない勉強ルーティーン』(ポプラ新書)がある。

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(浜学園 副理事長 橋本 憲一)

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