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なぜ思春期の子どもは攻撃的になるのか…「うっせぇわ」が口癖の子を変えるために親がやるべきこと

プレジデントオンライン / 2023年1月28日 10時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/unomat

思春期の子どもには、どのように接すればいいのか。心理療法士のイザベル・フィリオザ氏は「この時期の子どもたちは、親がコントロールしようとすると反発する。親にできるのは、聞き役に徹して本人が問題解決できるようにサポートすることだけ。ただし、『よく考えること』だけは教える必要がある」という――。

※本稿は、イザベル・フィリオザ『12~17歳 子どもの気持ちがわかる本』(かんき出版)の一部を再編集したものです。

■抑圧された感情が再び表面に現れる

子どもたちはすっかり変わってしまいました。すぐに怒って自分の部屋にこもってしまう。自由にさせてほしいと部屋のドアに鍵をかける。少しずつ自立してきているが、段取りができない……。すばらしい思慮分別を発揮して理屈をこねたかと思うと、数分後には全く思慮を欠いているところを見せます。

危険ときたら、セックス、アルコール、喫煙、バイクでのスピードの出しすぎ……キリがないので、この話はやめましょう! こうしたことすべてが私たち親を心配させてやまないのです。しかし、思春期の子どもたちは素直に親の言うことに耳を傾けてくれません。それどころか、親にやたらと攻撃的だったりします。それはなぜなのでしょうか。

前の記事でも紹介しましたが、思春期の脳は大工事中です。脳の発達にともなうニューロン再編成の際、過去の思い出が刻まれているニューロンのネットワークが再活性化します。思い出は完全には意識に到達しませんが、ティーンエージャーは過去の感情から大きな影響を受け、情動システムが興奮しやすくなって、より敏感になります。抑圧された感情が再び表面に現れるのです。

脳の前頭前野は未熟なので、フィルターの役割を果たせず、そのまま生の感情を表してしまいます。それは今現在、何か原因があるのではなく過去に何かあって我慢していた、あるいは忘れていた感情が今になって無意識に出てきたものなのです。

過去に体験したショック、大事な人の不幸、困窮、喪失感など忘れられていた傷が表面に浮かび上がってきます。まるで脳が過去を掃除しようとしたら、古い傷が現れて、手当てを求めているようなものです。

イラスト=『12~17歳 子どもの気持ちがわかる本』より
イラスト=『12~17歳 子どもの気持ちがわかる本』より
子どもの心の声
苦しい、私はひとりぼっち……。

■親は聞き役に徹しよう

子どもの非難や攻撃に対して、親はどう反応すればいいでしょうか? 泣く、怒る、無視する、相対化する……? ストレスを抑えて、子どもの言葉を聞く立場に身を置きましょう。

親が自己弁護したり、自分を正当化したり、子どもを落ち着かせようと試みたりするのは、どれも子どもの怒りを増長させるだけ。それではまだ、私たち親を中心に据えていて、子どもを中心にしていないからです。結局、私たちがわが子に関心を持っていないことをはっきりさせているようなもの。

たとえつらくても、たとえ不当に思えても、心を開いて子どもの言葉を聞きましょう。例えば、以前弟が生まれた時に見捨てられたように思ったのかもしれません。これは、過去のわだかまりを修復して、未来を確かなものにするまたとない良い機会です。

子どもの心の声
ママと話すのが好き。いろんなことがわかるようになるし、自分はおもしろいんだって感じる。ママが私の問題を解決しようとしない時は特にね。

■問題は子ども自身が解決する

ティーンエージャーには、答えを見つけるより、問題をあらゆる角度から考え、そのいろいろな次元を探ってみることが必要です。問題そのもの、あるいは問題の検討が重要であって、答えが重要なのではありません――特に、すぐに答えが見つかってしまうケースでは。

助けを求められたとしても、私たち親の役割は、わが子がすべきことを教えたり、わが子に代わって悩みを解決してあげたりすることではなく、親がいなくてもやっていけることを教え、成長を助けること。つまり、わが子が困難に向き合って解決することをサポートしてあげればいいのです。時には、子どもが考えを展開するのを聞いてあげるだけですむ場合もあるでしょう。もちろん、親の手助けがもう少し必要な時もあります。

イラスト=『12~17歳 子どもの気持ちがわかる本』より
イラスト=『12~17歳 子どもの気持ちがわかる本』より

■落とし穴に落ちて、再び立ち上がる経験が必要

わが子を親の思い通りにコントロールしようとしても逆効果です。親は子どもにすべての落とし穴を避けさせてやりたいと思うものですが、子どもは自分で落とし穴に落ちて、再び立ち上がる経験をすることが必要なのです。

イラスト=『12~17歳 子どもの気持ちがわかる本』より
イラスト=『12~17歳 子どもの気持ちがわかる本』より

親が子どもをコントロールする力がないことを認めると、子どもは心を開いて、耳を傾け始めます。逆に親が子どもをコントロールしようとして、制限したり、禁止したりすると、やれやれという態度や影で笑い、あるいは反抗的な態度しか返ってきません。私たちが主導権を取ろうとする試みは、子どもにとって取るに足らないものなのです。

ティーンエージャーはそれをよくわかっているので、親の力を振りかざそうとしても意味がありません。だからと言って、勝負を投げて、ティーンエージャーにやりたい放題をさせるというのは論外です。わが子の健康と未来をいつも考えていることを伝えましょう。そして親の無力を理解し、子どもの自由を重視しつつ、愛情や気がかりや心配を伝えるのです。

■心に響く「親の心配の伝え方」

その際、次のように会話の合間に呼吸をはさむと、その間に子どもは親が言ったことを頭の中で繰り返して、自分のこととして理解することができます。あまり早く話すと、子どもは一部しか記憶に留めることができないため注意が必要です。

「四六時中、君を見張ることはできない」
(ひと呼吸)
「これは君の人生で、君の手の中にある」
(ひと呼吸)
「大切な君のことを心配している(例:タバコ)、なぜなら……(例:思春期の子どもの脳をどれだけ損なうか知っているから)」
(ひと呼吸)
イザベル・フィリオザ『12~17歳 子どもの気持ちがわかる本』(かんき出版)
イザベル・フィリオザ『12~17歳 子どもの気持ちがわかる本』(かんき出版)

ティーンエージャーは、何でもかんでも反対したり、いつも反抗したりしているわけでもありません。彼らは私たちに向かって呼びかけているのです。なぜなら、私たちは親であり、人生において彼らを支え、導く人として、信頼されているから。

彼らの振る舞いがいかに不快だったり攻撃的だったりしても、それは「反応(リアクション)」なのです。ですから必ず原因があります。行き当たりばったりでしているのでもなければ、誰かを傷つけようとして振る舞っているのでもありません。

「どうしたの?」と声をかけて、子どもの心の扉を開きましょう。そうすることで、私たちも無意識のうちに下してしまう勝手な判断にブレーキをかけて、よく考え、深呼吸し、状況の分析をすることができます。

■思考力を高める親の声かけ

思春期の子どもに起こることすべてについて、親に責任があるわけではありませんが、「よく考えること」はしっかりと教えなければなりません。わが子の脳を鍛えるため、いろいろなことを一緒に話し、探求しましょう。月並みな話や偏見は避けて、仮説を立て、論証し、反証して、本当の議論をすることが大切です。

そのためには、オープン・クエスチョンで問いかけることが有効です。クローズド・クエスチョンは、イエスかノーで答える形式の質問ですが、オープン・クエスチョンは探求を促す質問です。

下記に、オープン・クエスチョンの例を挙げます。

どうしたの?/何があったの?
どう思う?/どう思ったの?
どんなふうに感じる?/どう感じたの?
他の人はどうするかしら?/他の人はどんな反応だった?
何でそんなことをしたのかしら?/どうしてそう思ったのかな?
あなたは本当はどうしたいの?
何が一番心配?
何が一番悲しい?
この試練から/この困難から/この経験から何を学んだ?
イラスト=『12~17歳 子どもの気持ちがわかる本』より
イラスト=『12~17歳 子どもの気持ちがわかる本』より

映画を観ることで複雑な感情をよく知ることができます。「おもしろかった?」で満足せず、登場人物たちに感じた気持ちを共有してみましょう。また、スピーチ動画を配信しているTEDやTEDxを家族で見るのも一案です。スピーカーたちが政治、芸術、科学、音楽、自己啓発などさまざまなテーマを扱っているので、家族で話し合うためのバラエティーに富んだ話題を提供してくれます。

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イザベル・フィリオザ 心理療法士
1957年パリ生まれ、心理療法士。父は心理学者、母は心理療法士で病気を体・心・感情を含めて全体的に見るというホリスティック医療の先駆者。パリ第5大学で、臨床心理学の修士号を取得したあと、フランス、アメリカ、ベルギー、イギリスなどで、交流分析、新ライヒ派のセラピー、神経言語プログラミングなどを学ぶ。それ以後、独自のセラピーを開発し、感情を専門とするセラピストとして、多くの大人や子どもの治療に当たる。世界的ベストセラーシリーズ『子どもの気持ちがわかる本』(かんき出版)ほか著書多数。

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(心理療法士 イザベル・フィリオザ)

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