これができないと退屈な老後が待ち受ける…心理学者が「エネルギッシュな人生に欠かせない」と説く生活態度
プレジデントオンライン / 2023年5月31日 10時15分
※本稿は、内藤誼人『ダラダラ時間をリセットする最新心理学BEST60』(春陽堂書店)の一部を再編集したものです。
■午後1時から3時までは一人で集中して仕事する
仕事をするときには、できるだけ一人でやるといいですね。
なぜなら、私たちは他の人と一緒に作業をしようとすると、ついついムダ話などをしてしまって、能率が悪くなってしまうからです。
ある企業では、「午後1時から3時までは一人で集中して頑張るタイム」というようなルールを決めていて、その時間内では一切の私語を禁じて、黙々と仕事に取り組ませる、という話を聞いたことがあります。これは、非常によいアイデアです。
一人で仕事をするからこそ集中できるのであって、他の人と一緒にやろうとすると、どうしてもダラダラしてしまいます。
学生の頃、私は友人たちから、「一緒に試験勉強をしようよ」とグループ学習を持ちかけられても断っていました。友人たちと一緒だと、勉強にならないことを経験的に知っていたからです。
そのためでしょうか、ちょっぴり自慢になってしまいますが、私はものすごく成績のよい学生でした。
アメリカ・オクラホマ州立大学のロバート・スコフィールド氏は、友人または知らない人と作業をさせる実験をしたところ、友人と一緒だと作業に関係のないムダ話が増えることがわかりました。他人と一緒でも、知らない人であれば、ムダ話は増えませんでした。
友人と一緒に何かをしようとするのは、特に集中してやる作業のときにはやめておいたほうがいいようですね。知らない人ならば、そんなに問題もなさそうですが。
■フリーランスや自営業者がダラダラしない理由
では、どうしてもグループやチームで仕事をしなければならないのだとしたら、どうすればいいのでしょうか。
私なら、まずはメンバーでどの仕事をするか分担することを提案しますね。そして、一人一人が別々に作業をし、あとでみんなの仕事を持ち寄るようにするのです。このような形にすれば、チームで作業をしたことになりますが、実際の仕事は一人でやることができます。
会議もそうですよ。あらかじめ会議の議題をメンバーに伝え、一人一人にアイデアを書いてきてもらうのです。実際の会議では、みんなが持ち寄ったアイデアを突き合わせて、結論を導くだけ。
このようにしたほうが、会議の時間も大幅に短縮できます。みんなで話し合おうとするから、ダラダラするのです。
一人で仕事をしているフリーランスや自営業者などは、会社勤めのサラリーマンに比べると、あまりダラダラしませんが、その理由は、ほとんど一人(あるいは夫婦)で作業をすることが多いからです。
他の人と一緒に仕事をすることは、なかなか避けられないこともあるとは思いますが、それでもなるべく一人で仕事に取り組めるよう、上司やリーダーにかけあってみるとよいですね。
そのほうが、能率がいいということを理解してもらえれば、断られることもそんなにないと思いますよ。
■たとえば草むしりは友人を巻き込んだ方がいい
仕事をするときには一人がいい、というお話をしました。
けれども、まったく逆のアドバイスになってしまいますが、「友人や知り合いと一緒にやったほうがいい」ということも現実にはよくあります。
それはどんなときかというと、「あまりやる気にならない」作業をするとき。
どうにも乗り気にならないことをするときには、友人と一緒にやりましょう。そのほうが楽しく取り組むことができます。
たとえば、草むしり。草むしりが好きな人などいないと思いますが、一人で黙々とやらなければならないのだとしたら地獄のような苦痛を味わうかもしれませんけれども、他の人と軽いおしゃべりなどしながら草むしりをしてよいのなら、そんなにつらくありません。
私の住む町の自治会では、一年に1回、公園や道路わきの草むしりをする日があるのですが、普段、あまり接しない人たちとおしゃべりしながら草むしりするのは、そんなに苦痛でもありません。みな喜んで草むしりをしています。
■一人ではやりたくないことは、一人でやってはいけない
あるいは、エクササイズ。
一人で黙々と身体を鍛えようとするよりは、友人も誘って一緒にやったほうが、長つづきするかもしれません。
アメリカ・イリノイ大学のエドワード・マッコーレイ氏は、だれかと一緒にやったほうがエクササイズは楽しくなることを実験的に確認しています。
身体を動かすのがもともと好きな人なら、一人でやったほうがよいのかもしれませんが、たいていの人は、運動をするのがおっくうだと感じますよね。そういう人は、友人を誘って一緒にやったほうがいいのです。
エクササイズ自体が苦痛でも、「他の人とやりとりできる」ということが楽しめるのなら、そんなにつらくもないのですよ。
学校もそうですね。学校で勉強をするのが大嫌いでも、仲のよい友人が何人かいれば、学校に行くのもそんなに苦痛に感じません。勉強をするために学校に行くのではなく、友人に会うために学校に行くことができるのです。
逆に言うと、友人ができない人は、学校に通うことも面白くなくなって、途中で退学してしまいます。
一人ではやりたくないことは、一人でやってはいけません。
一人でやろうとすると、どうしてもダラダラしてしまいますから。
こんなときには、まず友人を誘うことです。友人と一緒なら、面倒なことでもけっこうできるようになります。
■先送りしていると、ますますやる気が失われてゆく
カナダ・アルバータ大学のロバート・クラッセン氏は、シンガポールとカナダの大学生1145人について、課題を先送りする傾向がある人ほど、自己管理ができず、自尊心が低く、自己効力感が失われてしまうことを突き止めています。
自尊心が低下するということは、「自分が嫌い」という気持ちが強まることであり、自己効力感が失われるということは、「私は、何もできない」という気持ちが強まるということです。
先送りしようとしていると、自信がなくなり、ますます先送りの傾向が強まります。こういう悪循環にはまり込むと、本当に何もできなくなってしまいます。
ダラダラの悪循環にはまり込まないようにするためには、とにかくどこかで一度、負のスパイラルを断ちきらなければなりません。
病気やケガの場合、2週間も入院すると、筋肉が落ちて、本当に立ち上がることすらできなくなります。ダラダラぐせもそうで、しばらくダラダラしていた人は、最初はものすごく軽い「リハビリ」からスタートするのがいいでしょう。それでも大変だとは思いますが。
ダラダラぐせを直すリハビリに一番効果的なのは、軽い運動。
特にウォーキングがおすすめです。ウォーキングはジョギングに比べればラクですし、わざわざ運動着に着替える必要もありません。私服で、そのまま外に出て少し歩いてくるのです。手間がかからないので、思い立ったら、さっと行動できるのもウォーキングの強みですね。
■ダラダラ癖はウォーキングで直す
イギリス・エッジ・ヒル大学のメリッサ・マーセル氏は、健康増進プログラムに参加した人にウォーキングをさせてみました。
13週間後、うつ病の診断をしてみると、ウォーキングしたグループでは、抑うつ感、ストレス、ネガティブな気持ちが大幅に減少し、代わりにポジティブな感情が高まることがわかりました。
ウォーキングをしていると、気分も前向きになり、積極的になれます。ウォーキングは、ものすごく手軽な運動なのに、大変に効果的な方法でもあるのです。
しかも、いくつかの研究によると、そんなに何時間も歩かなくてすむこともわかっています。ウォーキングの時間は、せいぜい15分から20分で十分であり、わずか20分のウォーキングで気分は上向きになることもわかっています。
ダラダラぐせがなかなか直せない人は、まずは「気持ちのリハビリ」のため、毎日、少しだけ歩くようにしてみてください。
特別にウォーキングの時間を設けるのが面倒くさいなら、出社するときに一つ手前の駅で降りて歩くだけでもいいと思いますよ。20分も歩けば、それで毎日のノルマが達成ということにすれば、だれにでも簡単に取り組めるのではないかと思います。
■「推し」をつくるとエネルギッシュな人間になれる
私たちは、恋をすると脳の報酬系と呼ばれる部位が活性化し、意欲的になれることが知られています。ですから、恋をすることはダラダラぐせを直すうえで、非常に効果的な方法でもあります。
「私は、恋愛なんていいや」
「恋なんて、面倒くさいからしたくない」
そんなふうに思っていてはダメです。好きな人がいるからこそ、人間は張りきって生きていけるのです。
すでに結婚されているという人でも、恋愛をするのはいいですね。といっても、現実世界で不倫や浮気をしなさい、と言っているのではありません。心の中で勝手に好きな人をつくるのです。相手がアイドルやモデル、俳優でもかまいません。
好きな人のことを、最近では「推し」と呼ぶそうですが、自分なりに「推し」をつくっておくと、毎日が楽しいですし、エネルギッシュな人間になれます。
好きな人がいれば、苦しいことでもホイホイとこなせるようになります。恋をしている人は、我慢強くなれるからです。
アメリカ・スタンフォード大学のジャレッド・ヤンガー氏は、恋人のいる男女に実験に参加してもらいました。
どんな実験かというと、左手に熱を与えて我慢してもらう、という過酷な実験です。熱は40℃からスタートし、1℃ずつ上げられていき、我慢できるところまで我慢してもらうことになっていました。
その際、片方のグループには、自分の彼氏(彼女)の写真を見ながらやってもらいました。すると、このグループでは、あまり痛みを感じないことがわかりました。実験中の脳の画像を調べてみると、報酬系が活性化していて、それが痛みを感じにくくさせているようでした。
■人は何歳になっても、恋をしていたほうがいい
もう一方のグループには、無関係の人の写真を見せながら同じ実験をしてもらったのですが、こちらはすぐに痛みを感じて、簡単にギブアップしてしまいました。
好きな人がいると、やりたくもないことでもけっこう我慢できるようになるかもしれません。
たとえば、同じ職場に、ちょっと気になっている異性がいると、楽しくもない仕事でも、楽しくこなせるようになるでしょう。出社するときにも、うれしくてついついスキップを踏んでしまうかもしれませんね。
おばさま方の中には、若いアイドル歌手の追っかけをしている人たちがいます。そういうおばさま方を見ていると、ものすごくはつらつとしていて、元気なのですよね。だれか好きな人がいるというのは、好ましい影響を及ぼすのです。
人は何歳になっても、恋をしていたほうがいいと思います。
みなさんがダラダラしてしまうのは、ひょっとすると恋愛をしていないからではないでしょうか。好きな人をつくってみると、ウソのように意欲が溢れ、積極的な自分に生まれ変わることができますよ。
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心理学者
立正大学客員教授、有限会社アンギルド代表取締役社長。慶應義塾大学社会学研究科博士課程修了。社会心理学の知見をベースに、ビジネスを中心とした実践的分野への応用に力を注ぐ心理学系アクティビスト。趣味は手品、昆虫採集、ガーデニング。『すごい! モテ方』『すごい! ホメ方』『もっとすごい! ホメ方』(以上、廣済堂出版)、『ビビらない技法』『「人たらし」のブラック心理術』(以上、大和書房)、『裏社会の危険な心理交渉術』『世界最先端の研究が教える すごい心理学』(以上、総合法令出版)など著書は200冊を超え、、近著に『めんどくさい人の取扱説明書』(きずな出版)がある。
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(心理学者 内藤 誼人)
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