これを使うだけで周囲の評価がガラリと変わる…話し方の基礎教養「5W3H」というフレームワーク
プレジデントオンライン / 2023年8月29日 7時15分
※本稿は、吉田幸弘『部下も上司も動かす 武器としての伝え方』(自由国民社)の一部を再編集したものです。
■伝え手は10を話したいけれど、聞き手は1しか聞きたくない
誰も人の話を多く聞きたいとは思わないでしょう。
まれに聞くのが好きという人もいますが、そういった人でもすべての人の話を長く聞きたいわけではありません。
伝え手として自分の話に自信を持つのはいいことです。
しかし、人はそれほどこちらの話を聞きたいとは思っていないことを頭の片隅に置いておきましょう。
伝える側は10を話したいけど、聞き手は1聞いて10にして話を終わらせたいと思っています。この意識があれば、できるだけ短時間で伝えようと心がけるからです。
ですから、
「知っていることをすべて話さなくてはならない」という義務感を手放しましょう。
仮に、こちらが伝える内容を減らしても、相手にとって必要ならば後で「教えてくれ」と言われるでしょう。
聞き手もある程度、共通の認識や知識はありますし、たいていは伝える側と聞き手の知識の差分は1か2、微々たるものでしょう。
たとえば、営業マンは「自社の商品の特徴・強み」を伝えたいのに対し、お客様は「導入することで何が得られるか」「困っている問題を解決できるか」を考えています。
上司は「成果がどれだけ出ているか」「成果につながる情報を知りたい」のに対し、部下は「自分の努力をアピールしたい」と思っているわけです。
だからギャップが生まれるのです。
そのギャップを埋めるために説明するのです。
■興味のない部分は頭に入りにくい
部下はつい多くを話してしまいがちです。
自分の努力を隅から隅まで話そうとしてしまうのです。
しかし、上司は知りたいことしか頭に入ってこないのです。なぜなら「自分が知るべき情報を埋めよう」と思って聞いているからです。
たとえば、セミナーを受講しに行く際、会社から言われて仕方なく行く場合もあるかもしれませんが、たいていは困った問題を解決することが目的で行くのではないでしょうか。
その際、中には自分が知っている内容も含まれているでしょう。
自分が知りたいと思っていること以外の話も出てくるでしょう。
そういった話まで覚えているでしょうか。
仮に90分の講演を聞いたとして、1から10まで話し手の言ったことを覚えている人はいないのではないでしょうか。
人は自分の聞きたいことだけを聞く、あるいは自分の都合のいい部分だけ聞いて、都合よく解釈します。
だから、自分の知りたいことは覚えているけれど、自分にとってはあまり重要ではなかったことはスルーしてしまうのです。
そもそも90分の内容が全部頭の中に入ってきたら、パンクしてしまいますから。
私自身、今の講師の仕事をしていて時折、「この部分は良かったけど、この部分は知っていた」あるいは「この部分は興味がなかった」などとアンケートに書かれたことがあります。
人は自分の知りたいことだけを知りたいのです。
■話を聞きたくなるには「冒頭」を上手く利用する
その点を踏まえて、仮に次の2人の営業マンがいたら、どちらの方の話を聞きたいと思いますか。
Bさん「吉田さんはどのような悩みをお抱えですか」
後ほど詳しくお話ししますが、人は冒頭が一番集中力があります。
そして冒頭の話は聞こうとします。それなのに最初に「自分の会社の説明をさせてください」と言ってしまうのは非常にもったいないことです。
誰もがダラダラと興味のない話を聞きたくないのです。
ですから「相手の知りたいこと」「相手の問題解決につながる内容」を話すべきで、独りよがりになっている「自分の伝えたいこと」は減らす必要があるのです。
■不要な情報は思い切って捨てる
相手が興味のない話、関係のない話を長々とするのは相手にとって迷惑ということです。
かつて業績不振だった営業マンの頃に、「自社の説明と相手に興味がないのに自分がいいと思った独りよがりの企画」を何十分も話していた自分を思い出すとぞっとします。
仕事が受注できなかったわけです。
長い説明は相手の時間を奪っている。聞くだけで相手も給料の代償を払っている。
給料泥棒と同じ。
無駄に長い話をしているのは、外で営業中に山手線1周しながら寝ているようなものです。時間のコスト意識を持ちましょう。
そこでこの項でお伝えしたいのは、「余計なことを話しすぎていませんか」ということです。そのうえで、「余計な話を削減していきませんか」ということです。
そもそも「余計な話」って何でしょうか。
代表的なものをあげていきます。
■「余計な話」で損をしてしまう3つのパターン
① 知識や専門用語で「できるアピール」をする
知識や専門用語を使って相手に説明をして、「できる」と思っているのは本人だけです。
本当にできる人は、難解な用語を使わずに簡単にわかりやすく伝えます。
会議やプレゼンなど人前で話す際に、資料にある現在の社会背景などを長く読んで、評価を落とすのもこのタイプの人です。
② 自分の思い入れや頑張ったアピール
──○○社のコンペは過去に2度失敗していたので先週は毎日終電でした
──A部長とは3度目の面談で、最初は10分くらいしか話せなかったのですが、今回は30分話していただいて
といった経過報告もここに入ります。
頑張ったアピールは自分にしか目が向いていない状態です。
相手が求めているものではないので、伝える必要はありません。
③ 経験談や過去の結果の自慢をする
「自分は前の会社でこんなことをしていた」
「自分だったらこうやっていた」
前の職場で大企業に在籍していた人が、転職先でこのように言ってまわりから相手にされなくなることはよくあります。
また、「自分だったらこうやっていた」は完全に後出しじゃんけんです。
そう言うならやる前から伝えてほしいものです。
エピソードを語ることは悪いことではありません。
内容が問題なのです。
相手に共感してもらえるようなちょっとした失敗談や克服体験で、かつ相手の仕事の参考になるものに限定する必要があります。
そうでない自慢トークは、相手に嫌な気分を与え、本人の評価を下げていくだけです。
承認欲求が強いとこのような話し方になります。
自分自身で承認欲求を満たすための何かをやっておきましょう。
■伝える構成要素を準備する2つの方法
省く情報を決めたら、次は伝える内容を決めます。
ここは非常に重要なポイントです。
ここが明確になっていなかったり、抜けがあれば当然、伝わらなくなってしまいます。
ここでは2つの方法をお伝えしていきます。
1つ目は時系列に起きたこと、あるいは思いついたことを書き出し、そこから伝えるべき情報をピックアップして、その後、余計な情報をそぎ落とすやり方です。
しかし、この方法は人によっては膨大な時間をかけてしまうことがあります。
また実際に自分が重要と思っていた内容は相手にとってはさほど重要でないという場合もあります。
精度を安定させるのが難しいのです。
そこでお勧めなのが2つ目に紹介する方法です。
それはフレームワークを使って話す内容を決めるやり方です。
フレームワークは完璧主義に陥りがちな人には特にお勧めです。
前者の伝えたいことを書き出す方法は完璧主義の人が使うと「あれもこれも」と書き出すことが広がりすぎてしまうことがあります。
しかし、広げすぎは時間との兼ね合いを考えるとよくありません。
何か計画を立てる時、網羅的にリスクを鑑みる「網羅思考」より、あたりをつけて検証する「仮説思考」の方が、早く着手できるし、ゴールにたどり着くという原理と同じです。
時間効率という観点から考えても「フレームワーク」に当てはめてしまった方がいいでしょう。
■「5W3H」でシンプルにそぎ落とす
ではそのフレームワークですが、実のところ無数にあります。
その中でも具体的に推したいのは5W3Hというフレームワークです。
このフレームワークを用いたことで、実際、私の部下で報告に要領を得なかった部下の報告や相談の精度が一気に高まりました。
他にも私の研修や1 on 1(上司と部下が1対1で定期的に行う面談であり、メンバーの成長のサポートになります。私の仕事に置き換えると、現場の上司と毎月1回面談を行うものになります)などで「部下の報・連・相が的を得てない」と嘆いていた人に紹介したところ、実際に使ってみて悩みが消えたとの声も数多くいただいております。
① When……いつ、いつまでに(期限)
② Where……どこの(場所・会社名・所属)
③ Who………誰が・誰に(誰が見る)
④ What……何を
⑤ Why……何のために
⑥ How……どのようにして(手段)
⑦ How many……数量
⑧ How much……金額・予算
(例)
① When……5月10日までに
② Where……西井物産の
③ Who………山本常務が見る
④ What……30周年記念式典提案書
⑤ Why……5月17日のコンぺのため
⑥ How……既定の用紙、補足資料パワポで3枚程度
⑦ How many……90人
⑧ How much……1人あたり2万以内
「5W3H」なんて今さらと思った方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、この当たり前が抜けていることは結構あるものです。
そもそも伝えたいことはシンプルにそぎ落とすことです。そして何より大事なのが普段から手軽に使えるフレームワークを使うことです。
いくら高次元の方法を知っていても、やらなかったら宝の持ち腐れです。
ここまで書くと「大事なのはわかったよ。だけど忙しいからいちいち伝える前に『5W3H』なんて埋められないよ」と思った方もいらっしゃるでしょう。
しかし、それに使う時間はせいぜい1分程度です。
逆に伝える前に1分程時間を使うことによって「伝わらなくてやり直し」「何度も質問される」などの問題が起こることを防止できるのです。
実際、緊急の仕事をされる方にも使っていただいています。
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人材育成コンサルタント・コミュニケーションデザイナー
1970年生まれ。大学卒業後、大手旅行会社、有名学校法人を経て外資系企業へ転職。そこで周囲のメンバーとうまくコミュニケーションが取れず、降格人事を経験する。その後、異動先で出会った上司より「伝え方」の大切さを教わり、「ポイントを絞ってわかりやすく伝える方法」を駆使して、劇的に営業成績を改善。社外でも営業コンサルタント・人材育成コンサルタント・コーチとして活動し、2011年1月より独立。現在はさまざまな業種のビジネスパーソン向けに、人材育成、チームビルディング、生産性向上、コミュニケーション術の方法を中心としたコンサルティング活動及び1on1コーチング、講演、研修等を実施している。累計の受講者数は3万人を超えている。
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(人材育成コンサルタント・コミュニケーションデザイナー 吉田 幸弘)
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