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100人中85人は「原因不明の腰痛」と見なされる…レントゲンには絶対に映らない「ツラい腰痛」の根本原因

プレジデントオンライン / 2023年9月28日 13時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Mintr

整形外科では原因のわからない腰痛がある。整形外科医の佐々木政幸さんは「腰痛の約85%が、原因が特定できない『非特異的腰痛』と言われている。レントゲンを撮っても分からないのは、骨ではなく筋肉に原因があるからだ」という――。

※本稿は、佐々木政幸『1日90秒! 腰痛を自分で治すすごい方法 結局、腰痛は「ほぐし方」が9割』(アスコム)の一部を再編集したものです。

■腰痛の85%は医師でも原因が分からない

痛みが酷くなり、整形外科へ駈け込んでも、「異常なし」の診断が下されるカラクリはこうです。腰痛の診断は、主にレントゲンで行われますが、レントゲンで映るのは、骨だけです。筋肉はほとんど映りません。

骨が原因で急に腰を痛めることは、数としてはあまり多くありません。そのため「特に異常は見当たらないです」と答えるしかないのです。これが、「原因不明の腰痛」の割合が多くなってしまう大きな理由の1つです。

また、レントゲンを撮る理由は、重大な疾患であればレントゲンに原因となるものが映ることがあり、それらの可能性を除外するためです。しかし、そのような重大な疾患である可能性は少なく、結果的に多くの場合「レントゲンを撮っても異常なし」ということになってしまうのです。

このような原因が特定しきれない「非特異的腰痛」と呼ばれる腰痛の割合は、85%にも上るとも言われています。

【図表】85%の腰痛が原因不明
出典=『1日90秒! 腰痛を自分で治すすごい方法 結局、腰痛は「ほぐし方」が9割』より

しかし、実は、腰痛は「異常は見当たらない」と言うだけで、多くの場合、痛みの原因がなにか、医師には推測がついています。

それなのにはっきりとした診断を伝えられないのは、原因が推測はできても、証拠がないからです。医師は、原因がはっきりと見えないもの、数値的な変化がないものには、診断ができないのです。

では、腰痛の真の原因はどこにあるのでしょうか。

■真の原因は「筋肉」にある

私は、腰痛のほとんどの原因は、筋肉のトラブルによるものではないかと考えています。具体的にはどのような問題を抱えているのか。大きくわけると2つあります。

①筋肉が炎症を起こしている
②筋肉が傷ついている

そして、この2つのいずれも、筋肉が硬くなることで起こるのです。

筋肉は何らかの形で過度に負担がかかると、筋肉を構成する筋繊維同士が「ギュッ!」とくっつくという性質があります。そして、この筋繊維が硬くなってギュッとくっついた状態になると、炎症が起きてしまうのです。また、このギュッと固まった状態の筋肉は、非常に傷つきやすい性質を持っています。

古くなって硬くなってしまったゴムをイメージしてみてください。本来ならしっかりと伸び縮みするゴムも、時間が経って使っていないうちに硬くなってきますよね。すると、ちょっと伸ばそうとしただけでもちぎれてしまいます。

男性の腰をマッサージする理学療法士
写真=iStock.com/miniseries
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/miniseries

筋肉も同じです。硬くなってしまった筋肉を動かすと、ちぎれることまではないかもしれませんが、筋肉が傷ついてしまうのです。つまり、頻繁に腰痛になる人は、腰の筋肉が硬いまま過ごしていることが考えられます。

■大谷翔平選手の筋肉は驚くほど柔らかい

現在、メジャーリーグで活躍されている大谷翔平選手は、とんでもないほど柔らかい筋肉の持ち主です。1つ実験をして、大谷翔平選手の凄さを実感してみましょう。

手の甲を腰に当てた状態のまま、肩甲骨まわりを動かすように、肘を前に出してみてください。どれくらい前に出せましたか?

大谷選手は、手の甲を腰に当てた状態で、両肘を真正面に向けることができるのだそうです。それだけ、肩甲骨まわりの筋肉が非常に柔らかいのです。

スポーツは、日常ではありえない動きを求められることが多く、非常に筋肉に負担がかかります。しかし、筋肉の柔らかさがあるからこそ、二刀流という、筋肉に尋常ではない負荷のかかることを行えてきたのではないでしょうか。

プロの世界とは違う、と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、筋肉が柔らかくなると、しなやかな動きができるようになったり、ケガをしにくくなったりするのは、どんな方にも当てはまることです。

■ただほぐせばいいわけではない

筋肉の柔軟性が大切なら、柔軟体操をすればいいのではと思った方もいるのではないでしょうか? これは、確かに正解ですが、ただほぐせばOKというわけではありません。ほぐし方にもポイントがあります。

例えば、よくストレッチで「痛気持ちいいくらい伸ばす」などといいます。少し刺激が強いほうが、効いている感じがする! と思っている方は少なくないです。しかし、「痛気持ちいいくらい伸ばす」は腰痛をお持ちの方にとって、かなり危険です。

頻繁に腰痛を繰り返す方は、筋肉が常日ごろから硬い状態である可能性が非常に高いです。そんな方たちが、この筋肉を伸ばす柔軟体操をすると、筋肉を痛めてしまう可能性があるのです。

ストレッチにおいて、もっとも意識するべきは、「いかに力を抜くか」です。ストレッチというと、どうしても「伸ばす」ということを意識します。

確かに伸ばすことも大切なのですが、それよりも意識してほしいのは、凝り固まった筋肉を「ほぐす」「緩ませる」ということです。力を抜いてリラックスし、反動はつけずにゆっくりじっくりストレッチを行うことが重要になってきます。

■「付着部筋」をほぐしたほうがいい

また、ほぐす場所も重要になってきます。筋肉と一言でいっても、様々な種類の筋肉があり、いろいろな役割を担っています。そのなかでも、ほかの筋肉の部位より、構造や役割的な理由から、いちばん痛みやすい部分があります。

それが付着部筋(ふちゃくぶきん)です。「骨に付着している部分の筋肉」ということから、「付着部筋」と私は呼んでいますが、正式には、筋肉の付着部、付着点などといわれます。筋肉の中心から端に向かうにつれて硬い腱(けん)になっていきます。その端の部分こそが付着部筋です。

【図表】骨に付着している部分の筋肉(付着部筋)
出典=『1日90秒! 腰痛を自分で治すすごい方法 結局、腰痛は「ほぐし方」が9割』より

付着部筋の役割の1つとして、衝撃を吸収することがあります。筋肉は骨と骨をつなぎ、伸びたり縮んだりすることにより関節を動かしているのですが、伸び縮みが行われる際に負荷がもっともかかるのがこの付着部筋です。

柔らかい筋肉と硬い骨をつないでいる付着部筋はとても痛めやすい箇所なのです。衝撃を吸収する大切な役割を担っているのに、負担がかかりやすい付着部筋は、意識しないとどんどん固まっていってしまうのです。

そして、腰まわりには、たくさんの骨や筋肉が複雑に入り組んで構成されていますから、付着部筋もたくさん存在しています。そのため、この付着部筋をいかに傷めずにほぐすかが重要なのです。

■朝は筋肉がバキバキになっている

突然ですが、1日のなかで、付着部筋の状態がいちばん悪いのは、次の3つのうちどれでしょう。

1.1日の始まりである朝
2.活発に動いている昼
3.1日の疲れがたまる夜

正解は1の朝です。通常、1日のなかでは朝がもっとも付着部筋が危険な状態だといえます。

夜の間というのは、寝返りを打つぐらいで、ほとんど筋肉を動かしません。そのため、血流を上げる筋肉のポンプ効果が、ほとんど発揮されない状態です。また、寝ているときは、夜も活動をしている脳や内臓に血が優先的にまわされて、筋肉の血流は落ちているといわれています。

血流は酸素という筋肉を硬くしないための重要な栄養を運んでいるので、血流が低下すると、筋肉は硬くなってしまいます。凝りやすい付着部筋は、油切れした機械のような感じなのです。

次に状態が悪いのが夜。朝がいちばん付着部筋が凝り固まっていて、日中は歩いたり、動くことによって少しずつ筋肉の硬さはほぐれていきます。そのため、普通に考えれば夕方や夜には痛みが少なくなっていっているはずですが、なぜ逆に痛みが増していくのでしょうか。

それは、日中の生活習慣に問題がある可能性があります。また、仕事で腰にとってつらい姿勢を続けざるを得ない方も、夕方から夜にかけて痛みが増していく傾向にあると思います。

というのは、歩き方や座り方、掃除や洗濯など家事をするときの姿勢、荷物の持ち方などといった間違った姿勢で、どんどん筋肉に負担がかかっている状態です。特に、腰痛に悩まされている方は、日常的に腰に負担がかかりやすい動作をしている可能性が高いので、夜には付着部筋が硬くなっている可能性があります。

そこで、付着部筋が悲鳴を上げている朝、1日の負担が溜まっている夜と、腰痛を引き起こしたり悪化させたりする危険性のある時間(デンジャラスタイム)を避けるようにほぐしてあげることが重要です。

■腰痛を改善する筋肉のほぐし方

それでは、具体的に付着部筋をほぐしていきましょう。目が覚めて起き上がる前にベッドの上で、寝る前にベッドの上で、できるだけ楽にそして忘れないように、私が考えてつくった「ほぐすトレッチ」というものがあります。

佐々木政幸『1日90秒! 腰痛を自分で治すすごい方法 結局、腰痛は「ほぐし方」が9割』(アスコム)
佐々木政幸『1日90秒! 腰痛を自分で治すすごい方法 結局、腰痛は「ほぐし方」が9割』(アスコム)

おすすめしているストレッチは3つで構成されているのですが、そのなかでも今回は「お尻ふりふりほぐし」をご紹介できればと思います。この「お尻ふりふりほぐし」は、朝、布団から起き上がる前にやっていただくストレッチです。

このストレッチでは、中殿筋(ちゅうでんきん)というお尻の筋肉をほぐします。

お尻の筋肉というと、あまり腰痛と関係がなさそうに思えます。

しかし、中殿筋は骨盤と股関節を結ぶ筋肉となっており、歩くときや立つときに左右から骨盤を支え、下半身を安定させるとともに、上半身のバランスを取る重要な役割を果たします。

このストレッチを通して中殿筋をほぐすことで、固まった筋肉の無駄な力が抜けて、体を支える力回復してくれる(=腰の痛みが出にくい体にしてくれる)という効果が期待できるのです。

ではさっそく、やっていきましょう。

「お尻ふりふりほぐし」のやり方
【STEP1】四つんばいになる……布団に両手と両膝をついて四つんばいになります。
【STEP2】膝を折り、うずくまるような形をとる……続いて、膝を折ってうずくまりましょう。
【STEP3】左右にお尻をずらすように8秒間振る……膝が布団から浮かないように意識しながら、左右にお尻をずらすようにゆっくりと8秒間振ります。
【図表】布団から立ち上がる前のお尻ふりふりほぐし
出典=『1日90秒! 腰痛を自分で治すすごい方法 結局、腰痛は「ほぐし方」が9割』より

■「頑張らない」ということを頑張る

おそらく、「え? こんなので腰痛が治るの?」と思われた方もいらっしゃるかと思います。しかし、これくらいゆるやかなもののほうが、腰痛持ちの方にとっては適切なストレッチになるのです。

とはいえ、痛みの程度は方それぞれ。毎日のストレッチが「簡単だ!」と感じる方もいれば、「やっぱり痛いし難しい……」と感じる方もいるでしょう。でも、できなくても問題ありません。大切なのは少しずつでも続けること。「できるものをできるときだけやる」ということを継続すれば、徐々に効果が表れます。ぜひ気軽な気持ちで、優しく付着部筋をほぐしてみてください。

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佐々木 政幸(ささき・まさゆき)
整形外科医
1995年、慶應義塾大学医学部の整形外科学教室に入局。大学病院や関連病院を中心に診療。2010年、久我山整形外科ペインクリニックを開院。クリニックでの治療は「痛みを長引かせない」がモットー。リハビリなどで長く通い続けるよりも、できるだけ早い段階で痛みをリセットできるよう、様々な方向からベストな治療を考案・提供している。メディア出演も多数。著書に『1日90秒!腰痛を自分で治すすごい方法 結局、腰痛は「ほぐし方」が9割』(アスコム)がある。

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(整形外科医 佐々木 政幸)

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