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「よくできました」と「よく頑張りました」は全然違う…「頭のいい子」の親がやっている"最高の褒め方"【2023下半期BEST5】

プレジデントオンライン / 2024年1月22日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/TATSUSHI TAKADA

2023年下半期(7月~12月)、プレジデントオンラインで反響の大きかった記事ベスト5をお届けします。教育・子育て部門の第3位は――。(初公開日:2023年7月26日)
子供のやる気を引き出すにはどうすればいいのか。スタンフォード大学・オンラインハイスクール校長の星友啓さんは「結果より努力したことを褒めるのが効果的だ。他の子どもの能力を比較したり、決めつけたりする声かけはやめたほうがいい」という――。

※本稿は、星友啓『「ダメ子育て」を科学が変える! 全米トップ校が親に教える57のこと』(SB新書)の一部を再編集したものです。

■「結果」と「努力」どちらを褒めるのが効果的か

子どもの何を褒めるのかが肝心です。

まず、子どもができたことの結果を褒めるのは要注意。

「よくできたね!」と、褒めてあげたくなるのは親として自然な感覚ですが、子どもができたことばかりを褒めていると、子どもは次も同じように「よくできた!」と言われるような行動をとろうとしてしまいます。

その結果、「できる」とわかっている簡単なものしかやらなくなってしまったり、できないかもしれないと感じる難しいものに取り組んだときに、プレッシャーに感じ、やる気が出なくなったりしてしまいます。

一方で、子どもの結果を褒め過ぎてはいけないのに対して、子どもの努力を褒めるのは効果的です。たとえば、成績。数学の才能やしっかりした性格を直接的に褒めるのではなく、「たくさん頑張ったから、すごくできるようになったね」「意識して努力しているから、どんどん自分でできるようになってきたね」などと伝えてみてください。成果ではなく、努力のプロセスを褒めてあげましょう。

■的外れな褒め言葉は逆効果

しかし、努力を強調し過ぎてもいけません。なんでもバランスが肝心です。たとえば、算数好きの3年生アリサちゃん。少し上の学年の問題集に取り組んでいます。

上の学年の問題でもスイスイ朝飯前。楽しく簡単に解いていきます。そこでやさしい先生がアリサちゃんの努力を褒めようとして「すごくよく頑張ったね」の一言。

アリサちゃんには頑張る必要のない、簡単な問題。それだけにアリサちゃんは的外れの褒め言葉に困惑して、先生からあまり理解してもらっていないように感じてしまうかもしれません。

それどころか、先生からみたら必要以上に頑張っているように見えた、つまり裏を返せば、頑張らずに解けるべき問題だったのかもしれないと思ってしまうことだってあります。そうなれば、アリサちゃんは、自分の能力が低いというイメージをもってしまいかねません。

そういった事態を避けるためにも、前述した褒め方の真実味のポイントに戻って、努力を褒めるときにもほどほどに真実味をもって伝えるように心がけましょう。

■おだててやる気にさせてはいけない

さらに3つ目の褒め方のポイントとして、釣ることを目的に褒めてはいけません。なぜ子どもを褒めているのかを正直な気持ちで振り返りましょう。素直な気持ちを表すため、教育的なサポートをするため、といった自然な目的なら問題ありません。

一方で、褒めることで子どもの行動をコントロールしようとすれば、子どもは敏感に察知してしまいます。そうなってしまっては、その後の褒め言葉も素直に受け入れられず、子どもとの関係性がギクシャクしてしまいかねません。

また、仮に子どもを褒めて、行動のコントロールに成功した場合も大いに気を付けなくてはいけません。その場合、子どもは褒め言葉を期待して行動しているので、褒め言葉がないとやらなくなってしまいます。

また、褒め言葉の報酬によるコントロールが長期的に続けば、外発的やる気のリスクが心や体に影響を及ぼしかねません。

■「比較」は「結果」よりたちの悪い褒め方

最後に、自分の子どもと他の子どもの能力を比較するのはやめましょう。

子どもができたことを褒めるときに、「クラスで1番ね!」とか、「○○ちゃんよりできたのね」とか、ついつい日常の子育ての中で、ポロッと口から出てしまうもの。さらに、そうした周りとの比較で、子どものやる気がアップしたなどの効果を体験したことさえある方も多いかもしれません。

実際に、社会的比較による褒め言葉が、子どもを一時的に強く動機づけることがこれまでの研究でもわかっています。

しかし、問題なのは長期的なやる気をサポートできるかどうかです。人生には変化がつきもので、子どもの学校や塾が変わることも、順位や評価が悪くなることも、いつだって起こりえます。

また、褒めるほどに順位が上がっている場合には、より競争の激しい環境に子どもが身を置くようになり、これまでのような結果が得られなくなります。

たとえば、地元の学校ではオール5だったのに、進学校に入学するとそこではオール3。そんなことだってしばしば起こりうるのです。そうなると、比較による動機づけだけでは、子どものやる気が簡単にへし折られてしまうことになります。

さらに、状況の変化がなかったとしても、周りとの比較は、勉強から発生する結果に基づくので、外発的やる気にあたります。そのため、周りとの比較からくるやる気は、長期的には、心や体の健康に悪影響を及ぼしてしまうことになるのです。

■親からの「決めつけ」が子どもを呪う

褒め方以外にも、子どもへの声かけで注意しておくべき点があります。それは、親からの決めつけを子どもに押し付けないこと。たとえば、「あなたは女の子だから、文系脳よね」。こんな何気ない声かけにも実は危険が潜んでいるのです。

それを理解するために、「ステレオタイプの脅威(stereotype threat)」という概念を押さえておきましょう。これは、スタンフォード大学の心理学教授クロード・スティールらの研究から幅広く知られるようになった重要トピックです。

「ステレオタイプ」とは、人種や性別、年齢などに関する決めつけのこと。

「この人種はあの人種よりもスポーツに長けている」
「男子の方が理系分野で優秀である」

こうしたステレオタイプは、科学的に誤りだと示されても、まだまだ根強く社会に残っています。

「ステレオタイプの脅威」とは、そうしたネガティブで誤ったステレオタイプでも、それを意識することによって、その通りの悪影響が現れてしまう現象です。たとえば、「女性は理系に向かない」。これは誤ったステレオタイプですが、まだまだ根強く意識されています。

■子供の能力や性格を決めつけてはいけない

たとえば、女子高生のサクラさんが数学のテストを受けます。テストの初めに自分の性別をチェックする項目があり、サクラさんは「女」をマークして、テストを始めていきます。

そして非常に興味深いことに、サクラさんがこのように自分が女性であることを意識してテストを受けた場合、意識しない場合よりも、成績が下がりがちになってしまうというのです。

理由はシンプルで、誤ったステレオタイプでも、それを意識することによって、無意識のプレッシャーにつながり、実際のパフォーマンスに悪影響が出てくるからです。こうしたステレオタイプの脅威は人種や性別、年齢などに関するものも含めて、他にも多数存在することが知られています。

さらに、ステレオタイプなどによるレッテル貼りは、子どもの能力を決めつけて意識させることによって、固定マインドセットにつながってしまいます。

実際、「○○さん、数学むいてないから」「××ちゃん、運動音痴だもんね」などといった、親や教師の日常での何気ない言葉が、子どもたちに能力のレッテルを押し付けて、固定マインドセットに誘発してしまっていることがこれまでの研究でも明らかにされています。

そのため、子どもの能力や性格を決めつけて、今後も変わることのない固定的な特徴であるかの如く語ることには十分に注意が必要です。前述のように固定マインドセットは、子どもの成長の足枷になってしまいます。持つべきはやはり、成長マインドセットなのです。

こうした理由から、「勉強ができない」と言って子どもを育てれば、本当に勉強ができなくなってしまうと肝に銘じておきましょう。

反抗的な娘と問題を抱えた母親
写真=iStock.com/Hakase_
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Hakase_

■「ポジティブな決めつけ」にも注意が必要

また、ネガティブなステレオタイプだけでなく、ポジティブなステレオタイプにも気を付けましょう。

たとえば、「しおりちゃん、小さい頃から国語ができたよね、女の子だもんね」「お父さんに似て勉強が得意ね」というような声かけ。こうした声かけはポジティブではあるものの、性別や血筋などの生まれ持って与えられた事柄にレッテルを貼ってしまいます。

自分が既に与えられた、変えることができないものに対するポジティブな期待は、時に必要以上のプレッシャーになりかねません。

将来、国語の成績が下がったり、勉強が得意でなくなってしまった場合に、「女なのに国語ができないなんて」「お父さんの子なのに」などと感じてしまうかもしれません。それでは、変えられない自分の生まれ持った特徴をポジティブに捉えている場合でも、それが逆に大きなプレッシャーになってしまい悪影響が出かねません。

このように、子どもを優しくサポートするかのようなポジティブなレッテル付けも、看過できない危険性をはらんでいます。ネガティブでもポジティブでも、子どもにレッテルを貼り過ぎないように日頃から肝に銘じておきましょう。

■絶対にやってはいけない「最悪の声かけ」

次に、子どもが間違えたときの声かけについても解説しておきましょう。

間違えた瞬間が学ぶための最大のチャンスです。そんなとき、ネガティブな言葉でまくし立ててしまうと、子どもはちぢこまってしまいます。

子どもの学ぶ姿勢を萎縮させて、間違いを避ける習慣がついてしまうと、最高の学習機会が無に期してしまいます。そこでいくつか誤った声かけの例を見ながら、考えていきましょう。

「そんな簡単な問題、なんでできないの」

ひどい声かけとはわかっていても、ついつい力が入ると似た言葉が口をついて出てしまうものです。

叱られた少年と母親
写真=iStock.com/takasuu
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/takasuu

まず、「そんな簡単な問題」と決めつけてはいけません。「簡単なはずなのに、自分にはそれができない」と、子どもに思わせてしまったら、勉強が嫌になってしまいます。

学習の難易度や教材のレベルは、子どもの現在の進度や能力に合わせなければいけません。親が決めつけた難易度のレベルに子どもを無理やり当てはめようとするのは本末転倒で、逆効果になってしまいます。

もし、教材のレベルが子どもの現在の学習進度に合っていないのならば、子どもをまくし立てずに、必要なレベルに達するための具体的なサポートを考えたり、現在の教材が子どもにフィットしているかを再評価してあげましょう。

■だから勉強する意欲はどんどん下がる…

「本当にがっかり」

こちらはまず「がっかり」などと、親側のネガティブな主観を一方的に表現してしまっているのがまずいでしょう。頑張って問題に取り組み、その努力が生み出した結果が、目の前にいる大切な人をがっかりさせてしまった。子どもにそう感じさせては、学習への意欲をそぐだけです。

子どもが間違ったり、学習の評価が基準に達していない場合には、主観に基づくネガティブな表現を避けましょう。より客観的な視点からアプローチして、どこがどのように間違っているのかを説明して、子どもが次のステップに進めるように手がかりを与えることが大切です。

「もう1回やってみて」

確かに、反復練習が必要な学習過程もあります。しかし、一度できなかったものを単に繰り返すように指示するだけでは、どうやり直したらいいかがわかりません。

もう一回というのであれば、2回目にチャレンジするためのアドバイスや、次のステップをサポートしてから、再挑戦を促すべきです。単に、「やり直せ!」だけでは、どうしたらいいかわからず、学習への嫌悪感だけが焼き付いてしまいます。

■子供が間違えたときこそ「絶好の機会」である

子どもが間違えたとき、まずは、子どもがその問題にチャレンジしたこと自体を褒めてあげましょう。

教材のレベルが高かったにもかかわらずチャレンジができたことや、間違いから新たな学びを得る機会ができたことなどについて、ポジティブに褒めてあげるのが、ベストな声かけです。

子どもが間違えたときには、以下の点に注意して、声をかけましょう。

1.間違ったその瞬間にこそ脳が効果的に学べることを伝える。
2.チャレンジしたこと自体を褒める。
3.ネガティブな主観を表さず、間違いを客観的に説明する。
4.問題が子どもの学習進度に合っているかどうか考える。
5.やり直しの場合は、やり方の方向性をアドバイスする。
これらの点に注意すると、たとえば、以下のような声かけができます。

「難しかったね。でも、よくチャレンジしました。ここがこうなので、ああしなくては いけないの。この点に注意して、こっちの問題をやってみたらどう?」

星友啓『「ダメ子育て」を科学が変える! 全米トップ校が親に教える57のこと』(SB新書)
星友啓『「ダメ子育て」を科学が変える! 全米トップ校が親に教える57のこと』(SB新書)

また、子どもが問題に取り組んで間違えるのではなく、「わからない」と報告するような状況もあります。その場合も、この考え方を応用しましょう。

何かがわからないということがわかるのは、その何かについて考えてみたからわかること。まずはその姿勢を認めてあげることから始めましょう。その上で、問題の考え方をアドバイスしたり、ヒントを出してあげます。

一方で、「わからない」が、単にその課題をやりたくないという意思表示の場合もあります。そう判断したならば、現在の学習方法や条件が子どもの学びに合っていないと仮定して、変えられる点を考えてあげましょう。

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星 友啓(ほし・ともひろ)
スタンフォード大学・オンラインハイスクール校長
哲学博士、EdTechコンサルタント。1977年東京生まれ。東京大学文学部思想文化学科哲学専修課程卒業。その後渡米し、Texas A&M大学哲学修士、スタンフォード大学哲学博士を修了。同大学哲学部の講師として教鞭をとりながらオンラインハイスクールのスタートアップに参加。2016年より校長に就任。現職の傍ら、哲学、論理学、リーダーシップの講義活動や、米国、アジアにむけて教育及び教育関連テクノロジー(EdTech)のコンサルティングにも取り組む。全米や世界各地で教育に関する講演を多数行う。著書に『スタンフォード式生き抜く力』(ダイヤモンド社)がある。

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(スタンフォード大学・オンラインハイスクール校長 星 友啓)

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