小さな会社をすぐに売る"連続イグジット"で40歳リタイア目指す…自由な人生を手に入れる究極の方法
プレジデントオンライン / 2024年3月27日 20時15分
※本稿は、遠星誠『100万円のスモール・ビジネスを3年以内に3000万円で売却する ミニマム・イグジットの教科書』(イースト・プレス)の一部を再編集したものです。
■会社は「小さく興して育てて売る」
会社は「小さく興して大きく育てる」のが大原則です。本著では、それに「黒字を出してすぐに売る」というフェーズを加えています。
国税庁の「令和3年度分会社標本調査」によると、日本の法人のうち、なんと61.7%が赤字企業です。黒字の企業よりも、赤字の企業のほうが多いのです。
ならばなおさら、起業したばかりの未熟な企業がいきなり黒字を達成できる確率は低いと想像がつくでしょう。利益が出ないまま倒産するリスクもかなりあります。
そう、企業にとっては、最初の1年を生き抜くことが、最初にして最大の試練なのです。では、会社にとっての「生きる」とはなんでしょうか?
それは「黒字を出し続ける」ということです。どんなに小さい企業でも、黒字を出し続ければ生き延びられる可能性は高くなります。逆に、どんなに大きな企業でも、赤字が続くと死んでしまいます。売上高も資本金の額も関係ありません。
そして黒字にしやすいのは、コストの小さい企業です。私が小さく会社を興すことを勧めるのは、そのためです。
ミニマムな起業を勧める理由はもう一つあります。それは、自然とビジネスモデルもシンプルなものになり、後にそのビジネスモデルを再現しやすい、つまり拡大しやすいからです。
まずは小さく、シンプルなビジネスを立ち上げ、利益が出たらそれをコピーして広げていくのです。
■まずはホテルの清掃から始めて、経営に乗り出す
具体例を挙げましょう。「ホテル管理会社を作ろう」と考えるとき、いきなり多数のホテル管理を担う大きな会社を作るのは、リスクが大きいです。
私ならまず、「ホテルの清掃」に絞った小さなビジネスからはじめます。清掃に特化した会社を作り、ホテル管理会社やホテルからの外注を獲得し、ビジネスをはじめるということです。
そのようなビジネスなら低リスクで、利益も出しやすいでしょう。何よりも、ホテルやホテルに関係する他の企業・ビジネスパーソンとのつながりができてくるはずです。
人脈や経験を得た後は、ホテルにまつわる他の領域(飲食やブライダルなど)に、やはり小さく進出します。
さらにそこでも利益が出るようになったら、ついに本丸であるホテルそのものの経営に乗り出し、会社を大きくしていくことができるでしょう。
まずは、成功しやすい分野で小さくシンプルなビジネスをはじめる。それが成功への第一歩です。
■「基本給」という極めてヘビーなコストが発生せず、黒字化しやすい
ビジネスには、「重いビジネス」と「スモールビジネス」の二つがあります。私が勧めるのはスモールビジネスです。
重いビジネスとは、コストが大きいため利益率が低くなる大規模なビジネスのことです。たとえば、自動車メーカーや建築会社がそうです。仕入れにも人手にもコストがかかります。
こういった企業は売上が大きいので利益も大きく見えますが、実はコストも大きいのです。
当たり前のことではありますが、利益は「売上げ-コスト」によって算出されます。
そして、何度も書くように、ビジネスで重要なのは売上よりも利益なのです。
一方のスモールビジネスとはコストが小さいビジネスのことで、物販ではなくサービス業が主流です。
以前私が手掛けていた民泊管理会社は、スモールビジネスでした。なぜなら、民泊管理の「ノウハウ」を売っていたからです。ノウハウを売るなら、あまりコストはかかりません。
人件費を抑えるのがスモールビジネスの重要なポイントです。しかし、人手がかかるビジネスでも、スモールビジネスモデルは実現可能です。
やはり、私が以前手掛けた清掃会社は、清掃スタッフは必要でしたが、モノは売らずに「労働力を売る」軽い会社でした。スタッフもアルバイトとして、コストを最小限にしました。
今は昔とは違い、スモールビジネスを立ち上げやすい時代です。たとえば、20年前に自社のビジネスを広げようと思ったらたくさんの営業パーソンが必要でしたが、今は多数のSNSインフルエンサーが存在します。
営業パーソンを雇わず、インフルエンサーに案件ごとにフィーを払う形式ならばコストは大幅に抑えられるでしょう。案件ごとの契約ならば、「基本給」という極めてヘビーなコストが発生しないからです。
このようなスモールビジネスを勧める理由は、とにかく黒字化しやすいからです。
仮に売上が落ちてしまっても、コストが小さければ黒字を維持できます。当たり前のようですが、これは極めて重要なポイントなのです。
■スモールビジネスの売却額は利益の10倍が相場
重いビジネスは売上が大きいですが、コストも大きいことを忘れてはいけません。
もし売上が落ちてしまったら、短期間でコストを圧縮するのは難しいため、大きな赤字がのしかかるリスクがあります。
でも、スモールビジネスならその心配はいりません。極端な話、コストがゼロ円のビジネスなら、1円以上の売上があれば黒字です。原理的に赤字が出ないのです。もっと重要なことは、コストが小さいスモールビジネスは、イグジットで高く売れるということです。
重いビジネスの売却額はその時点での利益の3倍程度が相場です。スモールビジネスなら、10倍が相場になります。スモールビジネスは、買い手にとっても魅力的だということです。
その理由は、リスクの低さにあります。重いビジネスを買うためには多大な投資金が必要ですから、リスクが高くなるのです。でもスモールビジネスならその逆です。
たとえば私の最初の会社である民泊管理会社は、当時の利益は年900万ぐらいでしたが、1億円で売れました。年間利益の10倍以上ですね。投資金も少ないスモールビジネスだからこそ、高いお金を出して買う価値があると判断されたのです。
ただ、私の3つ目の会社はディベロッパーですから、重いビジネスでした。当時の年間利益は6億弱と民泊管理会社よりはるかに大きかったのですが、売値は15億円でした。まあ、重いビジネスならこんなものです。
今はビジネスをどんどん軽くできる時代です。コストを抑えることとモノ以外を売ることを意識してビジネスを探ってみてください。
■1年目で利益を出し、その時点でイグジットできる状態を作る
スモールビジネスにおいては、資本金は100万円もあれば十分です。
先ほど例に挙げた清掃会社を「スモールビジネス」として立ち上げる場合を考えてみましょう。最低限必要なのは、立ち上げの手続き費用と事務所の賃料、スタッフの人件費です。
司法書士に依頼する設立関係費用がざっくりと30万円程度、事務所の頭金が30万円として、合計60万円。残りの40万円が人件費ですが、スタッフ1名の人件費を月あたり20万円として、2カ月分とします。しめて100万円です。
立ち上げのコストが小さいということはそれだけ黒字を出しやすいということを意味しますから、1年目に黒字を達成するのは難しくありません。
もちろん、3〜12カ月目も人件費は発生します。しかし、そのころには売上も発生していますから、人件費を含むコストをカバーできます。
ですから私は、会社設立前にも準備期間を3カ月ほど用意し、2カ月以降に利益が出るように顧客を確保します。創業してから考えはじめるのでは遅いのです。こうして、1年目で利益を出し、その時点でイグジットできる状態を作ってほしいのです。
1年目に100万円の利益が出たということは、2年目はそのビジネスモデルを拡大させればよいのです。2年目に300万円ほどの利益を達成することは、さほど難しくないということです。
もし2年目に300万円の利益を出せれば、スモールビジネスなら利益の10倍ほどの額で売れますから、3000万円でのイグジットが期待できます。
すなわち、100万円で作った会社が、3年で3000万円で売れるということです。
ちなみに、ここで述べた例は「捕らぬ狸の皮算用」ではありません。スタッフに固定給を払うことを想定していますので、むしろ厳しめのシミュレーションです。
人件費を固定給ではなく歩合制にできるビジネスモデルならもっとコストを圧縮できるため、黒字も大きくなるでしょう。
日本ではいまだに、営業パーソンの成功報酬式(コミッション式)が少ないようですが、中国をはじめ世界では歩合制が当たり前になっています。
歩合制が浸透しないせいで日本企業は余計なコストを背負い込んでしまい、そのことが日本経済の足を引っ張っているというのが私の考えですが、それは後述しましょう。
■「イグジットは大企業の手法」という大きな誤解
日本では、イグジットは大企業のもので、小規模なスタートアップには無関係だと思っている人が多いのですが、それは違います。
プライム市場にはイグジットの仲介会社が数社、具体的には(株)ストライクと(株)日本M&Aセンターがあります。それらの実績を見ると、1億円以下の仲介が大半です。つまり、中小零細企業のイグジットのほうが多いのです。
レコフデータの調査によると資本金1億円以下の中小企業が当事者となるM&Aの成約件数は2021年だけで3403件に上るそうですが、これは私の感覚を裏付けています。
それにも関わらず「イグジットは大企業のもの」というイメージがついてしまっているのは、単にメディアで報道されるのが大企業のイグジットであるというだけの話です。小さい企業のイグジットにはニュースバリューがないので報道されませんが、実は数はとても多いのです。
そして、イグジットがうまくいくかどうかに企業の規模は関係ありません。大切なのは、利益が出ているかどうかです。売上ではなく利益です。
遠い世界の話だと思っていたイグジットが身近なものに思えてきましたか? あなたも、数年後にはイグジットを成功させているかもしれませんよ。
これは余談ですが、イグジット仲介も私が定義する「スモールビジネス」に相当します。コストが小さいため、売上の7割近くが利益になるというわけです。これらの会社は極めて高い給与で知られていますが、それも当然の話です。
■明るい見通しがある上り調子のときに売る
イグジットは勢いが大事です。メディアでは大企業の大規模なイグジットばかりが話題になるため、ずいぶん時間をかけるイメージがあるかもしれませんが、実は小さい企業のイグジットでは瞬発力が大事です。
前も書いたように、現代社会は何が起こるかわからず、それが大きくビジネスに影響します。新型コロナウイルスにウクライナ侵攻など、状況は突然変わるので、長期的な計画を立てるのが難しいと言わざるをえません。
つまり、私が定義する「いい会社」とは、「経営計画と戦略をフレキシブルに変えられる企業」ということになります。
「でも、イグジットを成功させるには長期的な事業計画が必要では?」と思われるかもしれませんが、その必要はありません。事業計画は1年分で十分です。もっと言えば、事業計画以前に、決算書が1年分だけあれば売却が可能なのです。
ここだけの話、私が民泊管理会社を売却した際には決算書さえありませんでした。
設立1年目の決算前に売却が決まったからです。このときは翌年の試算表だけで売却が成立しました。
イグジットには3〜6カ月くらいの期間が必要です。だから、数カ月先くらいまでの明るい見通しがある上り調子のときに売るべきです。安定飛行に移ってからではなく、離陸して高度を上げているときに売るべし、ということです。
しつこいようですが、現代は一寸先は闇です。成長し、安定期に入ってから売るようでは手遅れで、高い価値はつかないでしょう。
会社を作ってから売るまでの3年間は全力疾走をしてください。
犠牲にするものは多いかもしれませんが、それだけ得られるものも多いのです。数年間我慢するだけで何千万円ものキャッシュが手に入るなら、がんばる価値はあるのではないでしょうか?
人生はせいぜい100年です。私は以前から、40歳でのリタイアを目標にして走り続けています。40歳になったら、イギリスで好きなことをやりながら家族とのんびりと暮らすつもりです。
みなさんだって、そのくらいのささやかな夢を実現できるのです。そのためならば、数年間くらい、全力でがんばってみませんか?
■お金が人生を自由に楽にしてくれる
イグジットは1回きりではありません。3年ごとに起業〜売却を繰り返すことで、手持ちのキャッシュはどんどん膨れ上がります。
起業とイグジットは、1回目よりも2回目、2回目よりも3回目のほうが楽で儲かります。「イグジットを成功させた」という実績が強力な信用力になるからです。
買う側の立場からするとイグジットにはリスクがありますから、実績がある事業主からのイグジットが望ましいのです。
実際、私もイグジットを積み重ねるにつれ仕事がしやすくなり、より多くの利益が得られるようになりました。一社目の1年目の利益は700万円くらいでしたが、三社目は1年目で5000万円、2年目で6億円くらいの利益が出ました(売上ではなく、利益です)。
こうしてイグジットを繰り返すことで、あなたの手元にはキャッシュがどんどん貯まっていきます。お金が人生を自由に楽にしてくれます。
イグジットで手に入れたお金は、夢を叶えるための資金源になります。今の私の夢は住む家がない犬たちを助けることですが、そのためにはかなりのお金がかかります。
もちろん私がみずから動いて犬たちを助けてもいいのですが、それでは年に2、3頭を助けるのが精いっぱいでしょう。今も私は二頭の犬たちと暮らしていますが、それだけでも大変なくらいです。
ならば、私はイグジットでお金を稼ぎ、それを資金にしてたくさんの犬たちを助けたほうが夢は大きく叶うのです。ビジネスパーソンとしての夢と、人生の夢は別です。
ビジネスパーソンの夢はお金しかありえません。
お金があれば、人生の夢を叶えられます。イグジットはそのための手段なのです。
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起業家
1984年、杭州出身。大学卒業後、弁護士を7年間行う。2015年から連続で3つの会社を創業し、全て利益を出して、株式売却(イグジット)をおこなった。得意な分野は国際取引及び短時間で会社設立から株式譲渡まで行うこと。直近では、事業開始2年でスキーリゾート開発会社を15億で大手証券会社に売却。現在、日本の起業家向け「100万円で起業して3年後に3000万円で売る“ミニマム・イグジット”スクール」を立ち上げている。著者のイグジットによる資産は約20億。
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(起業家 遠星 誠)
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