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春から夏にかけて、乾燥する冬期の1.2倍の患者が皮膚科を訪れる…医師が教える"花粉皮膚炎"の症状と対策

プレジデントオンライン / 2024年3月30日 10時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kazuma seki

春から夏にかけては、肌トラブルの多い季節だ。産業医の池井佑丞さんは「春~夏の皮膚科患者数は冬の時期の1.2倍で、気温が高くなるにつれて肌トラブルは増えていく。特にこの時期に目立つのが、花粉皮膚炎、寒冷蕁麻疹、アトピー性皮膚炎だ」という――。

■春~夏の皮膚科患者数は冬の時期の1.2倍

冬が終わりをみせ季節は春へと向かい、寒暖差の大きい季節になりました。季節の変わり目は体調管理に注意されているという方も多いと思いますが、この時期は肌トラブルが始まりやすい時期でもあります。

原因は、花粉だったり、気候や気温差だったりといくつか考えられますが、この時期に肌トラブルを起こされている方は非常に多いです。皮膚科の患者数は徐々に暖かくなり始める3月ごろから夏にかけて、冬の時期の約1.2倍にも増えます。気温が高くなるにつれて肌トラブルが増えるということに関係しています。

皮膚科を受診される患者さんの症状で1番多いのは湿疹、2番目はアトピー性皮膚炎、3番目に足白癬(いわゆる水虫)、次に蕁麻疹と続いています。これらは全て気温や湿度に影響を受けやすい疾患と言えるのです。[古江増隆、山崎雙次、神保孝一ほか「本邦における皮膚科受診患者の他施設横断四季別全国調査」日皮会誌:119(9)、1795-1809、2009]

今回はこの時期に特に多い花粉皮膚炎、寒冷蕁麻疹、アトピー性皮膚炎について、お話できればと思います。

■まぶた、頬、首に症状が出ることが多い花粉皮膚炎

1.花粉皮膚炎

スギやヒノキなど春に花粉が飛散すると、くしゃみ、鼻水などの症状のほかに、肌の痒みや赤みに悩まされる人がいます。花粉皮膚炎の患者数は明らかになっていませんが、環境省から公表されている疫学調査の結果によると、花粉症の有病率は2019年時点で全体で42.5%、スギ花粉症で38.8%、そして10年間で10%以上も増加しています。(環境省「花粉症環境保健マニュアル2022 2022年3月改訂版」)

花粉皮膚炎では、花粉が付着しやすいまぶたや頬、首に症状が出ることが多く、かゆくなって赤く腫れ、乾燥が進み、なかには赤いところが盛り上がって発疹のようになる人もいます。症状が長引くと皮膚がごわごわとした厚みになったり、掻いてしまったところが傷となりじくじくしたりすることもあります。

何となくお化粧のノリが悪い、肌が敏感になっているなどと感じる場合には、早めに対策を始めると良いでしょう。治療には花粉症と同じく、慢性の炎症をコントロールすることを目的に連日長期間にわたって服用する抗アレルギー薬や、急性の症状を改善するための抗ヒスタミン薬が用いられますが、1番の基本対策は花粉を避けることです。マスクや眼鏡、ハイネックの服などでしっかりガードしましょう。帰宅後は手洗い、洗顔、できればシャワーを浴びて髪の毛などについた花粉も全て洗い流してしまうのがベストです。

花粉が多い日は、晴れた高温の日、乾燥して風が強い日、雨上がりの翌日と言われています。症状がつらい方は可能であれば在宅勤務へ切り替える等、柔軟な働き方を取り入れるのもおすすめです。花粉症の本格シーズンを前に厚労省や環境省からも呼びかけられています。花粉飛散の多い昼前後や夕方の外出を避けたり、テレワークを活用したりしましょう。

■皮膚温度の変化をきっかけに起こる「寒冷蕁麻疹」

2.寒冷蕁麻疹

寒冷蕁麻疹は皮膚温度の変化がきっかけとなって起こるじんましんで、鳥肌に似た皮膚症状と痒みが特徴です。寒冷蕁麻疹の有病率は全人口の0.05%程度ですが、他の蕁麻疹と合併していることがあり、いくつかの原因を抱えて蕁麻疹に悩まれている方が少なくありません。

寒冷蕁麻疹には、冷たいものに触れたところにだけ症状が出る「局所性」と、冷えによって全身に症状が出る「全身性」の二つのタイプがあります。局所性寒冷蕁麻疹は、水や氷などの冷たい物質に触れた体の一部にのみ円形や地図状の膨疹が現れ、多くの場合痒みや赤みを伴います。一方、全身性寒冷蕁麻疹は、体が冷えることによって全身に症状が出ます。局所性同様、膨疹と赤みを症状として、強い痒みを伴うこともあります。

寒冷蕁麻疹の約95%は局所性と言われています。いずれも刺激を受けた直後から数十分後に蕁麻疹が現れ、数時間から24時間で治ると言われています。しかしながら、掻きむしると蕁麻疹が広がったり、悪化してしまったりすることがありますので症状を早く抑えたいと思うのが心情でしょう。

雪の寒い日
写真=iStock.com/freemixer
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/freemixer

■治療には抗ヒスタミン薬が用いられることが多い

寒冷蕁麻疹の治療には、一般的には抗ヒスタミン薬が用いられます。

複数のエビデンスによって、膨疹、紅斑、痒みを抑制する効果が示されており、1剤で効果が不十分である場合には、ほかの抗ヒスタミン薬に変更または増量してもよいとされています。発症を抑える目的だけではなく、症状が出た時に服用するといった使い方も、有効であると考えられています。(日本皮膚科学会ガイドライン「蕁麻疹診療ガイドライン2018」)

また、抗ヒスタミン薬にもいくつか種類があります。妊娠中でも比較的使用可能なもの、眠気が強く出やすいものや効果が強いもの、1日1回の服用のものもあれば2回のものもあります。自動車運転が制限されているお薬もありますので、医師と相談し、生活や体質にあったお薬を見つけられると良いでしょう。5〜8年程度で自然寛解が期待できる疾患ですが、抗ヒスタミン薬をうまく使って、日常生活に影響が出ないように過ごせるといいですね。

■花粉症とアトピー性皮膚炎を併せて発症する人は多い

3.アトピー性皮膚炎

アトピー性皮膚炎は幼児期から10代に多いと言われる疾患です。40代になると患者数はぐっと減りますので、就労世代ではご自身が罹患(りかん)されている方だけではなく、養育されているお子様がアトピー性皮膚炎に悩まれているという方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。

また、症状が悪化するのは乾燥が強くなる冬だと思われがちですが、花粉症もアトピー性皮膚炎もアレルギーを原因としていますので、2つを併せて発症する方は多く春先に症状が増悪する患者さんも多くいます。症状としては、慢性に痒みと皮膚炎を繰り返す病気で、幼少児期では頸部(けいぶ)や関節部分、成人になると上半身(顔、胸、背中など)に皮疹が多く見られます。重症化してくると夜も眠れないほどの痒みを伴う方もいらっしゃいます。

赤ちゃん
写真=iStock.com/Xesai
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Xesai

■治療の3本柱は「スキンケア」「薬物療法」「悪化要因の対策」

アトピー性皮膚炎の治療の3本柱は「スキンケア」「薬物療法」「悪化要因の対策」です。保湿剤で乾燥を防ぐことやアレルギー反応を起こす悪化因子となる紫外線やホコリ、ダニ、花粉などから皮膚を守るなどの日々の生活の工夫に加えて、状態に合った正しい薬物療法を行うなど、アトピー性皮膚炎の治療は、毎日行う必要があります。また、患者さんの中には、いろいろな医療機関で診療を受けたにもかかわらず、「症状がうまくコントロールできない」「治らない」という経験がある方も多くいらっしゃいます。アトピー性皮膚炎の治療は、本当に難しいのです。

実際、アレルギー疾患の患者及び養育者の就労・就学支援を推進するための研究班が行ったアンケート調査では、アトピー性皮膚炎のために仕事量や内容が制限されることが時々あると答えた割合が34.8%、仕事のために通院が制限された結果症状が悪化することが時々あると答えた割合が27.3%も見られました。また仕事をしている間、アトピー性皮膚炎のせいで生産性が半分以上低下したと感じている人は15.3%でした。

同様に、子のアレルギー疾患の治療のために養育者の仕事の生産性や仕事の内容が制限された、したいと思った仕事が達成できなかったなど、子の治療と養育者の仕事の両立に問題を抱えている方が少なくないことが分かっています。(「アレルギー疾患・関節リウマチに罹患した労働者と患者の養育者に対する治療と就労の両立支援マニュアル」2022年2月改訂)

患者さんが定期的に通院し正しい治療を受けられるために、周囲の理解や支援がとても必要とされています。

■サポートを提供できる職場環境づくりも大切

皮膚症状は時に、容姿にも関わりますし、患者自身の心理的負担が働きづらさに繋がることもあります。働くことに影響が出るような状況の場合には、就労者は労働契約や就業規則の下、働き方を工夫したり、経済面において社会的資源を活用したりできると良いでしょう。

コロナ禍をきっかけに、昨今ではオンライン診療を提供している病院も増えています。皮膚科診療では、肌の異変(症状)を見てどんな病気かを判断することが重要ですが、触診や検査の必要がない、継続したお薬の処方などの場合に活用できると良いでしょう。子育てや仕事が忙しく通院が難しい、出張先で薬がなくなった、そんな就労世代の継続した治療の一助となるはずです。あらかじめ患部の画像を送り診察する仕組みを導入しているケースもあるようです。

生活の質(QOL)の維持・向上に使えるツールをぜひ活用していただきたいと思います。

オンラインで医師と話す男性
写真=iStock.com/evgenyatamanenko
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/evgenyatamanenko

また、支援する側においては、事業者の関係者(事業者、人事労務担当者、上司や同僚、産業保健スタッフなど)や医療機関関係者(主治医、看護師など)、地域の支援機関が必要に応じて連携することが重要です。

労働者の働きやすさは生産性の向上にも繋がります。両立支援のガイドラインや、厚労省のサイトにある「両立支援の取組事例」などの情報を活用して、体の不調によって働きづらさを感じている方々に周囲の理解やサポートを提供できる職場環境づくりができると良いでしょう。

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池井 佑丞(いけい・ゆうすけ)
産業医
プロキックボクサー。リバランス代表。2008年、医師免許取得。内科、訪問診療に従事する傍らプロ格闘家として活動し、医師・プロキックボクサー・トレーナーの3つの立場から「健康」を見つめる。自己の目指すべきものは「病気を治す医療」ではなく、「病気にさせない医療」であると悟り、産業医の道へ進む。労働者の健康管理・企業の健康経営の経験を積み、大手企業の統括産業医のほか数社の産業医を歴任し、現在約1万名の健康を守る。2017年、「日本の不健康者をゼロにしたい」という思いの下、これまで蓄積したノウハウをサービス化し、「全ての企業に健康を提供する」ためリバランスを設立。

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(産業医 池井 佑丞)

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