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一人暮らしなのに飲食代だけで月15万円…年収2000万円の男性が「貯金を切り崩す生活」になった"意外な事情"

プレジデントオンライン / 2024年4月5日 6時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/seven

年収が高いのに貯金ができない人にはどんな事情があるのか。ファイナンシャルプランナーの高山一恵さんは「相談に来た年収2000万円の男性は、子供たちの養育費を毎月約70万円支払っている状況だった。だが、家計が厳しい背景にはそれ以外の要因もあった」という――。

※この連載「高山一恵のお金の細道」では、高山さんの元に寄せられた相談内容を基に、お金との付き合い方をレクチャーしていきます。相談者のプライバシーに考慮して、事実関係の一部を変更しています。あらかじめご了承ください。

■養育費の支払いだけで月約70万円

大手マスコミで働く友人・五十嵐稔さん(43歳/仮名)の結婚式に2回、出席したことのある私。新卒で大手テレビ局に入社し、華やかなキャリアを歩んできた五十嵐さんですが、御本人は控えめな聞き上手といった紳士で、チャラチャラした雰囲気はありません。そんな物腰ゆえか、既婚でも大変、モテる。そしてついに浮気が本気になってしまったようで、この度、2度目の離婚。またシングルに戻った五十嵐さんから、「仕事として相談にのってほしい」と連絡があったのです。

彼は、過去2回の結婚でお子さんを2人ずつ授かっていました。子育てはすべて元妻たちが担っていますが、五十嵐さんには、4人分の養育費が重くのしかかっていたのです。

五十嵐さんの年収は2000万円で、2人の元妻は共に専業主婦だったため、収入はなし。裁判所が公開している養育費の算定表を見ていただくとわかるのですが、夫婦間の収入差が大きければ大きいほど、養育費の負担額は重くなります。4人の子ども全員が14歳以下の五十嵐さんの場合、子ども2人分で月34~36万円。さらにもう2人分を合わせると、養育費の支払いは月約70万円になっていました。

ちなみに、子どもの年齢によって養育費は変動し、第1子、第2子がともに15歳以上になると、月38~40万円になります。また、今後、子どもが私立校への進学や海外留学といった、高額な教育費が見込まれる進路を望んだ場合、相談に応じる必要もあるでしょう。

■養育費未払いを防ぐには「公正証書」の作成がおすすめ

少し話はそれますが、母子家庭の約7割が養育費を支払ってもらえていない現状の中(※)、五十嵐さんの対応はまっとうなものでしょう。養育費未払いといったリスクを回避するには、公正証書(強制執行認諾文言付)の作成がおすすめです。養育費含め、公正証書に記載した約束に反した場合、給料や預貯金といった財産の差し押さえができるのです。

ただし、基本的に公正証書を作成する時や受け取る時には、夫婦そろって公正役場に出向く必要があります。夫婦で行きたくないという場合には、弁護士や司法書士、行政書士などの専門家に代理人を依頼できるか相談してみましょう。

また、意外と知られていないのが、「婚姻費用」。婚姻費用とは、結婚生活を送るとき、日常の生活費、医療費、交際費など必ずかかる生活費のこと。夫婦には婚姻費用を分かち合う義務があり、結婚している限り、その義務は続きます。夫婦関係が悪化し、別居などをしている場合でも義務は発生します。この婚姻費用の金額は、夫婦の年収、子供の人数、年齢などにより家庭裁判所が作成している算定表にもとづき決定されます。婚姻費用の中には、子どもの養育費も含まれます。私のお客さまで別居をしていた方も、離婚届を出すまでの間の生活費を弁護士に頼んでまとめてもらえた方もいますので、これも覚えておくといいでしょう。

※厚生労働省「令和3年度 全国ひとり親世帯等調査の結果を公表します」2022年12月26日

■年収2000万円だけど生活はカツカツ

話を五十嵐さんのケースに戻しますと、彼の年収は2000万円ですが、税金や社会保険料を引いた後の手取りは1300万円ほど。月にならすと約110万円となり、ここから子ども4人分の養育費70万円を差し引くと、手残りは約40万円となります。

「シングルで月40万円あるなら十分じゃない?」と思いますよね。しかし、業界的に非常に付き合いが多く、連日、何らかの会食や飲み会、イベントに顔を出しては情報収集に努めているそうで、「飲食代だけでも月15万円が飛んでいく」と、五十嵐さんは話します。また、タクシー帰りも多いので、都心の一等地にある賃貸マンションを借りていることもあり、住居費は約16万円。

オフィスでパーティー
写真=iStock.com/AzmanL
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/AzmanL

今の彼女との結婚も考えているそうですが、まったく貯金ができておらず、貯蓄を取り崩す状況の中、将来が不安になって私のもとに駆け込んできたのでした。

■副業収入のお金を資産運用に回す

結論から申し上げると、まずは、飲食代などをなんとか月10万円に減らし、月40万円の中で生活できるようにライフスタイルや家計の見直しをしました。実は五十嵐さんには副業収入があり、それまで副業収入もほとんど使っていたのですが、副業収入は資産運用に回しながら、節税対策をしっかり行うことでお金を育てていくご提案をしました。聞き上手で仕事のできる五十嵐さんは、その能力を買われてコンサルティング業務を個人で請け負っており、その収入が月10万円ほどあったのです。

そんな高い能力をもつ一方、お金に対する勉強はいまいち。これまで医療費控除や生命保険料控除を申請したこともなく、「節税」という概念がまったくありませんでした。しかし、これは五十嵐さんに限ったことではなく、忙しい高給取りほど、内実は自転車操業のようになっていることは少なくありません。毎日、高級スーパーで惣菜を買うお金はあれど、将来の基盤となるような資産がないのです。

特に、大企業の会社員であれば、高待遇の金利で住宅ローンを組めるといった恩恵と毎月の安定的な収入によって、将来のお金に対する思考がストップしてしまうのかもしれません。そのため、副業の収入はiDeCoやNISAで資産運用をしながら、会社員でもできる節税を心がけてもらうことにしました。

■元妻2人は結婚を機に専業主婦になっていた

加えて、余計なお世話かもしれませんが、3回目の結婚の際には、パートナーの方は専業主婦ではなく、働きに出てもらうほうがリスクヘッジになる、という話もさせてもらいました。彼の元妻2人は、結婚前までお勤めをされていて、結婚後も働きたかったそうなのですが、聞けば、五十嵐さんが専業主婦になることをすすめたそうなのです。「どうして妻に家に入ってほしいの?」とたずねると、「実家もそうだったし……忙しいから、精神的な拠り所が欲しくて」と、もごもご。なんでも、仕事ではずっと相手の話を聞いているので、せめて家に帰ってからは、自分の話をじっくり聞いてくれる人がいいんだとか……。

「彼氏彼女」や事実婚でなく法的な婚姻関係にこだわり、相手を専業主婦に転身させるのは、妻を自分の所有物のようにしたいからではないかと、邪推してしまう私がいました(もちろん、結婚したからといって、妻は夫のものではないのですが)。

キッチンで料理をしている女性
写真=iStock.com/lielos
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/lielos

■夫婦が互いに自立していることはリスクヘッジになる

また、「クリエイティブであるためには付き合いをしないと」ということも再三、口にしていたのですが、仕事を言い訳にして、節約や家庭での役割を放棄してきた面もある気がしています。五十嵐さんが毎日パリッとアイロンがけされたシャツで出勤できていたのも、子どもがすくすくと健康に育ってきたのも、妻や周りの人のケアがあったからでしょう。物腰が柔らかく、女性を尊重しているように見えながらも、結局のところ、どこかで自分が妻を養っているという感覚があったのかもしれません。

3度目の結婚をするかどうかわかりませんが、結婚において、互いに経済的・精神的に自立をしていることが最良のリスクヘッジであることをファイナンシャルプランナーとしてお伝えしつつ、五十嵐さんには、相手の生き方を尊重することも大事にしてほしいと、僭越ながら、感じた次第です。

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高山 一恵(たかやま・かずえ)
Money&You 取締役/ファイナンシャルプランナー(CFPR)、1級FP技能士
慶應義塾大学卒業。2005年に女性向けFPオフィス、エフピーウーマンを設立。10年間取締役を務めたのち、現職へ。全国で講演・執筆活動・相談業務を行い女性の人生に不可欠なお金の知識を伝えている。著書は『はじめてのNISA&iDeCo』(成美堂出版)、『やってみたらこんなにおトク! 税制優遇のおいしいいただき方』(きんざい)など多数。FP Cafe運営者。

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(Money&You 取締役/ファイナンシャルプランナー(CFPR)、1級FP技能士 高山 一恵 構成=小泉なつみ)

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