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お金でも健康でも地位でも名誉でもない…ハーバード大学84年の史上最長の研究が証明「幸せの絶対条件」

プレジデントオンライン / 2024年5月2日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/shironosov

人生で最も大切なことは何か。昭和女子大学総長の坂東眞理子さんは「ハーバード大学の84年にわたる史上最長の研究『成人発達研究』は、幸せな人生を送るのに必要な『条件』として『家族や友人などとの人間関係が一番大きな要因』としている。私たちは人間関係に恵まれるのは運次第と考える傾向があるが、この調査からわかるのは、よい人間関係を手に入れるには利他的な行動が必要で、そのための努力に時間とエネルギーを投資しなければならないということだ」という――。

※本稿は、坂東眞理子『与える人 「小さな利他」で幸福の種をまく』(三笠書房)の一部を再編集したものです。

■ハーバード大が導き出した幸せな人生を送る「絶対条件」

幸せな人生を送るのに必要な「条件」はなんでしょうか?

健康、所得や資産、社会的地位や名誉、ビジネスでの成功などいくつかの要因が挙げられますが、「家族や友人などとの人間関係が一番大きな要因」だと、ハーバード大学の84年にわたる史上最長の研究「成人発達研究」が導き出しています(『グッド・ライフ-幸せになるのに、遅すぎることはない』ロバート・ウォールディンガー/マーク・シュルツ/児島修訳/辰巳出版)。

これは、1938年ごろからハーバード大学の2年生268人とボストンの都心部の地区に住む456人の少年を対象にした調査研究です。

当初は調査対象者が白人男性ばかりだったので、途中から女子大の卒業生が加えられるなど一部変更されたりしましたが、基本的にこの調査は現在も継続されています。最初の対象者はいま70代から80代になっています。

被験者は最初に全員、対面調査を受け、家庭を訪問しての両親の対面調査と健康診断も行なわれました。2年ごとに調査票が送られるほか、約15年ごとに対面調査が実施されるという長期間の調査です。

■「人間関係に恵まれるのは運しだい」は大間違い

やがて少年たちは大人になり、多様な職業に就き、結婚して家族をもったあとも調査は続けられました(離婚したり、独身を続けたりする人もいます)。84%の被験者が調査を継続しているというのは驚異的です。

配偶者や子どもたちも同意を得て調査対象者に加えられましたが、その割合も67%、こちらも驚異的な高さです。きっと調査が彼らの人生を振り返る機会になっているからでしょう。

被験者のなかには社会的に成功した人も、しなかった人もいます。経済的に恵まれた人も恵まれなかった人もいます。

しかし彼らのほとんどは70代、80代になった現在、「人生でもっとも大切なのは家族と友人との人間関係だ」と繰り返し述べていました。

私たちはとかく、人間関係に恵まれるかどうかは相手しだい、どんな相手に出会うかは運しだい、相手しだいと考えがちで、仕事や経済的成功のように、自分が努力して手に入れるべきものだと考えていない傾向があります。

しかし、この調査からわかるのは、よい人間関係を手に入れるには利他的行動が必要で、そのための努力に時間とエネルギーを投資しなければならないということです。

■山あり谷ありを乗り越えたカップルが一番幸せ

これはハーバードの調査研究に限らず多くの人が実感しています。よい人間関係を手に入れるには「自分がしてもらいたいことを相手にする」というのが鉄則です。

相手の自分に対する関わり方は変えられませんが、自分が相手にどう関わるかは自分の意思です。よい人間関係という無形財産を形づくるには、自分からの働きかけが必要です。

たとえば、出会ったときに温かい笑顔で接する、無視したりバカにしたりしたような態度を取らずに丁寧な対応をする。ご無沙汰している知人や親類に電話をかけたり手紙やメールを出す、さりげない贈り物をする、手伝いを頼まれたら快く引き受ける……。

そんな小さな「与える」積み重ねが、よい人間関係をつくります。逆に、どんなにすばらしい人と出会っていたとしても、出会っただけでこちらが働きかけず、何も与えず、好意も見せなければ、相互の人間関係には発展しません。

このハーバード大学の研究調査では、配偶者と信頼関係を築いている被験者は、幸せに過ごしています。

夫婦の信頼関係は自然に得られるものではなく、ともに生活しながら、二人でつくり上げるものです。

多くの夫婦は長い間に、山あり谷ありのいろいろな状況に直面します。厳しい状況のなかで破綻する関係もありますが、相手を支え、協力して苦難を乗り越える過程で、お互いへの信頼関係を育てたカップルもいて、その人たちが一番幸福です。

腕でハートマークを表現するシニア夫婦
写真=iStock.com/ArNek2529
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/ArNek2529

■夏休みに一人ひとりの子どもと個別にキャンプ

たとえば被験者のうち一番幸せな一人とされていた男性は、貧しい家庭の出身ですが努力して大学を卒業したあと、企業に就職し、結婚しました。

しかし、子どもが小児まひにかかり、その看護に時間を取られるので解雇され、失業、転職を経験します。

でもその苦しい期間も、夫婦は助け合い、夫が失業したときには妻が就職して家計を支えました。そうした、苦労をともに乗り越えた経験が、二人の信頼関係を培ったので、高齢になったいまもお互いがかけがえのない相手となっています。

坂東眞理子『与える人 「小さな利他」で幸福の種をまく』(三笠書房)
坂東眞理子『与える人 「小さな利他」で幸福の種をまく』(三笠書房)

別の幸せな対象者は、ハーバード大学出身でしたが、母を支えるため地元で高校教師になり、多くの教え子から慕われる教師になりました。

彼はつましい生活のなかで五人の子どもを育てました。子どもたちとともに過ごす時間を充実させるため、夏休みに一人ひとりの子どもと個別にキャンプをするなどの努力が実り、成長した子との関係は信頼と愛情で満たされています。

経済的には、ビジネスパーソンや弁護士になったハーバード大学の同級生より恵まれませんでしたが、彼は温かい家族と友人に恵まれ、人生の「成功者」とされています。

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坂東 眞理子(ばんどう・まりこ)
昭和女子大学総長
1946年、富山県生まれ。東京大学卒業後、総理府(現内閣府)に入省。内閣総理大臣官房男女共同参画室長。埼玉県副知事。在オーストラリア連邦ブリスベン日本国総領事。2001年、内閣府初代男女共同参画局長を務め、2003年に退官。2004年、昭和女子大学教授、同大学女性文化研究所長。2007年に同大学学長、2014年理事長、2016年総長。2023年に理事長退任。著書に300万部を超えるベストセラーの『女性の品格』(PHP研究所)のほか『70歳のたしなみ』(小学館)など多数。

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(昭和女子大学総長 坂東 眞理子)

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