カンボジアで未登録の“孤児院”が全体の38%に【報道参考資料】
PR TIMES / 2017年5月2日 15時12分
政府、報告書と行動計画を発表
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【2017年5月2日 東京/プノンペン(カンボジア)発】
ユニセフ(国連児童基金)・カンボジア事務所とカンボジアの社会問題・退役軍人・青少年更正省(MoSVY)は4月20日、”孤児院”等の子どもを養護する滞在型施設の調査報告書、及び、子どものケア向上のための行動計画に関する共同プレスリリースを発表しました。
ユニセフなどの協力の下、カンボジア政府が本調査を実施した背景には、施設で暮らす子どもたちの数が、政府の政策に反して、急激に増加していたことがあります。また、2015年時点でMoSVYに正式登録されていた児童養護施設の数は254施設でしたが、実際に運営されている施設はもっと多いのではないかと推測されていました。
そこで、カンボジアにおける子どもの施設養護の普及の現状を把握するために行われたこのマッピング調査では、国内で運営されている施設に対して、MoSVYの職員が実際に1件1件訪問する手法でおこなわれました。
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調査の結果、これまで政府がデータとして持っていた254施設をはるかに上回る、406施設の児童養護施設が存在することが確認されました。これらの施設で暮らす子どもたちの数もまた同様に、これまで登録されていた1万1,171人に対し、実際には1万6,579人に上ることが明らかとなりました。2015年の人口統計に基づくと、カンボジアの子ども350人に1人が、児童養護施設で暮らしていることになります。
これまでMoSVYに登録されていなかった児童養護施設は、政府による検査を過去に一度も受けたことがありませんでした。「子どもを養護する滞在型施設の多くが、政府の規制枠組みの外にあるという調査結果は、こうした施設で暮らす子どもたちが置かれている状況に、重大な懸念を示すものです」とカンボジア社会問題・退役軍人・青少年更正省のヴォン・ソート大臣は述べています。
報告書ではまた、施設養護が普及している背景には、海外からの援助も一因としてあることを指摘しています。施設の中には政府が運営している施設もありますが、大半の施設は、民間あるいは宗教を基盤とした非政府組織によって運営されており、そのほぼ全てが、海外の個人ドナーから資金を得ているといいます。その結果、そうした施設の多くが、よりたくさんのドナーを魅了するための「孤児院ツーリズム」を実施しているとみられています。家庭やコミュニティを基盤とした代替的養護の選択を知らない、海外のドナーによる”孤児院”への善意の援助や資金提供が、結果的に、多くの子どもたちが家庭的養護を得る機会を失いリスクに晒される後押しをしている、と報告書は指摘します。
カンボジア政府の政策には、家庭あるいはコミュニティを基盤にしたケアが、子どもの代替的養護における最善策であること、施設養護は最終手段であるとともに一時的な保護対策であること、そして、子どもたちの保護とケアを主体的に担うのは家族であると明記されています。したがって、施設で暮らす子どもたちの数が急増していることは、政府の政策とは反しているのです。
報告書ではこれらの他にも、施設養護が普及している背景や、今回のマッピング調査で得られたデータがまとめられています。下記はその一部です。
子どもたちを施設に長期間滞在させることは問題であると広く認識されているにもかかわらず、72%の児童養護施設は、長期的なケアと定義される6カ月を超えて、子どもたちを滞在させている。
何十年にもわたって世界的に行われてきた科学的な研究によれば、子どもたちが親元を離れて養護施設で暮らすことは、子どもたちの社会的、身体的、知的、情緒的発達を低下させ、成人後も長期的に影響を及ぼす可能性があるとされている。
カンボジア国内の児童養護施設の83%、および施設に暮らす子どもたちの87%が、首都および全国24州のうち、首都と8の州に集中している。中でも、首都プノンペンと観光で賑わうシェムリアップの2州にある施設数の合計は、全施設数の約半数を占める。
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社会問題・退役軍人・青少年更正省のヴォン・ソート大臣は、本調査結果を踏まえ、「MoSVYは今後すべての施設に対して、毎年、定期的な視察をおこなうとともに、安全に家庭やコミュニティを基盤としたケアに安全に移せる子どもは、そういった家庭的なケアへ戻すことを目指していきます」と述べています。
また、カンボジアの子どものケア向上のために政府が策定した行動計画では、子どもが家族と一緒に暮らすことを促進し、子どもを施設から家族の元に戻し、施設に代わる支援を提供することによって、子どものケアを改善することを目指しています。本計画では特に、首都プノンペンと4州(バッタンバン、カンダール、シアヌークビル、シェムリアップ)の児童養護施設で暮らす子どもの30%にあたる、約3,500人の子どもたちを、2018年末までに家族やコミュニティを基盤としたケア体制の下に戻すことを目標としています。また、行動計画の実施に関しては、「『子どもの最善の利益』の追求、『do no harm(危害を与えない)』『公平性』という原則も、確実に守られる」とソート大臣は述べています。
ユニセフ・カンボジア事務所のデボラ・コミニ代表は、次のように述べています。
「私たちは、児童養護施設で暮らす子どもたちを、施設から退所させて、家庭やコミュニティを基盤としたケアに戻すことは、カンボジアにおける子どものケア支援制度をより広く、長期的かつ持続可能なものに改善するための、構造改革の一環と考えています。この行動計画は、その目的を達成するための道標となります。
私たちは、開発パートナーや支援くださる方々に対して、こうした養護施設で暮らしている子どもたちのために、家族やコミュニティを基盤としたケアの促進を、支持してくださるよう求めます。また同時に、この行動計画の実施に関わるすべての人々に対し、すべての子どものために「do no harm(危害を与えない)」という原則に従うよう求めます」
* * *
■本信はユニセフ・カンボジア事務所が発信した情報をもとに、日本ユニセフ協会が編集・翻訳したものです。
■ユニセフ・カンボジア事務所と、カンボジアの社会問題・退役軍人・青少年更正省(MoSVY)が発表した共同プレスリリース、及び、調査報告書と行動計画(英語・クメール語)は、下記サイトをご覧ください。
https://www.unicef.org/cambodia/results_for_children_26320.html
* * *
■ユニセフについて
ユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)は、すべての子どもの権利と健やかな成長を促進するために活動する国連機関です。現在190の国と地域※で、多くのパートナーと協力し、その理念を様々な形で具体的な行動に移しています。特に、最も困難な立場にある子どもたちへの支援に重点を置きながら、世界中のあらゆる場所で、すべての子どもたちのために活動しています。(www.unicef.org)
※ユニセフ国内委員会(ユニセフ協会)が活動する34の国と地域を含みます
※ユニセフの活動資金は、すべて個人や企業・団体からの募金や各国政府からの任意拠出金で支えられています
■日本ユニセフ協会について
公益財団法人 日本ユニセフ協会は、先進工業国34の国と地域にあるユニセフ国内委員会のひとつで、日本国内において民間として唯一ユニセフを代表する組織として、ユニセフ活動の広報、募金活動、政策提言(アドボカシー)を担っています。 (www.unicef.or.jp)
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