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世界一タメにならない!? 「NBA JAPAN GAMES 2019」観戦ガイド【大柴壮平コラム vol.1】

NBA Rakuten / 2019年10月5日 9時0分



 


16年前のジャパンゲームズの会場に、私はいた。

大学生だった私は、前日に友人宅で深酒しながら、『ウイニング・イレブン』を夜通しやっていたので、かなり意識が朦朧としていたのを覚えている。そんなビッグイベントの前日ぐらい寝たらよかろうに、と今なら思う。当時は若気の至りというより、どちらかと言えば無関心ゆえの行動だった。NBA好きの友人に誘われてつい「行く」と返事したものの、実はロサンゼルス・クリッパーズにもシアトルスーパーソニックスにも、さして興味が無かったのである。

実際、当時のクリッパーズとソニックスは金を取れるような球団ではなかった。クリッパーズは「有望な若手の宝庫」という触れ込みだったが、ラマー・オドム、アンドレ・ミラー、マイケル・オロワキャンディといったスター候補生たちが、直前のオフにチームを去っていた。ソニックスも日本に来る前のシーズン途中に、長年チームの顔だったゲイリー・ペイトンを放出していた。その上クリッパーズのエース、エルトン・ブランドは怪我で欠場だった。ソニックスのエース、レイ・アレンにいたっては、怪我で来日さえしなかった。

そんな地味な球団対決となったジャパンゲームズだが、少なくとも私の行った2日目は盛り上がっていた。ラシャード・ルイス(当時ソニックス)がジャパンゲームズ史上最多の50得点を記録したことで有名な試合である。ルイスは「デカいのに外のシュートが上手いなあ」というぐらいの感想だったが、デカくて外のシュートが上手い選手がその後トレンドになるとは、当時の私は知る由も無かった。それよりも巧みなアシストを連発するルーキーのルーク・リドナーに、私は目を奪われていた。こいつはすごい選手が現れたかもしれないなどと思っていたが、ちっともそんなことはなかった。その後すごくなったのはルイスの方だった。


巧みなアシストを連発するルーク・リドナーに、目を奪われていた


カワイがゴルゴ13なら、シアカムは桜木花道


コンディション不良のまま観た地味球団対決も結局楽しめたが、今年のジャパンゲームズは16年前とは比べ物にならない好カードである。

トロント・ラプターズは、言わずと知れた昨シーズンの王者だ。元々東の強豪だったが、長年チームに貢献したデマー・デローザンと引き換えにファイナルMVP経験者のカワイ・レナードを獲得。1年しか契約の残っていないカワイの獲得はギャンブルと言われたが、見事その賭けに勝って優勝した。普通ならラプターズと再契約するのが人情だが、その後カワイはロサンゼルスへと去っていった。奇人変人と言われるカワイだが、見ようによってはゴルゴ13やブラック・ジャックといったダークヒーローの類にも見える。

そんなカワイの去ったラプターズの主役は、パスカル・シアカムだ。カワイがゴルゴ13ならシアカムは桜木花道だろう。花道との共通点は多々ある。2人ともパワーフォワードで、身体能力の高さが売り。そして、どちらもバスケットボールを始めたのが遅い。花道は15歳で始めているが、シアカムはさらに遅い17歳だ。そこからたった8年でNBA王者のスターターまで上り詰めたのだ。その成長力も、高校入学からインターハイの間にとんでもない進化を遂げた花道を彷彿とさせる。

1話で仕事を完結させるゴルゴ13と違い、花道はインターハイの途中で負傷、湘北高校も全国ベスト16に終わった。今シーズンのラプターズではリアル花道、シアカムを中心とした物語が始まる。いきなり優勝は厳しいだろうが、山王戦勝利のような見せ場を作るかもしれない。


ハーデンとウェストブルック、2人の物語はクライマックスへ


一方のヒューストン・ロケッツは、ポイント・ゴッドことクリス・ポールを放出し、トリプルダブル製造機ラッセル・ウェストブルックを加えた。一見ロケッツも新章をスタートしたように見えるが、私はそうは見ない。ジェームズ・ハーデンとラッセル・ウェストブルック――、2人の天才を主人公にした物語が、ロケッツを舞台に今クライマックスを迎えようとしているのだ。

ハーデンとウェストブルックは、10歳の頃からの友人である。ローカルのスポーツプログラムで知り合った2人は有望選手に成長。高校、大学は別の進路を選んだが、互いに成功を収めた。そして、2008年のドラフトでウェストブルック、2009年にハーデンがオクラホマシティ・サンダーに指名され、世界最高峰のNBAという舞台で再びチームメイトとなった。この時点ですでに出来すぎた物語だが、ここからがすごい。ハーデンが加入した初年度の2010年にサンダーは初のプレーオフ出場を達成。翌2011年にはカンファレンス・ファイナル、さらに2012年にはファイナルまでたどり着いた。優勝まであと一歩に迫った2人だったが、2012年のオフにハーデンがヒューストン・ロケッツへ放出されてしまう。ハーデンとウェストブルックの他にもケビン・デュラントやサージ・イバカといった若い才能を抱えていたサンダーは、サラリーの都合上誰かを切る必要があったのである。

今度は西の覇権を争うライバルとなったハーデンとウェストブルックだったが、それぞれチームの期待通りの活躍を見せた。さらに2人は得点王、アシスト王、オールスター、ファーストチーム、そしてMVPと、個人としての栄誉を欲しいままに手に入れた。しかし、優勝だけは遠かった。ハーデンはドワイト・ハワードやクリス・ポールと組んだものの、結果を残せなかった。ウェストブルックもケビン・デュラント、そしてポール・ジョージと共闘したが、優勝どころかファイナルすら遠ざかっていった。そんな歴史を経て、この夏ウェストブルックの移籍によって2人はロケッツで再会したのである。

2人を漫画に例えるなら、野球漫画の『MAJOR』だ。意外と冷静なハーデンが寿也、突貫小僧のウエストブルックが吾郎といったところか。『MAJOR』では幼少期からの友人でありライバルだった2人が、チームメイトとしてワールドシリーズを制覇した。はたして、ハーデンとウェストブロックはファイナル制覇を果たし、バスケ版『MAJOR』を完結できるだろうか。

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戦術分析やらデータ解析が進む現代では、スポーツにロマンの入り込む余地が少なくなった。ダブルチームを引きつけていたカワイがいなくなったのだから、シアカムはプルアップでもスリーを何パーセント以上入れなくてはダメだ。ハーデンとウェストブルックは共に長時間ボールを持ちたがるプレイヤーだから併用は難しい。そういう意見も、もちろん興味深い。しかし、せっかく16年ぶりにNBAが日本にやってくるのだ。しかも今年来日するのは、現実世界で漫画のような活躍をする超人たちである。ここはひとつ頭を空っぽにして、漫画に熱中しているときのような童心で観戦してみるというのはいかがだろうか。


大柴壮平:ロングインタビュー中心のバスケ本シリーズ『ダブドリ』の編集長。『ダブドリ』にアリーナ周りのディープスポットを探すコラム『ダブドリ探検隊』を連載する他、『スポーツナビ』や『FLY MAGAZINE』でも執筆している。YouTube『Basketball Diner』、ポッドキャスト『Mark Tonight NTR』に出演中。Twitter:@SOHEIOSHIBA




(C)2019 NBA Entertainment/Getty Images. All Rights Reserved.



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