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中島みゆきのセレクションアルバムが持つ意味、瀬尾一三と探る

Rolling Stone Japan / 2021年1月22日 11時30分

中島みゆき

日本の音楽の礎となったアーティストに毎月1組ずつスポットを当て、本人や当時の関係者から深く掘り下げた話を引き出していく。2021年1月の特集は、中島みゆき2021。2020年12月に発売になったセレクションアルバム『ここにいるよ』を全曲紹介。第3週目は本アルバムのDisc2寄り添い盤を、1988年以来、中島みゆきのプロデューサー、アレンジャー、音楽監督を務める瀬尾一三をゲストにお送りする。

アザミ嬢のララバイ / 中島みゆき

田家秀樹(以下、田家):こんばんは。FM COCOLO「J-POP LEGEND FORUM」案内人、田家秀樹です。今流れているのは、中島みゆきさんの「アザミ嬢のララバイ」。昨年12月に発売になったセレクションアルバム『ここにいるよ』のDisc2の1曲目です。今週と来週の前テーマはこの曲です。

田家:今月、2021年1月の特集は中島みゆき。去年の12月には、セレクションアルバム『ここにいるよ』が発売になりました。2021年最初の特集はこの2枚組セレクションアルバムの全曲紹介です。今週も、ゲストに1988年以来のパートナー、プロデューサー、アレンジャー、音楽監督の瀬尾一三さんをゲストにお迎えしております。よろしくお願いいたします。

関連記事:中島みゆき、2021年に聴くべきセレクションアルバム 瀬尾一三とともに振り返る

瀬尾一三(以下、瀬尾):よろしくお願いします。

田家:3週目になりました。今回の『ここにいるよ』はエール盤と寄り添い盤に分かれておりまして、今週と来週は寄り添い盤の全曲の話を伺っていこうと思うのですが、この寄り添うという言葉の距離感。瀬尾さんはミュージシャンに寄り添われている方だと思いますが、ご自分が日常の中で音楽に寄り添ったり、寄り添われたりということはあるものですか?

瀬尾:リスナーの皆さんからよく音楽に救われたという話は聞きますが、僕にとってはビジネスなんです。リスナーさんのように精神的に救われるような機会があまりないというか。この仕事に就く前は、色々な曲を聴いて気持ちがいいと思いましたが、この仕事を始めてからは寄り添ったり、寄り添われたりということはないですね。ひいて言えば、全部寄り添ってますよ。

田家:なるほど。それでは寄り添い盤の1曲目から聴いていきましょう。「アザミ嬢のララバイ」。1975年9月になったデビュー曲です。この曲がセレクションアルバムに収録されて、改めて思われることはどういうことでしょう。

瀬尾:皆さんご存知のように、僕はこの頃中島さんと接点がなくて。もちろんこの曲を知っていましたけど、僕は彼女より5、6年くらい早くこの業界に入っているので、新人の歌手が出てきたなあというくらいの感じでしたね。

田家:でもこういう風に色々な曲と一緒に収録されると、この曲で始まったんだなということや、やっぱりそうだったのかと思うこともありますよね。

瀬尾:そうですね。初期からファンの方にとっては外せないデビュー曲なので、この曲は欠かせなかったですね。

田家:去年のラストツアーの中でもこの曲が披露されていました。それはやはりラストツアーだからという。

瀬尾:そうですね。ツアーとして最後に全国を回るので、デビューからの曲も入れたいということで。彼女からは口酸っぱく「原曲と同じイントロ、同じアレンジにして」と、言われました。音質も楽器の音も全部似せて、変えてはダメです、と(笑)。なので丸々コピーしました。

田家:でも楽器の音も機材も変わっているでしょう?

瀬尾:そうですね。でもキーボードやシンセサイザーの人にも、この原曲の音色を似させるようにして。フレーズも全く変えないで、と言われたので頑張りました。

田家:こうやって寄り添い盤の1曲目に入っていると、中島さんは最初から”寄り添い姫”だったんじゃないかと思いました。

瀬尾:中島さんは色々な面を持っているので、優しく側にいてくれるような歌も書くと思えば、どん底に突き落とすような曲も書く両極端な人なんです(笑)。でも突き落とすような曲でも、芯の部分はとても温かい人なんです。最終的に彼女は救いの手を伸ばしている人で、この曲は本当に菩薩のような中島みゆきさんですね。

田家:ずっと寄り添ってくれる曲が収録されています。お聴きいただいたのは、昨年12月に発売になったセレクションアルバム『ここにいるよ』のDisc2寄り添い盤の1曲目「アザミ嬢のララバイ」でした。

泣きたい夜に / 中島みゆき

田家:続いて、Disc2寄り添い盤の2曲目「泣きたい夜に」。1980年4月発売のアルバム『生きていてもいいですか』に収録されていました。これはアレンジが後藤次利さんです。あのアルバムは発売から40年以上経つわけですね。

瀬尾:いつまでやっていくんだろうと思うくらいやってますね(笑)。

田家:今回改めて思ったのですが、みゆきさんには何周年記念盤のような企画はなかったですね。

瀬尾:アニバーサリーが嫌いみたいです。何周年と銘を打って出すのがあまり好きじゃないみたいで。

田家:時間に縛られたり区切られたくないと。

瀬尾:自分たちでそれをやってしまうと、曲や作品が書き止まっちゃう感じがあって。僕が彼女と仕事をするようになって常に考えているのが、彼女の曲をスタンダードにしたいということで。何周年記念として企画を立てて、そこに曲をあてはめるというのは僕の考えにはなくて、中島みゆきを時空も時代も超えていつでも聴いてほしいという想いで作っています。

田家:音楽は時間で区切るよりも、それを解き放つべきものですよね。この「泣きたい夜に」は、1989年に始まった一回目の「夜会」の一曲目でした。こう振り返ってみると、夜会というのは”寄り添いの夜”だったという言い方もできるんでしょうね。

瀬尾:そうですね。一回目の1曲目なのでよく覚えてます。やはり、お客さんが座っている劇場の椅子と同じものが舞台上に乗っていて。彼女の設定としては、上映している映画館に一人でポツンと入っている女性で、そして、また離れた席に一人で座っている女性がいて。その彼女の心情を歌っているというものです。

田家:先ほど「アザミ嬢のララバイ」では、全く原曲と同じようにしてというオファーがあったというのはありましたが、この「泣きたい夜に」を一回目の夜会の一曲目にする時も、みゆきさんのオファーがあったんですか。

瀬尾:僕は原曲の持ち味のアレンジがうまく生かされているものについては変えるつもりがないので、同じにします。

田家:やっぱり自分がアレンジするということがありながら、前のアレンジャーの方が作ったものもフラットにご覧になっているんですね。

瀬尾:そうかもしれませんけど、僕が関与する前に中島さんに曲をアレンジした方のことを尊敬しているので。それはオリジナリティでもありますので、コンサートなどでは極力いじらないようにしています。雰囲気を変えてみたいなという時は、本人の了承を得て変えたりしますけどね。

田家:こういうのをクリエイターシップというんだと思います。「アザミ嬢のララバイ」は、私を訪ねておいで。「泣きたい夜に」は私のそばにおいで、という歌詞で始まります。この「泣きたい夜に」はオリジナルアルバム『生きていてもいいですか』では、「うらみ・ます」の次の曲だったんですね。

瀬尾:もうあの人は怖いですね(笑)。

田家:でも、中島みゆきさんという人に対して「うらみ・ます」で語る人はもういないですよね。時間が経つのは素晴らしいことだなと思いますよ。

瀬尾:そうですね。よほどあの曲の印象が強かったのかもしれませんけど。中島さんのコンサートは蝋燭を立ててやるという都市伝説もありましたね(笑)。

田家:インパクトがあったということでしょうね。中島さんが夜会を始めるときに「曲を解放する」と仰っていましたが、例えばこの「泣きたい夜に」を「うらみ・ます」の次の曲だという風に聴かれないようにするということもあったんでしょね。

瀬尾:そもそも夜会の始まりのきっかけが、アルバムの中の順番にある一曲一曲の力を解放してあげたいということで。アルバムの中の曲じゃなくて、縛りのようなものから脱却させて一つの作品としての可能性を解放させたいという気持ちなんですね。

田家:このセレクションアルバムはそういうアルバムでもあります。Disc2寄り添い盤の2曲目「泣きたい夜に」でした。

愛だけを残せ (remix) / 中島みゆき

田家:続いて、Disc2寄り添い盤3曲目「愛だけを残せ (remix) 」。2009年のシングルでした。アルバムは2010年『真夜中の動物園』。シングルとアルバムではガラッとバージョンが変わっておりました。そして、今流れているのはコレクションアルバム『十二単〜Singles 4〜』のバージョンです。シングルとアルバムのアレンジをこんな風に変えることは何度かありましたね。

瀬尾:そうですね。シングルをそのままアルバムに入れるというのが一番親切な方法だと思うんですけど、時々私の中でいたずら心が起き上がった時に、もう一つのパターンで何かできないかなと思ったりもして。それで違うバージョンを作ったりしますね。

田家:それはいたずら心というよりも、想像をかき立てるものがあると。

瀬尾:もう一つの側面からアプローチしたら、また違った印象になるんじゃないかなと思うこともあったりするので。

田家:この曲は愛だけを残せという言葉が強い曲です。そこの強さをどこまで出すかということは考えられているんでしょうね。

瀬尾:シングルの方は全面的に彼女が宣言している感じでした。それを和らげたらどうなるかな? 後ろのカラオケの音も柔らかくしたら、また聴こえ方が違うのかなと思って。特に、これは映画の主題歌として作ったものなので、映画のニュアンスを残したままアルバムに入れると少し違う感じがしたんです。それでシングル盤とは少し変えました。

田家:松本清張生誕100年ドラマ『ゼロの焦点』。そういうミステリアスのドラマだと、強いものがないと残らないということなんでしょうね。「アザミ嬢のララバイ」は、私を訪ねておいで。「泣きたい夜に」は私のそばにおいで。そして、3曲目に「愛だけを残せ」と。泣いているだけじゃダメなんだよと言っているのかもしれませんね。これはまたしても下世話な比較なんですが、松任谷由実さんが最新アルバム『深海の街』をお出しになった時のキャッチフレーズが「人間は愛しか残せない」だったんです。みゆきさんは、ずいぶん昔から「愛だけを残せ」と歌ってきたわけですが、2020年は私たちに何が残せるだろうかと皆が考える年だったと思ったりしたんですよ。

瀬尾:ユーミンらしいじゃないですか、中島さんだったらちょっと恥ずかしいけど。もし中島さんが、人間は愛しか残せないという歌詞を書いたとしたら……。うーん、僕は残せの方が好きです(笑)。でも、「人間は愛しか残せない」という感じはユーミンにすごく合っていますね。

田家:そこは分かりやすい違いですね。

瀬尾:これから先に、今度はみゆきさんが「愛しか残せない」と歌ったら僕は何も言えないですけどね(笑)。

田家:みゆきさんはそう言わないでしょうね(笑)。

悪女 / 中島みゆき

田家:続いて4曲目「悪女」。1981年11月に発売になったシングルで、『わかれうた』に続いてチャート一位獲得の二作目でした。アルバムは1982年の『寒水魚』の1曲目です。今までの瀬尾さんのお話の中で、この頃はまだ僕は担当していなかったという話が何度か出てますが、このアルバムは中島さんのファンの中でも1、2を争うアルバムでしょう。

瀬尾:そうですね。でも、その頃はその程度の関心でしかなかったんです、すみません(笑)。

田家:この「悪女」はファンの中でも解釈が色々ありまして、これが楽しいんです。歌詞に出てくるマリコとはどんな人か? つまり、マリコさんというのは相手の男が隠しているあの子なのか? 違うかなと思うんですが(笑)。

瀬尾:なるほど。中島さんは複雑なものが好きなので。

田家:なんで男と遊んでいる芝居の電話をかけるのか? なんで女のつけないコロンをわざわざつけて帰るのか? 新しい恋人に自分への愛想をつかせるため?

瀬尾:そんなの簡単じゃないですか。あなたは浮気してるけど、私だってできるわよという意思表示で強がり方でしょうね。それでほとんど失敗するんですけどね(笑)。

田家:それで敢えて相手に別れさせるという気遣いもある。

瀬尾:気遣いというか、自分が傷つきたくないという一つの鎧ですよね。本当は行かないでと言いたいんですけど、この辺の二重、三重のパラドックスが中島さんは本当に得意ですよね。もっと素直になれよと言いたいくらいですね(笑)。

田家:マリコというのは二人の共通の知り合いの女性で、マリコに私も新しい男がいるのよと示すために、男物のコロンをつけて帰ったりするという。

瀬尾:マリコさんから彼に情報がいくようにしているんでしょう。こんがらがってるなあ(笑)。

田家:当時は本当に色々と議論がありましたね。

瀬尾:これで議論するのも平和で楽しいことですね。皆さんなら誰になりたいのかな? マリコになりたいのか、この本人になりたいのか、男の浮気相手になりたいのか、皆さん選んでください(笑)。

田家:それぞれの主人公を思いながらお聴きください。この「悪女」で瀬尾さんにお訊きしたいことがありまして。吉田拓郎さんが、「悪女」のバックでギターを弾きたいとずっと言っていましてね。

瀬尾:言ってましたね。会う度に僕に「中島の後ろで悪女のギター弾きたいんだよね。俺絶対うまいよ」とプロモーションしてくるんですよ。

田家:その話はこの先どうなるんでしょうか?

あした / 中島みゆき

田家:今流れていますのは、5曲目「あした」です。1989年のシングルで、アルバムは1990年の『夜を往け』。今回はリミックス版が収録されていました。この曲は、瀬尾さんが関わるようになった1988年の「グッバイガール」の次の作品ですが、この曲で思い出されることはありますか?

瀬尾:僕と彼女が一番最初に一緒にやった仕事はシングルの『涙 -Made in tears-』なんですけど、それはお試し期間という感じで。その後に『グッバイガール』の制作に入っていって、「あした」のシングルはもうレコーディングしていたんですよ。なので、初めて一緒にやった一連の仕事という感覚でしたね。

田家:「あした」は、先程の「悪女」のように主人公が芝居をしているような曲の作り方ではなくて、まっすぐでいじらしい歌ですよね。「見失ってしまわないでね」という言い回しが、とても丁寧に思えました。

瀬尾:見失わないでねだと、その時だけで時間が切れてしまっている感じがするんですけど、見失ってしまわないでねという言い方だと、ずっと見失ったまま続いているという感じがあって。優しそうに言いながら、言葉の選び方がすごいですよね。

田家:この曲では、失くしているのは"私たち"なんですよね。自分だけでなく、相手だけでもない。二人とも傷ついているというのがリアルな感じがしますね。

瀬尾:そうですね。彼女の歌は、男が悪くて女が辛いというのが多かったんですけど、男も辛いんだよという話をしたことがあって。そしたら、じゃあ二人ともということになって(笑)。

田家:ただの失恋ソングではないということを改めてお聴きいただけたらと思います。愛を追い越していく時代だからこそ愛だけを残せ、という流れでもあるのかもしれません。あまりいい言葉ではないかもしれませんが、「老い」というテーマもここにあるなと最近思ったりして。

瀬尾:そこまで先読みはしていないと思いますよ、この時まだ彼女は30代ですもん。

田家:30代の時に書いた曲が70代になろうとしている人の心を打つわけですね。

タクシードライバー / 中島みゆき

田家:続いて6曲目「タクシードライバー」。オリジナルは1979年のアルバム『親愛なる者へ』に収録されていました。こちらも瀬尾さんが関わられる前の作品、福井峻さんアレンジを手掛けられた曲ですね。今回のアルバムのDisc1で言うと、「ホームにて」がこういうアクセントの曲だと思ったのですが、Disc2だとこれですね。

瀬尾:これも映像が浮かぶくらいによく仕上がってますよね。ありそうな話だし。でも、皆さんが好きな曲なのに、これまであまりアルバムに収録されてないんですよね。

田家:セレクションアルバムには初収録ですね。なんで収録されてこなかったんでしょうね。

瀬尾:入れなきゃダメな曲がいっぱいあるからかもしれないですね。寄り添い盤には外せないんじゃないかということで入れたんだと思いますけど。

田家:今回瀬尾さんがアルバムに関わられる前の話も無遠慮にお伺いしているんですけど、瀬尾さんがリマスタリングボックスを作られた時に、瀬尾さんが関わられる前の作品も全部お聴きになって手掛けられたんですよね。 あの時は、改めて思うことがあったんでしょうか?

瀬尾:僕は1988年から彼女に関わっているのですが、その前のものは代表曲以外聴いたことがなかったんですよ。逆に言えば、聴くのが怖かったから聴いてなかったというのもあるんです。秘密の箱を開けてしまうような感じで、それを聴いたら僕はどんな影響を受けるのか怖かったんです。でも、リマスターを作るに当たって実際に聴いて、怖いというのは感じなかったんですけど、すごく良くできてるなということと、僕がやろうとしていることも、彼女のやろうとしていることから見たら何も変わってないというか。彼女の主義、主張には一本筋が通っていたので、そこにお手伝いするという意味では僕以前の方と同じですね。そのバトンを僕が受け取れば良かったというだけだったので、怖さは無くなりました。

田家:むしろ自分の進むべき道が見えたと。いわゆる歌の上手さという言い方をしますが、この曲はそういう歌じゃない感じがしますね。

瀬尾:上手いですよ。味がありますよ、なかなかこんな感じで歌えませんよ。

田家:この曲は泣きながら歌っているのかと思ってしまう部分もありますね。

瀬尾:すごく上手い役者ですね。

田家:瀬尾さんも先ほど仰っていましたが、一篇のドキュメンタリーフィルムのような曲です。

with / 中島みゆき

田家:続いて7曲目「with」です。オリジナルは1990年発売で、アルバムは『夜を往け』に収録されておりました。『夜を往け』には「新曾根崎心中」という曲もあって、少しづつ新しい試みもしていた時代だったと思いますが。

瀬尾:「新曾根崎心中」もあの中に入れるつもりはなかったんですけど、全体的にもう少し色っぽい曲もあっていいよねと僕が言ったら、こういう曲あるよって「新曾根崎心中」を渡されて。じゃあこれを入れさせていただきます、と。

田家:この「with」には、寂しさと虚しさと疑いという言葉が出てきますが、これはみゆきさんにも限らずでしょうけど、物を作っている人というのはこういうことに直面したり葛藤している人たちでもあるわけですよね。

瀬尾:究極的な言い方をしてしまえば、自分以外敵ですもんね。敵といっても色々な種類がいるわけで。自分が作品を作って外に聴かせるまでの間にどれだけ自問自答するか、その間に色々な人の知恵などを吸収しながらやっていくのですけども。作業としては孤独な作業ですよね。誰とも相談ができないものなので。曲として書いてしまって僕みたいな人に渡せば相談はできるようになりますが、0から作り上げるということに関しては誰とも相談できないので、本当に孤独だと思います。

田家:そのことを分かっていることがアーティストに寄り添っているということになるのかもしれませんね。

瀬尾:そういう存在にはなりたいですけど、なかなか寄り添わせてはくれません。跳ね除けられます(笑)。

田家:でも、これだけ長く一緒にやられているのは、寄り添ってくださいと言われているようなものかもしれませんね。

瀬尾:半径何メートル以内に入るなという感じですけどね(笑)。

田家:入らないほうがいいこともあるのかもしれません。この曲の「ひとりきり泣けてもひとりきり笑うことはできない」という部分が改めて届けばいいなと思います。人生という旅、寒さを分かち合う相手が見つかるかどうか。withというのは寄り添いの言葉ですよね。

瀬尾:コロナ禍になって、withの後につく人を見つけることが一番必要なことかもしれませんし、そういうチャンスをコロナがくれたのかもしれないので。なので、withの後につく人をちゃんと確認しましょうね。

田家:そういう年になることを願って今週は締めくくりということになります。今月は毎週、瀬尾一三さんをゲストにお送りしております。ありがとうございました。



田家:FM COCOLO「J-POP LEGEND FORUM」、中島みゆき2021Part3。先月発売になったセレクションアルバム『ここにいるよ』の全曲紹介。プロデューサー、アレンジャー、音楽監督の瀬尾一三さんをゲストにお送りしました。今週はDisc2寄り添い盤の前半をお送りしました。流れているのは、この番組の後テーマ、竹内まりやさんの「静かな伝説(レジェンド)」です。

今週はDisc2寄り添い盤の前半をお聴きいただきました。改めて思ったことがありまして、今は音楽の聴き方としてはサブスクリプション、聴き放題として聴かれることが多いですよね。どんな曲でも単体でいくらでも聴くことができるわけですが、この番組はアルバム主義であります。アルバムというのは、この曲で始まって、この曲の次にこの曲、最後にこの曲という一連の流れにストーリーがあったりするわけです。アレンジャーの方は、全体の流れを演出するプロでもある。バラバラの曲ではなく、アルバムとして聴いてほしいということで今月も全曲をお届けしているわけです。

でも、みゆきさんにとって今回のアルバムにはもう一つ意味があるなと思いました。瀬尾さんのお話の中で、それぞれの曲がオリジナルアルバムの曲順に縛られているところがあった。「夜会」では、そこから解放して聴いてほしかった。そうやって一度アルバムから解放された曲が、セレクションアルバムとして一つのストーリー、意味を持った。これはオリジナルアルバムと違うもう一つのオリジナルアルバムとしてお聴きいただくと、それぞれの曲がどういう意味を持ったものなのかが改めてお分かりいただけるのではないだろうか。 そして、瀬尾さんからは、こんなに素晴らしい参考書があるんだろうかというお話を聞けております。来週は最終週、お楽しみにしてください。


<INFORMATION>

田家秀樹
1946年、千葉県船橋市生まれ。中央大法学部政治学科卒。1969年、タウン誌のはしりとなった「新宿プレイマップ」創刊編集者を皮切りに、「セイ!ヤング」などの放送作家、若者雑誌編集長を経て音楽評論家、ノンフィクション作家、放送作家、音楽番組パーソリナリテイとして活躍中。
https://takehideki.jimdo.com
https://takehideki.exblog.jp

「J-POP LEGEND FORUM」
月 21:00-22:00
音楽評論家・田家秀樹が日本の音楽の礎となったアーティストに毎月1組ずつスポットを当て、本人や当時の関係者から深く掘り下げた話を引き出す1時間。
https://cocolo.jp/service/homepage/index/1210

OFFICIAL WEBSITE : https://cocolo.jp/
OFFICIAL Twitter :@fmcocolo765
OFFICIAL Facebook : @FMCOCOLO
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