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BEYOOOOONDS初武道館公演、「楽しすぎて泣きそうになる」という唯一無二の感覚

Rolling Stone Japan / 2022年4月30日 22時30分

「BEYOOOOOND1St CONCERT TOUR どんと来い! BE HAPPY! at BUDOOOOOKAN!!!!!!!!!!!!」

2019年12月に行われたBEYOOOOONDS初の単独公演「LIVE BEYOOOOOND₁St」は衝撃的な楽しさだった。1stアルバム『BEYOOOOOND₁St』を基本にしながらも、ライブ仕様の寸劇やアレンジを盛り込んだり、数多くの小ネタを挟むなど、細部にわたる演出によってこれまでになかった<歌・ダンス・寸劇>をベースにしたグループが持つ可能性を我々にてんこ盛りで提示してくれた。

【写真を見る】様々な葛藤や努力を経て迎えた日本武道館公演

そこから数カ月が経ち、世界はコロナ禍に飲み込まれた。BEYOOOOONDSも初のツアーやホール公演が中止に追い込まれるなど受難は続いた。しかし、彼女たちはただでは転ばなかった。YouTubeに活動の場を見出し、数々の企画を実行に移した結果、グイグイとチャンネル登録者数を伸ばし、新規ファンを獲得した。そして、単独公演こそなかなか行えなかったものの、ハロー!プロジェクトのコンサートや自身の主演舞台でメンバーそれぞれが己と向き合い、スキルを磨いた。そうやって様々な葛藤や努力を経て迎えたのがグループ初となる日本武道館公演「BEYOOOOOND1St CONCERT TOUR どんと来い! BE HAPPY! at BUDOOOOOKAN!!!!!!!!!!!!」だったのである。

BEYOOOOONDSは開演前から面白かった。開演直前に映像で登場した12人のメンバーが、のちに披露する新曲「涙のカスタネット」で叩くカスタネットの演奏指導をしたのである(カスタネットは会場物販とオンラインで販売されていた)。拍手の代わりに盛大に鳴らされる小気味いいカスタネットの音色は、あっという間に場内を和やかな雰囲気で包んだ。



オープニング映像ではストリングスの音とともに渋谷の雑踏や逆再生される砂時計が映し出され、メンバークレジットが流れていく。意外にも重々しく、緊張感のあるスタートだった。そんな空気の中、メンバーが北方向からランウェイを渡ってセンターステージへと向かうと、6300人による温かい拍手がそれを出迎えた。場内が息を呑むなか、それぞれの持ち場についたメンバーによる台詞回しがはじまったのだが、寸分の狂いのないタイミングで複数のメンバーがセリフを発していく光景は鳥肌モノで、そのあまりの迫力に涙が出そうになった。みんなには手がある――これがこの場で繰り返された言葉だった。こうしてオープニングナンバーへとバトンが渡されるのだった。

序盤で印象的だったのは「きのこたけのこ大戦記」。音源だと少々長尺に聴こえるが、パフォーマンス込みで観るとむしろ見応えがあって楽しい。センターステージから伸びるランウェイの先にある南のサブステージで、誰がきのこ派とたけのこ派による戦いの仲裁に入るかじゃんけんで決めているSeasoningSの平井美葉、小林萌花、里吉うたのの演技がよかった。大きなステージだからこそ、その可笑しさがより伝わる。この日、最も印象に残った曲のひとつだ。

全編を通して、全体的な歌唱力の底上げが目立った。山﨑夢羽のように元々ずば抜けた歌唱力を持っているメンバーはその迫力がより一層増し、歌がそこまで得意でなかったメンバーも目を見張るような成長を遂げていた。歌で魅せる場面は非常に多く、島倉りかのドスの効いたボーカル、高瀬くるみと平井によるユニゾンなど、印象的な歌唱が次々と披露された。



ダンスも見応えがあった。序盤はメンバーごとに異なる振付の曲が多かったためそこまで目立たなかったが、「激辛LOVE」や「Now Now Nigen」といった楽曲で見せた統率のとれたフォーメーションは実に美しかった。







ブラッシュアップされた既存曲

本公演を観るにあたって気になっていたのは、いくつかの既存曲がどのようにパフォーマンスされるかということ。なぜなら、原曲のまま披露するにはちょっと無理があったからだ。しかし、芸の細かいBEYOOOOONDSがそのまま放っておくわけがなかった。「Go Waist」で登場したサヤー隊長(江口紗耶)は着席観覧の観客に配慮したワークアウトを指示し、令和元年に発表された「元年バンジージャンプ」は「4年バンジージャンプ」として生まれ変わった(昨年行われたFCイベントでは「3年バンジージャンプ」として披露されたようだ)。ユニット曲ではSeasoningS「We Need a Name!」の変化にもニヤリとさせられた。そのほかにも本当に細かい改良が加えられ、ただただ唸るしかなかった。常に「今」を大事にし、その都度ブラッシュアップしていくのである。







中盤に披露された、数曲のパフォーマンスを盛り込んで繰り広げるハイブリッド寸劇『眼鏡くんは罪なやつ』も圧巻。しっかり練られた脚本と各メンバーの演技が本当に素晴らしかった。オープニングナンバーとなった「眼鏡の男の子」で講談師(清野桃々姫)の語りが始まってすぐに、彼女たちの演技が凄みを増しているのを感じた。歌やダンスだけでなく、演技においても大きな成長を見せていたのである。



BEYOOOOONDSのステージは、歌、ダンス、寸劇という3本の柱で構成される。歌とダンスだけでも大変なのに、そこに演技が加わることによってハードルはさらに上がる。しかし、それを感じさせないのが12人の凄さ。セリフを忘れるどころか噛むことすらなく、間の取り方や表情まで完璧。ひとつの舞台として完璧に成立していた。特に際立っていたのは島倉の存在感。本来はお嬢様キャラを演じる彼女が眼鏡くん(前田こころ)を人質にとった場面で見せた狂気の表情はコメディであり、見方を変えればホラーでもあった。劇中の言葉を借りればまさに「おいしい」役どころだったのだが、それ以上のものに昇華したのは彼女の演技力のたまものである。



演技とは別だが、豹変ぶりでいうと岡村美波もすごかった。雨ノ森川海のユニット曲でギラついた表情でパフォーマンスしたかと思えば、その他の楽曲ではキラッキラのアイドルスマイルを見せる。これまでもそうではあったのだけど、その振り幅がより大きくなっていた。彼女はこの日、何かと目で追いたくなるメンバーのひとりだった。



歌、ダンス、演技に加えてピアノという大役を担っていた小林の動きも凄まじかった。楽曲によってグランドピアノとショルキーを使い分け、時には左手で鍵盤を押さえ、それと同時に右手でマイクを持つという曲芸に近いようなことも軽々とやってのけた。


「全曲振り返りスペシャルメドレー」の衝撃

この日は数々の新曲が披露され、観客がカスタネットで参加した「涙のカスタネット」も楽しかったのだが、BEYOOOOONDSの真髄と言えるのはアンコールで披露された「全曲振り返りスペシャルメドレー」ではないだろうか。「このライブをもう一度頭から観れたらいいと思いませんか?」という一岡伶奈の呼びかけから始まったこのメドレーは、タイトルどおり、本公演の1曲目から数小節ずつノンストップでつなげたもの。はっきりいって異常である。当然、テンポチェンジは激しく、楽曲の世界観もコロコロ変わるため、観ているほうはついていくので精一杯。しかも、本編では披露していないハロプロ研修生の曲の1フレーズを里吉が歌ったり、本編ではしっかり噛じっていたはずのハムカツを取り逃した西田汐里がぴょんぴょん飛び跳ねたり、これでもかというぐらい楽しい小ネタが盛り込まれていた。





その反動もあって、ラストに披露された名曲「伸びしろ~Beyond the World~」は本当に感動的だった。<だけど きっと大丈夫 だけど なんとかなるさ 不安感じる度に 言い聞かせた言葉>という歌詞で始まるこの曲はコロナ禍以前に発表されたものだが、今の状況と重なる部分が多すぎて、よりエモーショナルな歌唱となった。前述のパートを担当した清野が声を詰まらせたのも無理はない。全員が輪になって内側を向いて歌うという演出もメンバーとしてはかなり胸にくるものがあっただろう。<まだ何も終わっちゃいない 今始まったのさ>という歌詞は、ここから再び前進を始める彼女たちの姿にぴたりと重なった。

コロナ、戦争、今年に入ってから相次ぐアイドルグループの解散やメンバーの卒業など様々な要因が重なり重苦しさを感じていたが、BEYOOOOONDS初の武道館公演はほんのひとときだけでもネガティブな気分を蹴散らす楽しさに満ちあふれていた。「LIVE BEYOOOOOND₁St」でも感じたことだが、「楽しすぎて泣きそうになる」という経験はBEYOOOOONDSのコンサートでしか味わったことがない。

今年3月に公開されたインタビューで平井が「こういう時期だからこそみなさんを元気にしたい、応援したい」という趣旨のことを話していたように、その想いは約140分に及んだショーの隅々に感じられた。自分たちが楽しむことももちろん大事だけど、コロナ禍を経て、「どうやったらファンに楽しんでもらえるか、どうやったら笑ってもらえるか」という意識がかなり強くなっているように見えた。それはアンコール時の挨拶に顕著だった。「みなさんを応援するアイドルで居続ける」(西田)、「たくさんの方に愛されるアイドルで居続ける」(前田)、「悲しいことがあったときにBEYOOOOONDSのことを思うことでハッピーになれるような存在になりたい」(島倉)、「BEYOOOOONDSって優しいんですよ。この優しい世界にまた遊びに来てほしい」(小林)といった言葉の数々は短いながらもポジティブなものばかりだったし、「~したい」という未来へ向けた意志表明が多かった。そんな中で、最後に「推し変とかしないで、ずっと応援してくれたらと思います」と落としたリーダー一岡はさすがだった。

BEYOOOOONDSのコンサートは非常に手が込んでいる。豪華なステージセットやきらびやかな照明ということではなく、歌、ダンス、演技という12人のメンバーの全身から発せられるものがステージを豊かにしていた。たとえシンプルな舞台だとしても、彼女たちにはそこにはない何かを我々に見せる力がある。BEYOOOOONDSは本当に素晴らしい。本公演のいち早い映像化が待たれるし、できるだけ早く彼女たちの新たなショーが観たい。メンバーがステージを去ったあとにスクリーンに映し出された「Lets continue」という言葉が心強かった。

【関連記事】BEYOOOOONDSの前田こころ、小林萌花、平井美葉が語る、グループの「成長実感」

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