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「具体」の歴史とともに現代美術を解く 芦屋市立美術博物館で2つのコレクション展

産経ニュース / 2024年4月26日 14時0分

兵庫県芦屋市の市立美術博物館で、現代美術にまつわる2つのコレクション特集展が同時開催されている。「アプローチ!-アーティストに学ぶ世界のみかた」と「具体美術協会/芦屋」だ。難解と思われがちな現代美術を、作り手の視点や世界の美術界にも影響を与えた具体美術協会(具体)の歴史を通じて優しく解き明かす。

「アーティストに学ぶ」は「アーティストも私たちと同じ世界に生き、制作のモチーフは世界から学び取り、制作することで再び世界に投げかける」(同館学芸員の川原百合恵さん)という視点から、①自然へのまなざし②人間の営み③造形へのまなざし-の3つの章で構成される。

象徴的な作品は、第1章なら大きな綿布に石を付けてつり下げ、目に見えない重力を可視化する植松奎二の「Triangle-Stone/Cloth」、第2章はハナヤ勘兵衛が戦後間もない中、人々が明るく一生懸命生きる姿を撮影した「銀めし」などの写真、第3章は具体の主要メンバー、元永定正の「あかのうえ」など色鮮やかなシルクスクリーン作品群であろう。

最初にこの展示を見た後に具体の方に歩を進めると、個性豊かな具体のメンバーたちの作品を鑑賞するのにも役立つ。

具体は洋画家、吉原治良をリーダーに昭和29年に芦屋で結成された美術集団で、「人のまねをするな」という指針のもと、元永をはじめ、白髪一雄、嶋本昭三ら、多くの美術家を輩出した。「今年で結成70年ということもあり、歴史になった具体の18年間の活動を、当館所蔵の作品や資料で振り返りたい」(同館学芸員の大槻晃実さん)という意図で、こちらも時代ごとに3つに分けて構成されている。

展示は29~32年の作品から始まる。具体ができた翌年、吉原の息子、通雄が制作し、読売日本アンデパンダン展に出展した作品、「具体」から始まり、初期メンバーの嶋本や山崎つる子の作品、彼らのパフォーマンスを含めた活動を記録した機関紙などが並ぶ。

フランスの「アンフォルメル」の影響を受け抽象絵画中心になっていった第2期(32~40年)は、足で絵を描いた白髪や支持体に絵の具を流して制作した元永の作品など、第3期(40~47年)は、今井祝雄ら新世代の台頭を示す作品群で吉原の死による活動の終焉までをたどる。

新しい自分を探すかのように、時代ごとに作風を変えてゆく作家たちの変遷や戦後日本を代表する美術団体の盛衰を通じ、日本の現代美術の移り変わりを概観できる。(正木利和)

6月9日まで(4月29日、5月6日を除く月曜と4月30日、5月7日休館)。2つの特集合わせて一般500円ほか。問い合わせ0797-38-5432。

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