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時速285キロをミリ単位で支える職人技 新幹線台車検査「絶対の安全求め」

産経ニュース / 2024年4月26日 10時30分

新大阪から東海道新幹線に乗って東京方面に出発してしばらくすると、左側の車窓に広大な車両基地が見えてくる。60年前の東海道新幹線開業時から安全運行を支えてきたJR東海の「新幹線鳥飼車両基地」(大阪府摂津市)だ。

広さは約30万平方メートル(東西2・2キロ、南北230メートル)で甲子園球場の約7・8倍。収容可能な車両数は約600両。東京にある大井車両基地(東京都品川区)と同等の規模を持つ西の拠点は、異なる役割を担う4つの車両所から成り立ち、そのひとつ、大阪台車検査車両所は同社が持つすべての営業用新幹線車両の「台車検査」を受け持つ。

回送線を通って入庫してきたN700S16両編成を半分に分けるところから作業が始まる。車両の下にもぐり、8両分の台車を取り外し、検査済みの新しい台車をつける。別の日に残りの8両を作業。入場から台車の付け替え、試運転などを4日で終え、リフレッシュしたN700Sは営業運転に戻る。

台車検査は走行距離60万キロ以内、または18カ月以内(一部車両は80万キロ以内、または20カ月以内)の周期で行われる。走行距離120万キロ以内、または36カ月以内(一部車両は160万キロ以内、または40カ月以内)に実施される車両のオーバーホール「全般検査」への中間検査として位置づけられている。

取り外された台車には、やはり「疲れ」が見える。まずはモーター、台車枠、左右の車輪がつながった輪軸といった主要部ごとに解体し、それぞれを細部にわたって入念に検査していく。最高時速285キロの高速運転を支える台車。不備があれば、重大事故につながる可能性が高い。同車両所企画科長の片山康一さん(51)は「台車はバックアップがない。絶対の安全が求められる」と力を込める。

検査が済んだ各部品を台車として組み立てる作業は3人がかり。緩みや誤差はないか、目を光らせる。作業の後、この台車は「検査済み」として、新たに入場してくる車両に取り付けられる。

乗り心地直結

台車は乗り心地にも直結する。線路と接し、摩擦が激しい車輪に傷や凹凸があれば、振動などにつながる。車輪内側でレールとかみ合う「フランジ」の厚さ、高さを保てるように削る量は決められるが、それはミリ単位。専用の機械で平均10ミリ前後を削る。削正後の車輪は生まれ変わったようにピカピカだ。

片山さんによると同車両所は若い社員が多く働いているという。主に若手を対象に安全意識を高めてもらおうと、教育施設「S-sense」(エッセンス)が設置されている。教育用に設置された実際の台車に「整備不良」を施し、それを見つけるトレーニングなどを行っている。片山さんは「実際の作業では行えない、現物を使った『失敗体験』でルール、手順の理解を深めてほしい」と話す。

「S-sense」で学んだ同車両所所属の末永恭太郎さん(27)、平井真夢さん(23)は「新幹線の安全を守っている仕事にやりがいを感じている」と口をそろえ、末永さんは「将来は台車の設計に携わりたい」、平井さんは「安全に検査する仕組みをつくりたい」と目標を語る。東海道新幹線の安全・安心を追い求める「系譜」は受け継がれている。

メンテナンスは主に4段階

東海道新幹線の車両検査は主に4段階ある。鳥飼のほか、大井、三島(静岡県三島市)、名古屋(名古屋市中村区)の4つの車両基地と浜松工場(浜松市)がメンテナンスにあたっている。

最も頻度が高いのが「仕業検査」でおおむね2日に1回行う。分解作業などは行わず、パンタグラフや台車などの状態を確認。大井と鳥飼の仕業検査車両所、三島、名古屋各車両所の4カ所で実施している。

走行距離6万キロ以内、または45日以内に行うのが「交番検査」。各部の状態や正常に作動することなどを確認。大井と鳥飼の交番検査車両所で行う。

「台車検査」は鳥飼の大阪台車検査車両所で実施。JR東海の営業用車両131編成(昨年度)のうち、年間で約60編成が入場する。黄色い車体で人気のドクターイエロー(923形新幹線電気軌道総合試験車)は浜松工場に入る。

「全般検査」は浜松工場。車両の主要部分を取り外し、検査や洗浄を施す。ATC装置、モーターなどは専用の試験装置で性能確認試験を行う。

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