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月面の砂「レゴリス」から酸素を取り出す技術、ESAが研究中

sorae.jp / 2020年1月20日 21時20分

NASAの「アルテミス計画」によって2024年にも再開される予定の月面有人探査。将来の持続的な月探査に向けて、ESA(欧州宇宙機関)では月面で酸素を生成するための研究が進められています。

■溶融塩電解法でレゴリスから酸素と金属を入手

溶融塩電解法の実験で処理する前のレゴリスの模擬物質(左)と、処理後に得られた合金(右)(Credit: Beth Lomax – University of Glasgow)

Beth Lomax氏(グラスゴー大学、イギリス)がESAの支援を受けて研究しているのは、月面を覆うレゴリス(砂や塵でできた堆積物)から酸素を取り出す方法です。

過去に月面から採取されたサンプルを研究することで、レゴリスには重さにして4割ほどの酸素が含まれていることがわかっています。ただ、酸素は鉱物やガラスといった酸化物の形でレゴリスのなかに存在しているため、人が呼吸するには何らかの方法で酸素を取り出さねばなりません。

Lomax氏が採用したのは、溶融塩電解(融解塩電解とも)と呼ばれる方法です。摂氏950度に加熱して融けた状態の塩化カルシウムにレゴリスを浸して電流を流すと、レゴリスから酸素が抽出されて陽極に集まります。ESAによると、レゴリスの模擬物質を使った実験では15時間で75%、50時間で96%の酸素を抽出することに成功しています。

また、レゴリスから酸素を抽出した副産物として、さまざまな金属を含んだ合金が残されます。Lomax氏とともに研究を進めているESAのAlexandre Meurisse氏は、得られた合金の活用もまた有用な研究対象になるとコメントしています。

■研究が進む「その場資源利用」

将来の月面基地の想像図(Credit: ESA – P. Carril)

大気がほぼ存在しない月面で人間が活動するには、与圧された居住室や宇宙服、酸素、水、食料といった設備や物資が必須です。長くても3日間しか月面に滞在しなかったアポロ計画では月着陸船が小さな月面基地としての役割も担っており、物資の量も限定的だったので、1つのロケットですべてまとめて打ち上げることができました。

しかし、国際宇宙ステーション(ISS)のように宇宙飛行士が長期間滞在するような基地を月面に建設し、これを維持するとなれば、膨大な量の資源が必要となります。そのすべてを地球からの輸送に頼るとなればコストも掛かりますし、もしも輸送が滞れば宇宙飛行士の生存に関わる事態を招く可能性もあります。

そのため、地球への依存度をなるべく減らすために、月面のレゴリスを建材や熱源として利用したり、月で水や酸素を調達したりするための「その場資源利用」(ISRU:In-Situ Resource Utilization)技術の研究が進められています。Lomax氏の研究が実を結べば、将来の月探査では月面産の酸素を使うことが当たり前になるかもしれません。

実験を行うBeth Lomax氏とAlexandre Meurisse氏(Credit: ESA–A. Conigili)

 

関連:できるだけ現地調達。持続的な有人探査を支えるために月面の「レゴリス」を活用

Image Credit: Beth Lomax – University of Glasgow
Source: ESA
文/松村武宏

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