星空に向けて放たれる光。地上からの観測を支える「補償光学」のレーザー光
sorae.jp / 2020年11月9日 21時10分
こちらの画像、レーザーが飛び交うSF映画のワンシーンのようにも見えますが、CG等ではありません。
中央上に見えるピンク色の天体は、南天の「りゅうこつ座」(竜骨座)の方向およそ7500光年先にある散光星雲「イータカリーナ星雲」です。そこに向かって左下から伸びている4本のオレンジ色の光は、チリのアタカマ砂漠に位置するESO(ヨーロッパ南天天文台)のパラナル天文台にある「超大型望遠鏡(VLT)」を構成する口径8.2mの望遠鏡4基のうち1基から照射されたレーザー光です。
このレーザー光は、地球の大気によるゆらぎの影響を打ち消す技術「補償光学(Adaptive Optics)」に用いられるものです。補償光学では明るい天体などを目安に大気のゆらぎを測定し、望遠鏡に組み込まれている鏡の形状をリアルタイムに変形させることで、観測中の天体を鮮明に捉えられるようにします。補償光学を利用すると、地上の天体望遠鏡でも「ハッブル」宇宙望遠鏡に匹敵する解像度で天体を観測できるようになるのです。
4本のレーザー光は、地球の上層大気にあるナトリウム層に向けて照射されています。レーザー光に照射されたナトリウム原子が光ることで作り出された「レーザーガイド星」と呼ばれる人工の「星」は、補償光学によってゆらぎの影響を打ち消すための目安になります。同様の手法は国立天文台ハワイ観測所の「すばる望遠鏡」をはじめ、さまざまな望遠鏡で利用されています。
冒頭の画像はESOの「今週の一枚」として2020年11月9日に「Death by Laser?」のタイトルで公開されています。
関連:補償光学の力。地上から高解像度で撮影されたイータカリーナ星雲
Image Credit: ESO/G. Hüdepohl
Source: ESO
文/松村武宏
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