死につつある銀河を「延命」させる現象をアルマ望遠鏡が初めて捉える
sorae.jp / 2021年9月8日 11時5分
アルマ望遠鏡は7月29日、アメリカのアリゾナ州立大学の天文学者ウィリアム・クラマーさん率いる研究チームが、アルマ望遠鏡などの観測データを使って、死につつある銀河を延命させる現象を発見したと発表しました。
銀河団は重力的な集まりとしては宇宙でも最大の構造です。数百から数千の銀河が含まれ、高温のガスのなかに散在していますが、この高温のガスを銀河団ガスといいます。
銀河がこの銀河団ガスのなかを移動すると、銀河団ガスから圧力を受けて、その銀河のガスが剥ぎ取られていきます。その結果、やがてその銀河では新しく星が誕生しなくなります。新しく星が誕生するためにはガスが欠かせないためです。これはその銀河の死を意味します。
今回、研究の対象となった「NGC 4921」もそのような死につつある銀河の1つです。コマ銀河団に属する巨大な棒渦巻銀河で、地球から3億2000万光年のところにあります。
ここで注目していただきたいのは、上掲した画像の中央の右側に見えている強調された橙色のフィラメント状(filament=単繊維)の構造です。アルマ望遠鏡の観測によって発見されたもので、研究チームによれば、NGC 4921の磁場によって、銀河団ガスによりチリが剥ぎ取られることが妨げられたことによって形成された、チリのフィラメントだと考えられるといいます。このフィラメントから外側にはガスやチリはすでに剥ぎ取られてほとんどないそうです。
そして、研究チームによれば、このフィラメントの周辺では、NGC 4921の磁場によって、ガスのスピードが落ちるために、NGC 4921の重力によって、一旦、引き剥がされたガスが引き戻されてくると考えられるといいます。まるでブーメランのようですね。
研究チームによれば、銀河の死亡時期をより正確に予測するためには、このような延命のプロセスを考慮に入れる必要があるといいます。
研究チームでは、今回の研究成果は、まだ1つの銀河の1部分を調べたにすぎず、これからさらに範囲を広げて、研究を進めていきたいとしています。
Image Credit: ESO/NAOJ/NRAO)/S. Dagnello (NRAO), NASA/ESA/Hubble/K. Cook (LLNL), L. Shatz
Source: アルマ望遠鏡プレスリリース/論文
文/飯銅重幸
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