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新型ロケット「SLS」打ち上げ前リハーサル終了! 早ければ2022年8月下旬にも初飛行

sorae.jp / 2022年6月26日 10時55分

【▲ ケネディ宇宙センター39B射点でウェットドレスリハーサルの開始を待つSLS初号機とオリオン宇宙船。2022年6月14日撮影(Credit: NASA/Ben Smegelsky)】

【▲ ケネディ宇宙センター39B射点でウェットドレスリハーサルの開始を待つSLS初号機とオリオン宇宙船。2022年6月14日撮影(Credit: NASA/Ben Smegelsky)】

アメリカ航空宇宙局(NASA)は現地時間6月18日から6月20日にかけて、新型ロケット「SLS(スペースローンチシステム)」初号機の打ち上げ前リハーサル「ウェットドレスリハーサル」をケネディ宇宙センターにて実施しました。

今回のリハーサルでは推進剤の完全な充填、自動打ち上げシーケンサーによる発射カウントダウンの実行、タンクからの推進剤排出といった、過去のリハーサルでは達成できなかった内容を含む打ち上げのタイムラインと手順が検証されました。収集したデータを分析したNASAは一連の試験が完了したと判断しており、SLS初号機は早ければ2022年8月下旬に打ち上げられる見込みです。

■水素漏れを検知しつつも最終段階のカウントダウンまで進行、初飛行に大きく前進

NASAが開発した新型ロケットSLSの初号機は、有人月面探査計画「アルテミス」最初のミッション「アルテミス1」に用いられる機体です。アルテミス1はSLSおよびNASAの新型宇宙船「Orion(オリオン、オライオン)」の無人飛行試験にあたるミッションで、月周辺を飛行したオリオン宇宙船は打ち上げから4~6週間後に地球へ帰還します。

ウェットドレスリハーサル(wet dress rehearsal)は本番と同様のタイムラインに沿って48時間かけて実施される打ち上げ前のリハーサルで、SLSには極低温の推進剤(液体水素と液体酸素)が実際に充填され、カウントダウンはエンジン点火の直前まで進められます。また、途中でカウントダウンをホールドしたり、一度充填した推進剤を抜き取ったりすることで、何らかの問題が生じた際に打ち上げを中断できることも確認されます。

ウェットドレスリハーサルは2022年4月にも2回行われたものの、途中で幾つかの問題が生じたために一旦中止。SLS初号機と移動式発射台は対策を行うためにケネディ宇宙センターのロケット組立棟へ戻されましたが、リハーサル再開の目処が立ったことで、2022年6月6日に同センターの39B発射台へ向けて再びロールアウト(射点への移動作業)が行われていました。

関連:NASA新型ロケット「SLS」打ち上げリハーサルのため再び射点に立つ

【▲ ケネディ宇宙センター39B射点に到着間近の新型ロケット「SLS」初号機(Credit: NASA/Ben Smegelsky)】

【▲ ケネディ宇宙センター39B射点に到着間近の新型ロケット「SLS」初号機(Credit: NASA/Ben Smegelsky)】

3回目となる今回のウェットドレスリハーサルは米国東部夏時間(以下同様)2022年6月18日17時頃に始まりました。最終日の6月20日朝には推進剤の充填に“ゴー”の判断が下り、第1段の「コアステージ」と第2段の「ICPS」には液体水素と液体酸素が順次充填されていきました。推進剤の充填は4月のリハーサルでも一部行われましたが、今回は初めて推進剤が完全に充填されています。

カウントダウンは最終段階のターミナル・カウントダウンまで進み、模擬的に設定された打ち上げ予定時刻の29秒前で終了しました。NASAによると、地上の打ち上げシーケンサーからSLS側のシステムが司る自動打ち上げシーケンサーへの切り替えを含む、達成すべき重要なステップの幾つかがターミナル・カウントダウン中に行われたとのことです。

ただ、今回のリハーサルも問題が全くなかったわけではありませんでした。推進剤の充填作業中、移動式発射台の基部にあるテールサービスマストアンビリカル(Tail Service Mast Umbilicals)とSLSコアステージのエンジンセクションをつなぐクイックディスコネクト(quick disconnect)で水素の漏洩が検知され、カウントダウンを中断。地上チームはクイックディスコネクトを加熱・冷却して気密性の再調整を試みましたが努力は実らず、漏洩に関するデータをマスクすることでリハーサルは継続されました。また、窒素ガスのバックアップ供給ラインで問題が確認されてバルブが交換された他に、余分な水素ガスを燃焼させるフレアスタックの近くで草が燃える小規模な火災も起きており、最終的にリハーサルは5時間遅れて進行しました。

【▲ 矢印の先にあるのが移動式発射台の基部にあるテールサービスマストアンビリカル(Credit: NASA/Joel Kowsky、矢印は筆者が追加)】

【▲ 矢印の先にあるのが移動式発射台の基部にあるテールサービスマストアンビリカル(Credit: NASA/Joel Kowsky、矢印は筆者が追加)】

ウェットドレスリハーサルを終えたSLS初号機は、移動式発射台とともに数日以内にロケット組立棟までロールバック(組立棟への移動作業)されます。NASAによれば、水素漏れの対策が行われた後に打ち上げ目標日時が決定されるとのことです。

冒頭でも触れたように、NASAは2022年8月下旬の打ち上げを目指して、整備後にSLS初号機を再び射点へ運ぶことを計画しています。すでに公開されているアルテミス1ミッションの打ち上げ可能期間を参照すると、早ければ8月23日~29日・9月2日~9月6日のタイミングで打ち上げられることになりそうです。日本人宇宙飛行士も参加する可能性がある21世紀の有人月面探査計画、その最初のミッション開始までもう間もなくです。

 

関連:アポロからアルテミスへ。半世紀の時を隔てた「サターンV」と「SLS」の姿

Source

Image Credit: NASA/Ben Smegelsky Artemis (NASA Blogs) NASA - NASA to Discuss Status of Artemis I Moon Mission NASA - Artemis I Mission Availability SpaceNews - NASA nearly completes SLS countdown test

文/松村武宏

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