『離婚しない男』でも挿入歌に。中西保志の「最後の雨」が30年以上歌い継がれる理由
日刊SPA! / 2024年4月1日 15時51分
古典音楽の世界にちょっと目を向けると、同曲リリースのちょうど100年前、1892年には、チェコの作曲家ドヴォルザークがニューヨークに渡り、有名な交響曲第9番《新世界より》の作曲に着手している。
音楽の歴史ってほんと奥深くて、複雑で、面白い。まさかドヴォルザークから100年後の日本では、カラオケ猛者たちが、まるでベルカントオペラの名テノール歌手のように競って、「最後の雨」の超高音に挑んでいたと考えると、なんだか笑える。
◆令和でも圧倒的な存在感を放っているのはなぜか
じゃあこの「最後の雨」、今でもカラオケで歌われているのだろうか。試しにカラオケの鉄人の月間ランキングで調べると、1位は当然「アイドル」だけれど、「最後の雨」は、ありゃなんと64位。
100位圏内とはいえ、あまり高順位とはいえない。それでも尚、同曲が、令和でも圧倒的な存在感を放っているのはなぜか。歌謡曲ブームがZ世代にまで浸透する中、平成初期の名バラードでありながら、どこか昭和歌謡的な扱いの「最後の雨」。
ほんとは平成リリースだけど、昭和を代表するナンバーかのように中西本人が音楽番組で熱唱する姿が散見され、若者に刺さってるのは、なぜか。どの番組にも必ず中西が呼ばれ、代表曲を歌う。もはや中西保志による中西保志のご本人登場状態。
『テレ東60祭!ミュージックフェスティバル2023』(テレビ東京)では、出川哲朗のコント(?)を横目に、雨の中、中西が歌詞世界をしめやかに再現した。あるいは、『ニンゲン観察バラエティ モニタリング』(TBS)2月22日放送回では、街中に置かれたボックスで自由に歌唱できる人気コーナー「透明カラオケ」に中西保志本人が登場して、東大阪のおっちゃん、おばちゃんから子どもまで、広く涙腺をゆるませていた。
◆“歌われる”ナンバーから“聴き入りたい”ナンバーに
90年代リリース当時は、確かにカラオケ定番曲として“歌われる”ナンバーだったが、令和のテレビ番組を見る限りでは、プロの歌い手による圧倒的歌唱に“聴き入りたい”ナンバーになっていることがわかる。
実際、他のプロ歌手によって数々の名カバーが続々リリースされている。代表的なところでは、倖田來未、EXILE ATSUSHI、ボーイズIIメン、島津亜矢、JUJUなど、やっぱり歌のうまさに定評があるアーティストによるカバーの対象になっている。
かつてのカラオケ定番曲が、こうして歌い継がれることでスタンダード化する。この調子でカバーが重ねられたら、これまでに90近いバージョンのカバー数を誇る、大瀧詠一作曲の「夢で逢えたら」を超すんじゃないか。
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