“生理の貧困”にタンザニアで立ち向かう28歳の日本人女性。ナプキン工場の資金難や嫌がらせを乗り越えて
日刊SPA! / 2024年7月4日 15時52分
「日本で出産してシングルマザーになった私は、周りから多くのサポートを得られました。タンザニアの女性にはそれがなかったということを思い出し、シングルマザーのサポートをしたい、と思ったのが今のビジネスのきっかけです」
タンザニア政府による2016年の調査では、38%の世帯が母子家庭であるというデータもある。筆者自身も現在タンザニアに住んでいるが、日々シングルマザーの多さを実感している。子どもの通う幼稚園の先生やママ友達など、タンザニアではシングルマザーをあちこちで見かける。
「若年妊娠によるシングルマザーを助けたい」という想いが募った菊池さん。その手段として、「生理用品を無料で手にでき、性教育を受けられる状況を作る」という社会的にも影響の大きいビジネスを考え付いた。
世界銀行の2018年の調査によると、タンザニアでは人口の約半分が1日300円以下で生活をしている。そのため、多くの女性は1箱200円近くする生理用品を買えない。古い布切れやティッシュペーパーで代用している女子学生たちは、学校で経血が漏れることを心配し生理中は学校を休むことになる。その結果、授業についていけなくなり退学するケースが多いのだ。
「この世に生まれたその魂を、思いっきり輝かせて生きてほしいんです。どんな女性も、シングルマザーたちも、みんなが自分らしさを取り戻して、いきいきと輝いていくことのお手伝いがしたいんです」
◆工場稼働から3カ月で資金難に
2021年に生理用ナプキンの製造・販売のために、Borderless Tanzania Limitedを設立した25歳の菊池さんは、ボーダレス・ジャパンから初期費用として500万円、運営資金として800万円を受け取り、タンザニアに渡った。
菊池さんがナプキンの製造を行う工場は、タンザニアの大都市ダルエスサラームから車で2時間ほど離れた人口26万人の町キバハにある。ここに決めたのにも理由がある。最寄に大きなバスターミナルがあり、商品の配達に便利であること、税制優遇の特別地域であること、そしてサポートしたい若年妊娠女性たちが多く住む地域であることだ。実際に、工場がオープンすると、求人を出す前から2週間で300人以上もの女性が仕事を求めて工場に押し寄せた。
ところが事業は最初から躓いた。新型コロナの影響もありインドの企業から購入した製造機械の到着が9か月遅れたうえに、日本人が経営者というだけで大企業と判断され想定外のライセンス料を請求されたのだ。
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