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日本の中小企業「社長が高齢者だらけ」問題。後継者不足で起こる“思わぬ余波”

日刊SPA! / 2024年8月6日 8時51分

◆第三者承継で成功した事例も

 ある焼肉店の高齢店主が体力・気力ともに低下し、事業継続が困難になった。後継者もおらず廃業をする予定だったが、廃業するには賃借物件をスケルトンにして貸主に返す必要がある。見積りによると相当な廃業コストがかかり、そのお金がなくて悩んでいた。

 その話を聞いた知人が、店主に譲り受けたいと申し出た。しかし、その人はやる気はあるが、お金がないといった状態。お互いをよく知っていたので、店主もこのまま引き継いでくれるなら、造作物・厨房機器・什器備品は無償で譲渡するとのことだった。そして、建物の賃貸借契約だけ、別途、賃貸人と締結することになったのである。

 通常、焼肉店を開業するなら、焼肉ロースター設置とダクト工事などかなりの初期投資が必要で、坪当たり100万円の投資費用が必要とされる。それが開業後10年を経過しているとはいえ、無償譲渡というのは非常にラッキーで千載一遇のチャンスである。賃貸借契約では、差入れ保証金350万円、賃料36万円、不動産への仲介手数料として1か月分賃料が必要だったが、お金もない経済状態だったため、旧店主は、「自らが差し入れた差入れ保証金をそのまま置いておくから、私に返済して」と賃貸人の了解を得てくれた。

◆買手と売手の双方にメリットが

 店は、一式揃ってはいたものの、運転資金の余裕がないため、すべてがそのままの状態でスタートした。リニューアル期間も設けず、地域住民にも告知せず、月末に所有権移転手続きを完了し、翌日から自らが経営者となり営業した。

 広告費など本来必要な費用をかけず、また内外装などの余計な費用も一切かけず、それらはお金に余裕ができてからと考えた。 もともと調理師免許を有し、飲食店の厨房経験もあったので、肉の加工技術の習得は早かった。加えて店のレシピがあったので、問題なく料理提供はできた。既存スタッフもそのまま活用でき、運営自体は何の問題もなくできた。 ランチも営業し、ディナーも工夫したことで売上も急増した。

 店をフル稼働させ、現金をかき集め、旧店主の弁済原資の確保に必死だった。納入業者との取引も旧店主の後押しで、最初から信用取引を活用し、出金より入金のほうが早い回転差資金により、現金を毎日できるだけストックできた。さまざまなサポートのお陰で、予定よりも早く1年で弁済できて旧店主は大変驚いていた。

 こういったケースのように、これからは飲食店が第三者承継でM&Aを活用するケースは増えそうだ。 売手としては味の伝承、雇用の維持、取引先や顧客に迷惑をかけず、自分が苦労して開業した店も残せるし、買手としては、熟練調理人や従業員の確保、取引先や顧客を確保、すでに実績があるからリスク回避、時間と初期費用の節約が可能となり、投資回収も早い。もちろんリスクもあるが、メリットが上回るならやったほうがいい。

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