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「頑張っても無理と諦めかけていた」 31歳で初の五輪へ、柔道・角田夏実を変えた大学時代の分岐点

THE ANSWER / 2024年4月4日 11時53分

ルーキー・オブ・ザ・イヤーのプレゼンターを務めた角田夏実。大学時代の転機について振り返った【写真:大学スポーツ協会提供】

■「UNIVAS AWARDS 2023-24」に登壇し現役学生にエール

 一般社団法人大学スポーツ協会(UNIVAS)が、3月11日に年間表彰式「UNIVAS AWARDS 2023-24」を開催。他の規範となる活動を行った新入生を表彰する「ルーキー・オブ・ザ・イヤー」のプレゼンターを、柔道女子48キロ級のパリ五輪代表、角田夏実(SBC湘南美容クリニック)が務めた。「皆さんもこれからたくさんの悩みだったり、壁にぶつかると思うのですが、その時は1人で抱え込まずに、周りの方の助けを借りて壁を乗り越えていってほしいなと思います。苦しい時こそ諦めずに向き合う心を忘れずに、これからも頑張っていってほしいなと思います」と学生たちにエールを送った角田に表彰式後、あらためて自身の学生時代について尋ねた。(取材・文=松原 孝臣)

 ◇ ◇ ◇

 パリ大会が初めての五輪出場となる角田は現在31歳。中学、高校時代は決して図抜けた成績を残していなかったが、コツコツと成長を続け、日本代表として国際大会で活躍する存在に。2021年からは世界選手権3連覇を遂げ、世界屈指の柔道家に昇りつめた。

 柔道界では異例の遅咲きと言える年齢で大舞台の切符をつかみ取った角田だが、その足跡を刻むことができたのは、大学時代が大きかったという。

「高校の時の最高成績は2年生の時のインターハイ(全国高校総体)3位で、それ以上の成績は出ませんでした。頑張っても無理かなと諦めかけていたんですけど、東京学芸大学に進んでいろいろな先輩に出会い、さまざまな考え方があるのを知りました。柔道もいろいろな視点で見ることができるようになって、みんなと同じことをしていても自分の力を伸ばすことはできないと思いました」

 そこで柔術やサンボを経験し、自分らしい柔道を磨いた。

「その大学時代があって、今の自分があると思います」

 大学時代は取り組む姿勢にも変化があったと振り返る。

「高校と大学で変わったのは、やらされる練習ではなくなったのも大きいと思います。自分で研究したり、自分からこういう練習を取り入れたいと考えて取り組みました。監督が話を聞いてくれたのも大きかったですね。自分に足りないものは何か、自分の強みは寝技だから立ち技と寝技の連係を、といった話も親身に聞いてくれました。1人ひとり、それぞれの強みとかがあると思うんですけれど、それをしっかり見てくれる大学でしたし、和気あいあいとした部活だったので、それも頑張ることができたきっかけだったと思います」

■大学時代に今の自分の姿は「想像できていなかった」

 そういう意味では、自分に適した指導者や指導環境に出会えるかどうか、そういう進路を見出せるかどうかも大きいという。

 そして、こう続ける。

「やっぱり柔道が好きだ、というのが一番ですね。まだやめたくないという思いとか、柔道を取ったら(自分に)何が残るんだろうというか、自分の生活の一部になっていた部分を大学の時に感じて、柔道がなくなったら寂しいな、どうにか続けられる方法を、と思って今までやってきました」

 大学時代を成長の糧とし今日へと至った角田に、あえて後悔しているところがあるかを尋ねた。

「大学生の時は、あまり上を見ていなかったというか、今の自分のようになるとは想像できていなかったのと、最初は意欲もそこまでではなかったんですね。そうじゃなかったら、もっと早くから、もっといろいろな取り組みができたんじゃないかなと思うことはあります。今のほうが練習量も増えているし、いろいろなトレーニング方法にも取り組んでいますから」

 そして、こう続ける。

「でも諦めずにやってきて、まずオリンピックに出るという夢が叶いました。そういうところを学生の人たちにちょっとでも分かってもらえたらなと思いますし、受賞された方々は、自分よりもっと未来があると思います。絶対に壁とか、そういうものに当たることはあると思うので、そういう時も諦めずに頑張ってほしいと思っています」

 角田にとって、初めての大舞台は刻々と近づいている。

「近づいてくるにつれ、これで大丈夫かなとか、練習は足りているのかなと不安になることもあります。でも、できる限りの準備をして悔いなく臨みたいですね。31歳で初めてのオリンピックというのはけっこう遅いと思いますが、諦めずにやってこられたからかなと思うので、支えてくれた人たちにしっかり恩返しできるように、オリンピックでいい結果を残したいなと思います」(松原 孝臣 / Takaomi Matsubara)

松原 孝臣
1967年生まれ。早稲田大学を卒業後、出版社勤務を経てフリーライターに。その後スポーツ総合誌「Number」の編集に10年携わり、再びフリーとなってノンフィクションなど幅広い分野で執筆している。スポーツでは主に五輪競技を中心に追い、夏季は2004年アテネ大会以降、冬季は2002年ソルトレークシティ大会から現地で取材している。

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