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“欽ちゃん球団監督”片岡安祐美の今 2度の流産を経て母に…思春期の後悔「生理に見て見ぬふりを」

THE ANSWER / 2024年4月11日 11時34分

母になった片岡安祐美さんは今、茨城GGの男女チーム監督を務めている【写真:片岡祥】

■「THE ANSWER的 国際女性ウィーク」オンラインイベント出演インタビュー

 国連が「女性の生き方を考える日」と定めた3月8日の国際女性デーに向け、「THE ANSWER」は女性アスリートの今とこれからを考える「THE ANSWER的 国際女性ウィーク」を開催した。その一環として「“つながり”がつくる、私たちのニューノーマル」と題して行われたオンラインイベントに元女子野球日本代表でクラブチーム・茨城ゴールデンゴールズ(GG)監督の片岡安祐美さんがゲスト出演。イベント終了後はインタビューにも応じた。かつて“欽ちゃん球団”の選手兼監督として一世を風靡した片岡さんも37歳に。2度の流産を経て、2022年に第1子の長男を出産。育児に奮闘しながらも、今年茨城GGの女子硬式野球チームを創設。初代監督に就任し、1児の母として育児と仕事の両立させる「今」に迫った。(全2回の記事の第2回、文=THE ANSWER編集部・山野邊 佳穂)

 ◇ ◇ ◇

 37歳になった片岡さんは今年、新たなチャレンジに乗り出した。女子硬式野球チーム創設――。これまで務めてきた茨城GGの男子チームと兼任で初代監督に。長男はまだ1歳9か月で手のかかる年齢。しかし、それは長年思い描いてきた挑戦だった。

「子育てって、大変じゃない時がないじゃないですか。今やらなかったら一生やらない。子どもはどんどん大きくなっているのに私はこのまま? もしくは下がっていっちゃうのか。これではだめだと思って、自分発信のチャレンジもしなくちゃ、と。かっこいい母ちゃんでいたいので」

 身振り手振りで話す姿からは、充実感がひしひしと伝わってきたが、その裏に人知れぬ過去があった。

 小学3年生から野球を始め、常に男子選手に交じってプレー。「生まれ変わるなら男になりたい」「何で女の子は甲子園に出られないんだ」。葛藤を抱えながら、必死に白球を追いかけた。高校卒業後の2005年に萩本欽一さんが創設した茨城GGへ加入し、11年からは24歳の若さで監督を兼任。お茶の間のヒロインになった。

 31歳だった17年に元プロ野球選手の小林公太さんと結婚。子どもが欲しいと自然と思い始めたが、なかなか授かれなかった。ようやく妊娠しても、流産を経験した。それも、2度。1回目の流産は実感がなかった。2回目は胎児の心拍も確認していたが、産声を聞くことはなかった。

 グラウンドでは絶対に泣かないと決めていた強気な片岡さんも、日が経つにつれ、「いなくなっちゃったんだ……」と部屋で一人、涙がこぼれた。

「直接関係しているかは分からないですけど、子どもをなかなか授かれなかったのは、私が(月経を)見て見ぬふりをしすぎていたからだと思います」

 この日のイベントでは思春期に競技に没頭し、「女性に見られたくない」と思うあまり、無月経や月経不順など、自分の体を後回しにした反省を口にして、「月経の重要さを高校生の頃の自分に伝えたい」と言っていた。その言葉に、2度の流産で味わった苦労が滲んだ。

「高校生の頃、(月経が)来なくなっても、ちょっと遅れるくらい、いいやって。煩わしいものがなくて済む。だけど、母親に心配され、婦人科に連れて行かれ、ホルモン剤を飲まさて。副作用で1週間、吐き気を催しながら生理を起こした。将来はお母さんになりたかったけど、まだまだ何十年も先の話だろうという感覚だったから」

 20代後半の頃には、女性アスリートの先輩にも「いつか、子どもが欲しいなら婦人科に行きなさい。ピルを飲むなり対処した方がいい」と言われたが、自分事に受け止めなかった。今になって「本当に、なんであの時に私は言うことを聞かなかったのだろう」と後悔している。 

 それでも、ずっと変わらずに寄り添ってくれた夫や茨城GGの選手たちに支えられ、3度目の妊娠で長男を22年に出産。自分の体と向き合わず、苦労した経験があるからこそ、今は女性アスリートの友人や後輩に伝えていることがある。

「将来、子どもが欲しいなら婦人科に通いなさい。何かおかしかったら診てもらいなさい。でないと、私みたいになるから」


茨城GGは「強くて愛される球団でありたい」と片岡さんは語る【写真:片岡祥】

■周囲に支えられ、ママ監督として新たな一歩「強くて愛される球団でありたい」

 妊娠中や出産直後はチームに関わる機会が減った。「自分が戻る場所がなくなってしまうのでは」。世の中の女性と同じように、産後の社会復帰への不安も感じた。現在は平日のナイター練習には参加できないが、土日は長男を連れて、茨城まで車を走らせる。

「息子の機嫌がいい時は選手のお母さんたちが『見ているからいいよ。監督、ユニホーム着てきて!』って言ってくれて、ベンチに入る。機嫌の悪い時は抱っこ紐やおんぶ紐をした状態であーだこーだ話したり、子どもと遊びながらスタンドで“口だけ番長”をしたり」

 周囲に支えられ、バリバリのママ監督を演じている。

「野球をしている時間も子どもを預けてきている時は『おやつ食べ終わったかな』と考えるし、逆に子どもと遊びながらプロ野球ニュースが流れてくると『このタイミングの取り方、あの選手に合うんじゃない』と急に頭が選手たちの方に向くこともある。注意力散漫ですよね(笑)」

 出産も育児も仕事も、誰かの支えは不可欠。女性の働きやすさが取り沙汰される一方で、育児と仕事の両立に、後ろめたさを拭えない女性もいる。そんな時代で2つを両立する意義について「まだ分からないですね」と片岡さんは率直に明かす。

「『両立すごいですね』と周りの人は言ってくれるけど、できているのかも分からない。置かれている環境でやらないといけないこと、やりたいことと向き合って必死にやっている。ただ、息子が野球のニュース見ると投げ真似をしたり、『ママ! ママ!』と言ったりするのは嬉しい」

 24歳で歩み始めた監督人生。萩本さんに突然任され、「できっこないよ」と感じた当時から13年が経ち、新たな一歩を踏み出した。

「(女子チームは)思わず『よし!』ってガッツポーズをしたくなるような、球場を巻き込むことができるチーム、強くて愛される球団でありたい」。かつて女性に生まれたことを悔やみ、さまざまな悲しみを乗り越えた「かあちゃん」の挑戦は、女性の未来を照らすはずだ。(THE ANSWER編集部・山野邊 佳穂 / Kaho Yamanobe)

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