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SNSに流れる「あの子、太ったね」傷つく女子選手 鈴木明子が警鐘鳴らすフィギュア界の新たな課題

THE ANSWER / 2024年4月9日 11時53分

インタビューに応じ、イベントの感想を語る鈴木明子さん【写真:片岡祥】

■鈴木明子さんが「THE ANSWER的 国際女性ウィーク」オンラインイベント第1部に出演

「THE ANSWER」は3月8日の国際女性デーに合わせ、さまざまな女性アスリートとスポーツの課題にスポットを当てた「THE ANSWER的 国際女性ウィーク」を今年も展開。その一環として3日に3部制で行われたオンラインイベントのMCとしてフィギュアスケートでソチ五輪に出場した鈴木明子さんが出演した。「月経とコンディショニング」テーマに、ゲストに一般社団法人「スポーツを止めるな」の「1252プロジェクト」リーダーとして月経問題を第一線で発信している元競泳選手・伊藤華英さん、講師に日本体育大学で女性アスリートのためのコンディショニングを研究している須永美歌子さんを迎え、ディスカッションを交わした。イベント後、鈴木さんは取材に応じ、スポーツ界の月経問題の認知の広まりやフィギュアスケート界の課題について語った。(取材・文=THE ANSWER編集部・神原 英彰)

 ◇ ◇ ◇

 鈴木さんは「THE ANSWER」などで、月経不順や摂食障害を現役時代に経験したことを早くから発信。「THE ANSWER的 国際女性ウィーク」のオンラインイベントには第1回の2021年にゲスト出演し、3年ぶりの登場となった今回はMCとして、伊藤さん、須永教授と議論を交わした。この3年間で「月経とコンディショニング」の認知も広まり、女性アスリートが自身の体験を発信し、さまざまなメディアが取り上げている。鈴木さんは「ちょっとずつ世の中も変わってきました」と変化を実感する。

「『鈴木さんが発信したから私も月経の経験を話そうと思った』というアスリートの方もいて嬉しさはあります。でも、当初は『よく発信したね』と褒められることに違和感がありました。褒められているようじゃダメ。これが当たり前になっていかないといけないし、(発信を)続けていかなければいけないと今日、改めて思いました」

 今回のイベントでは、須永教授が調査した内容として、月経によるコンディションの不調を感じる選手が多数いる一方で、全く感じない選手も少なくないとのデータが目に留まったという。鈴木さんは「生理は本当に個人差があるものと実感したと同時に、体のむくみが起きたり、体重が変動したりと考えると、女性アスリートが本当にベストな時期は1か月に1週間あるかないか。五輪などのここ一番で力を発揮することはとても難しい。だからこそ、しっかりと向き合っていくことが大事」と言う。

 フィギュアスケート界の良い変化も実感しているという。かつては「生理は競技にとって邪魔なもの」と選手もコーチもとらえる風潮があった。しかし、最近に体験した例として、あるクラブのコーチに「選手の調子はどうですか?」と鈴木さんが聞くと、「今は生理中で」という答えがあった。選手は月経を指導者に伝え、指導者も体調管理や指導内容を工夫している様子が伝わってきた。「生理があることは当たり前と受け入れた上で向き合っているのは、すごく大事なこと」と鈴木さんも頷く。


鈴木さんのまなざしはスポーツ環境のより良い未来に向けられている【写真:片岡祥】

■シニアの年齢引き上げで競技環境に変化

 とりわけ、フィギュアスケート界の課題だったのは選手寿命。体の軽さを武器に高難度のジャンプを連発し、15~16歳の選手が活躍する一方、体型変化が起こると跳べなくなり、10代後半に苦しみ、引退に追い込まれる例が多い。月経不順や摂食障害などの健康障害もある。2024-25年シーズンからシニアに上がる年齢を従来の15歳から17歳に引き上げるルール改正が決定。鈴木さんは「競技をトータルパッケージで考えられるようになり、指導者も変わって来る」とポジティブに受け止めている。

「17歳であれば通常は初経を迎え、体も大人になり始めている段階。指導者もジャンプだけを教え込むのではなく、シニアになっても活躍できるように基礎を大切にする。健康という意味でもすごく良いこと。スポーツはどんどん技術を上げることが正解という意見もありますが、技術と芸術のバランスがフィギュアスケートの美しさだと私は思います。選手もジャンプが跳べないからもうダメなんだと諦めるのではなく、自分の武器や個性を磨いて、選手生活を楽しむことができたらいいですね」

 もちろん、課題がないわけではない。ひとつ、懸念されるのはフィギュアスケートの女子選手に対する体型へのSNSの反応。ファンが悪気なく、「あの選手、太ったね」などと投稿したことが、選手の目に留まる。まだ精神的に未成熟な10代が活躍するフィギュアスケートは、他のスポーツに比べて、選手のメンタルに影響を及ぼす可能性がある。鈴木さんも「特に若い選手は真正面から受け止めて傷ついてしまい、摂食障害につながる恐れもある。これは問題だと思っています」と危惧している。

 多様性が叫ばれる時代。「体形も個性であっていい」というのが鈴木さんの考え。「体形のことは何より自分が一番分かっている。にもかかわらず、周りに言われてしまうと余計に影響が大きい。見ている方も選手を守るために軽はずみな弾みを控えてほしい」と願う一方で、選手たちに向けても「自己防衛も大切。不必要な声に触れないよう、見なくてもいい。SNSとの付き合い方もこの時代だからこそ必要」と諭した。鈴木さんのまなざしは、常にスポーツ環境のより良い未来に向けられている。(THE ANSWER編集部・神原 英彰 / Hideaki Kanbara)

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