“2軍新球団”が追いかける2つの成功 NPB復帰目指す元侍・薮田和樹に指揮官「もったいないな」
THE ANSWER / 2024年4月22日 20時3分
■元広島の薮田和樹、新球団オイシックスで先発の一角を担う
今季からプロ野球の2軍は、2球団増えた14球団で行われている。新潟を本拠地に参加するオイシックスは、昨季独立のBCリーグで戦ったチームに、NPBを戦力外となった選手も復帰を目指し加わった。広島で2017年に15勝を挙げ、日本代表「侍ジャパン」に選ばれた薮田和樹投手もその1人。ここまで、先発の軸として試合を作っているものの、橋上秀樹監督はNPBに戻るためには別のやり方も必要だと口にする。チームと個人、それぞれのアピールが必要になるオイシックスならではの事情がある。
オイシックスはシーズン途中のNPB復帰を目指す選手たちと、秋のドラフト指名を目指す選手から構成される。チームスポーツである以上、勝利は大きな目的となるが、それに負けないくらい求められるのが選手個々の技量のアピールだ。
20日、千葉県の鎌ケ谷スタジアムで行われた日本ハム戦に先発した薮田は5回2失点。チームが0-3で敗れた中で試合を作ることはできた。開幕から6試合に投げ0勝2敗と白星こそついていないが、試合は作っている。だが、橋上監督はその先を見ている。今のままでは、NPB復帰という目標が難しくなるというのだ。
「もう1回投球スタイルを見つめ直す必要もあるんじゃないかな。もったいないと思うんだよね」
個人の目標を達成するには、今と違うことをするべきではないのかという。「普通に150キロを出せる投手なんだから。今はカットボールやツーシームの割合が多くなっているけど、それで2軍を抑えてもNPBの評価はなかなか上がらない」。他チームとの戦力差は否めず、オイシックスはここまで負けが大きく先行している。薮田の投球は勝つための選択とも言えたが、あえて選んだ言葉だ。
ネット裏には、複数球団の編成担当が顔をそろえた。言ってみれば、毎日がショーケース。NPBの新戦力獲得期限となっている7月末までに“欲しい”と思わせるモノを見せなければならない。その際の基準になるのは、ふだん投げているファームではなく1軍だ。そこでやれる武器を見せなければ、復帰はかなわない。
昨秋の12球団合同トライアウトでも投げた鎌ケ谷に登場した薮田
■チームと個人の狭間で…薮田が口にしたNPBとは異なる責任感
この日の日本ハムのスタメンには、経験の浅い育成選手も多く並んだ。橋上監督は続ける。「この相手なら、フォーシームでビシッと抑えられないと。(NPBに)戻るためには、8割ストレートでもいいかもしれない。そうすればリリーフという見方もできる。フォーシームとツーシームの割合を逆転させるくらいでいいかもしれないな」。
薮田も「立ち上がりは感覚が良くなくて…。ストレートが上がってくれば、もっと行けると思うんですけど」と、この日の投球スタイルは次善の策だと位置付けている。そして薮田に、シーズンが始まってから感じた“2軍球団”ならではの部分を聞くと、少し考えた末に口にした。
「1軍がないので、ここで活躍しても昇格していくことがない。その中で先発で回らせてもらっています。出ている僕たちの、出られない選手に対する責任は、広島にいる時より大きいかもしれません」
1軍がある12球団の2軍には、1軍から再調整で来ている選手やいわゆる“1.5軍”といった1軍定着寸前の選手もいる。彼らは2軍にいるときは主力の座を占めるが、好成績を残せば1軍に上がっていく。その循環がないオイシックスでは、試合に出続ける選手が勝敗に対して負う責任が大きくなるというのだ。
シーズンを盛り上げ、経営を成り立たせるには、勝敗を度外視するわけにはいかない。個人がNPB球団に能力をアピールするには、相容れない部分もでてくる。球団のユニークな立ち位置に起因する難しさを今後、選手たちはどう消化していくだろうか。(THE ANSWER編集部・羽鳥 慶太 / Keita Hatori)
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