コロナ禍の今こそ考えたい「ジェンダー格差」
LIMO / 2020年11月28日 21時0分

コロナ禍の今こそ考えたい「ジェンダー格差」
昨年の今頃を思い返して見ると、翌年に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックが起こるなど、誰もが予想できなかったでしょう。
この思いがけないコロナ禍にあって、従前から社会的に弱い立場の方々には、格差の広がり等による深刻なダメージが懸念されています。前回は教育格差について見ていきました。今回は日本国内でも最近取り上げられることの多い「ジェンダー格差」について考えていきます。
コロナ禍以前から根深く存在するジェンダー格差
ジェンダー格差は、日本国内においても従前から根深く存在しています。以下のグラフは国ごとに男女の賃金格差を示す”Gender wage gap”です。こちらをご覧いただくと、日本と韓国の数値が、他国と比較して相対的に高いことがわかります。
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また、日本と韓国の2国は、以下のグラフ「女性の年齢階級別労働力率の推移」をご覧いただくと、20代後半~30代にかけての数値の落ち込みによるM字カーブが特徴的です。この特徴は欧米諸国などでは見られません。
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日本と韓国においても、従前からの「男性は仕事、女性は家庭」というステレオタイプの意識はさすがに徐々に薄れてきているでしょう。しかしながら、子育てをしながら就労する社会環境が十分には整っていないため、結果的に女性が家庭を優先せざるを得ず、「非正規雇用」のキャリアを選択するケースが多いのが現実です。
日本国内における男性の非正規雇用の割合は、2014年において平均で約22.6%ですが、女性は平均で約55.6%に上ります。日本国内では、こうした子育てをしながら就労する社会環境の不整備による雇用形態の違いから、ジェンダー格差が大きくなっていると考えられます。
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コロナ禍で深まるジェンダー格差
国連によると、看護師の85%以上、人間開発低位国グループ(※)を除くすべての国グループで医師のほぼ半数が女性であり、医療現場の最前線に立っている女性が多いといえます。これは、日本国内に居る私たちからすると、意外と思われるかもしれません。それは、日本国内の看護師の約90%以上が女性である一方、医師は約20%しか女性がおらず、この数値はOECD加盟国の中で最下位だからです。
※ 人間開発低位国グループとは、保健・教育・所得という人間開発の3つの側面に関して、ある国における平均達成度を測るための簡便な指標である人間開発指数(HDI)に基づき、各国を相対比較して最高位国、高位国、中位国、低位国に4分類したうちの低位国に位置するグループのことです。
先ほどお伝えした従前から根深く存在するジェンダー格差を背景に、コロナ禍は女性に対して、より深刻なダメージを与えてしまうことが懸念されています。
IMFは、世界的に落ち込みの著しいサービス業、観光業などの業界に従事している女性の割合が、男性よりも高いことから、女性の失業率が相対的に高くなっていることを指摘しています。また、非正規雇用の労働に従事する女性が多いため、そうした女性たちが今般の経済停滞によって貧困に陥るケースも指摘されています。
コロナ禍の最中、ジェンダー格差が相対的に小さい欧米においても、女性への経済的弊害が大きいことから、”recession(不況)”になぞらえて、”She-cession”という造語まで使用されるようになっています。
誰もが暮らしやすい未来のために今できること
ジェンダー格差の原因はどこにあるのでしょうか。生物学的な差異を超えて、社会的および文化的に形成される「ジェンダー差別」が、根本的な原因として指摘されています。
私たちの周りには、ジェンダー差別の他にも様々な差別が存在します。直近では、COVID-19感染者や医療従事者の方たちに対する差別が、世界的に話題に上ることも散見されています。こうした社会通念上つくられる差別を即時に撤廃し、完全な平等を実現するのは実質不可能といえるでしょう。
しかし、社会的に立場の弱い方々も含め、すべての人ができる限り自由に人生を選択できる公平な仕組みを構築していくことは、たとえ漸進的であっても世界的に不断の努力を続けていく必要があります。
コロナ禍にある現在、企業なども急激な変革を求められています。リモートワークの普及は、働き方や成果の測定軸を変え、ジェンダー格差の低減に資するかもしれません。これまで評価されてこなかった能力を持つ人材が評価され、雇用の間口が広がる可能性もあります。
逆風にある今こそ、ありきたりな言葉でいえば「ピンチをチャンスに変える」ための、地道な前進を続けていきましょう。
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