ガソリン車よ、さようなら! EV急拡大にも懸念と課題

LIMO / 2021年3月6日 18時55分

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ガソリン車よ、さようなら! EV急拡大にも懸念と課題

脱炭素化に向けて

今、「脱炭素」の潮流が世界を駆け巡っています。我が国も、菅政権誕生後「温室効果ガス2050年実質ゼロ」が宣言されました。これを契機に、にわかに脱炭素の風向きが大きく変わり、官民一体の動きが加速化しています。

とはいえ、日常の生活の中で脱炭素を身近なものとして捉え難いのも事実でしょう。本稿では、毎日の生活に欠かすことができない自動車を例に、脱炭素への道標を探ります。

日本のCO2排出量と運輸部門の占める割合

日本政府は昨年末、欧米や中国の発表に遅れて、2030年半ばに軽を含む乗用車の新車販売からガソリン車をなくすと宣言しました(商用車についても、乗用車に準じて本年夏までに検討を進める方針)。

炭化水素(炭素と水素からできている有機化合物)であるガソリンを燃やして走る車ですから、当然ながら二酸化炭素・CO2が排出されます(燃焼は化学反応で、有機化合物が燃えると最終的にCO2と水になる)。このCO2が地球温暖化の原因物質の一つであることは、よく知られています。

日本のCO2排出量はというと、2018年度における総排出量は11億3800万トン。そのうち、運輸部門(自家用車、バス、貨物車、鉄道、航空など)からの排出量は18.5%(2億1000万トン)、自動車全体では運輸部門の86.2%(日本全体の15.9%)、うち、旅客自動車が運輸部門の49.6%(日本全体の9.2%)、貨物自動車が運輸部門の36.6%(日本全体の6.8%)を排出しています。

このCO2をどう削減するか、日本の自動車メーカー各社は、ハイブリッド車(HV、ガソリンと電気併用)、プラグインハイブリッド車(PHV、充電可能)、電気自動車(EV、電気で走行)へと開発を加速させています。

ガソリン車から電気自動車へ、各国の動き

英国では、2030年までにエンジン車の新車販売禁止、2035年にはHVも禁止する方針を打ち出しました。またEUは、運輸部門からのCO2排出量が全体の25%を占めるため、大胆な対策が欠かせないと判断。2030年までにEVや燃料電池車(FCV、水素で発電して走行)を少なくとも3000万台普及させる目標を掲げています。

さらに、CO2排出削減が遅れていた米ゼネラル・モーターズ(GM)が商用車を含む全車種で脱炭素の取り組みを加速し、2025年までに30車種のEVを投入すると発表。2035年までにHVを含むエンジン車を全廃する方針を公表しました。

トヨタ自動車も2020年代にEV10車種を投入、日産自動車は2023年度までに8車種以上のEVを投入する計画を立てています。

今後の市場はどうなるでしょうか。2020年に世界で販売されたEVは184万台で全体の2.8%、それが2030年には1571万台で全体の16.2%に伸びると予測されています。

EV専業の米国テスラは、1月末、2022年までの年間販売台数が2020年比で2倍の100万台超になるとの見通しを示し、EVの市場争奪戦が本格化しています。IT大手の米国アップル社もEV開発に参入すると報道されるなど、シェア拡大競争が過熱しそうです。

EV導入で懸念される問題点や課題

このように、ガソリン車からEVへのシフトが加速していますが、発電手段によってはCO2削減にはならない可能性もあります。

我が国のCO2の4割は発電部門から排出されます。現在の電源構成は、天然ガス34.4%、石炭31.2%、再生可能エネルギー18.6%、石油7.1%、原子力6.6%、その他7.1%であり、圧倒的に比率が高いのが火力発電です。

EVに切り替えることは結構なことですが、それだけ電気を使うことになります。その結果として、これまで以上に火力発電に頼るようになると、CO2削減に逆行することになってしまいます。

我が国で1年間に販売される乗用車、約400万台を全てEVに切り替えた場合、電力使用のピーク時に電力不足になるとの指摘もあります。また、急激なEV化は、エンジンや部品メーカーなど関連産業に甚大な影響を及ぼしかねません。さらに、当然ながら石油関連事業、ひいては原油産油国にも大きな影響を与える問題を孕んでいます。

また、EVの欠点の一つは走行距離が短いこと、また急速充電や高機能性電池が必要なことも課題でした。リチウム電池は確かに優れていますが、コバルトが使われており、枯渇の問題があります。

そんな中、EVの次世代基幹技術として本命視されているのは全固体電池(液体の電解質などを用いない固体材料で作った電池)で、実用化の動きが加速、2020年代前半にトヨタが搭載車を販売する計画です。

今後は、数百万回の充放電に耐えられる物理電池・スーパーキャパシタと走行中の給電を可能とするワイヤレス給電(道路の電化)の技術開発にも期待したいところです。

EVは家庭用蓄電池にも

ところで、EVにはガソリン車にはできない使い方があります。一般的に自家用車は止まっている時間が長く、その間は何の働きもしませんが、EVは家庭用蓄電池としても使えます。安い夜間電力をEVに充電し、昼間使うと電気代の節約につながるというわけです。

1世帯当たりの1日の電気使用量は、家庭によって若干の差はあるでしょうが、約10キロワット時とされています。現在は蓄電池容量62キロワット時、航続距離約400キロの車が登場していますが、このEVの場合、災害時などには約1週間分の非常用電源になります。

EVはガソリン車に比較して価格が高いものの、国や自治体が普及促進のために補助金制度を拡充させています。また、EVから住宅に電気を送るにはそれなりの設備が必要になりますが、これにも国と自治体からの補助金が利用できるそうです。これだとガソリンを使用せず、電気代も節約できることになります。

FCVの開発も忘れずに

EVの普及には、上述のように解決しなければならない課題がありますが、最も大事なことは必要な電力確保です。化石燃料によるエネルギー獲得を捨てなくてはならず、かといって原子力発電を継続することにも賛否両論があります。

残されているのは、風力発電、水力発電などの再生可能エネルギーですが、忘れていけないのは、未来のエネルギーである水素です。この水素を使って走るFCVの普及も忘れてはなりません。これについては稿を改めて考えてみましょう。

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