年収1500万円以上世帯の教育費は月額いくらか。学力格差は拡大の一途へ
LIMO / 2021年6月16日 19時35分
年収1500万円以上世帯の教育費は月額いくらか。学力格差は拡大の一途へ
新型コロナウイルスの感染拡大によって引き起こされた経済の停滞。ワクチン接種が進んでいる欧米からは経済活動再開という明るいニュースも聞こえてきますが、変異種の脅威もあり、手放しで喜ぶのはまだ早そうです。
景気が悪くなれば家計支出にも影響が出ますが、中でも教育費は直撃を受けやすい項目の一つ。しかし、コロナ禍以前の教育支出額と比べてみると、全ての年収世帯で減少しているというわけではないようです。
高所得世帯の教育費はコロナ禍でも”安泰”?
大都市圏を中心に中学受験が年々加熱し、地域間格差が出てきていることが取り沙汰されています。それと同様に影響が大きいのが所得による教育機会の格差です。
総務省の「家計調査(家計収支編)2020年(令和2年)平均」によると、勤労者世帯の教育支出の全体平均は1万6548円。前年(2019年)の1万8529円から約1割減となっています。
年収階級別に見てみると、たとえば年収450万円~500万円の世帯では1カ月平均7413円ですが、階級が最も高い年収1500万円以上の世帯では4万2044円。
この2つの年収階級の月あたりの教育費の差は6倍近くあるということになります。しかも、2018年、2019年の差は約5倍でしたから、2020年には差が広がったという結果になっています※。
ただし、ひと口に教育費といっても注意が必要です。家計調査の教育支出は「授業料等」「教科書・学習参考教材」「補習教育(学習塾の月謝等)」の3分類から成り立っています。
このうち授業料等は2020年度より私立高校無償化制度が拡充したこともあってか、幅広い年収層で前年より減少となっています。では、教育費の中でも経済状況の影響を受けやすい「補習教育(学習塾の月謝等)」で年収による違いは出ているのでしょうか。
※2020年の集計世帯数は、年収450万円~500万円:275、年収1500万円以上:116
学習塾の月謝など補習教育費が減った年収層は?
年収1000万円以上の勤労者世帯のなかで、補習教育支出の上昇が目を引くのは1250万円~1500万円の層で、前年の1カ月あたり7233円より約2500円増加した9741円。
1500万円以上の世帯では前年に比べて100円程度の微減であったものの、月あたりの額は1万2995円と、ずば抜けた高水準で推移。ちなみに2020年の補習教育支出の全体平均は4381円です。
一方、最も大きく減少したのが年収800万円~900万円の世帯。2019年の1カ月平均の補習教育費は6723円でしたが、2020年は4860円にまで落ち込んでいます。
世間的には余裕のある年収と見られる世帯であっても、コロナ禍によるボーナスカットやリストラなど、不安材料が多い状況では影響を免れないということなのかもしれません。
課金ゲーム化している教育費
世間では「教育費をかければかけるほど子どもの学力は伸びる」という考えが広がっているようで、ソニー生命の「子どもの教育資金に関する調査 2021」によると、子どもの学力や学歴は教育費次第だと考える親は約6割。
コロナ禍での臨時休校の際も、オンライン授業などで私立学校と公立学校のサポートの違いが取り沙汰され、何か事が起きたときには私立学校の方が学ぶ環境が整備されているという認識も広まりました。もちろん、一部の公立学校でも先進的な取り組みを行ってはいますが、広く全国に広まるまでには至っていません。
三菱UFJリサーチ&コンサルティングの調査「臨時休校中の子どもの学習状況」の結果でも、世帯年収1000万円以上の世帯では休校時も通信教材やオンライン授業を行っている塾を利用したり、パソコンから教材をダウンロードして印刷をする割合が多くなっています。
同調査の結論では「世帯年収の高い家庭ほど、学校からの課題に加え、学習塾やオンライン学習コンテンツなど多様な資源を活用している」とされ、高所得世帯では様々な手段で子どもの学習時間維持を図っていることがうかがえます。
その一方で、ネット環境の整備やパソコン、プリンター購入がままならない世帯では学校から配布された教材で勉強するしかないのが現実。昨年の臨時休校中には、経済状況によって学習時間や勉強量に違いが出たのではないかと懸念する親も少なくなかったようです。
実際に筆者の周囲でも、オンライン対応をしている塾に駆け込んだ家庭もありました。また、筆者の子どもたちが通う小学校で休校明けに前学年に習った漢字の抜き打ちテストが行われた際、出来る子と出来ない子の差がこれまで以上にあったり、算数の計算力が一部の子を除くと全体的に落ちていたという話も聞こえてきました。
所得差による学力格差は拡大の一途
上記のように、コロナ禍でも高所得世帯では以前とあまり変わらない教育費を投入していることがうかがえます。事態が収束に向かい経済状況が好転しない限り、ますます教育費を削る世帯が増加し、所得差による学力格差が拡大の一途を辿ることは避けられないかもしれません。
このまま経済力の違いを発端とする学習機会の差、そして学力格差が見過ごされていけば、学歴の固定化が進み、かつてのような”苦学生が逆境を乗り越えて社会的に成功する”という話は完全に過去の遺物になってしまいそうです。
参考資料
家計調査(家計収支編)2020年(令和2年)平均(https://www.stat.go.jp/data/kakei/sokuhou/tsuki/index.html#nen)(総務省統計局)
子どもの教育資金に関する調査 2021(https://www.sonylife.co.jp/company/news/2020/nr_210302.html)(ソニー生命保険株式会社)
臨時休校中の子どもの学習状況(https://www.murc.jp/wp-content/uploads/2020/05/survey_covid-19_200519.pdf)(2020年5月、三菱UFJリサーチ&コンサルティング)
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