iDeCoの4つ常識・非常識!50代は手遅れ?専業主婦は無意味?
トウシル / 2019年11月30日 7時0分
iDeCoの4つ常識・非常識!50代は手遅れ?専業主婦は無意味?
iDeCoの常識を疑う
2017年から加入対象者が広がったiDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)は、着実に加入者が増えているようです。2019年9月末時点では138万人ですから、企業型加入者の720万人には、まだ遠く及ばないものの、2016年末時点で30万人程度の加入者がその後の3年あまりで5倍近く増えているというのは驚くべきペースと言って良いでしょう。
しかしながら、iDeCoに関しては、まだまだ多くの人が誤解している部分がたくさんあります。素人の人であればともかく、お金のプロと言ってもよいFP(ファイナンシャル・プランナー)の人の中にも間違った常識を持っている人がいます。これらの間違った常識について、今後の法律改正の動きも踏まえてお話したいと思います。
1.50代でも加入するのは決して遅くない
最初は加入年齢についてです。iDeCoは現時点では加入できる上限年齢が60歳です。したがって、50代に入ってしまったら加入できる期間がとても短いために、あまり積み立てることができず、メリットは小さいと考えられています。加えて、加入期間が10年以上ないと、60歳から引き出すことができない、ということからもう50代は手遅れで入ることができないという人もいます。しかし、これは必ずしも正しくないと私は考えています。
理由の一つ目は、現在加入年齢の上限を65歳まで引き上げるということが厚生労働省の社会保障審議会で議論されているからです。
自営業の場合は、国民年金の加入年齢引き上げとセットになっているため、実現に向けたハードルは少し高いように思いますが、サラリーマンの場合は企業型も規約によっては65歳まで加入可能。
つまり、iDeCoについても65歳までの加入が実現する可能性は高いと言えます。さらに、60歳から受け取れないということについても、多くの企業では65歳までの再雇用で働く人が増えていることを考えた場合、今後は60歳で引き出す人ばかりとはならないだろうと思います。したがって、必ずしも50代だからiDeCoに加入するのは意味がないとは、言えません。
2.専業主婦(主夫)が加入することも無意味ではない
iDeCoの最大のメリットは「掛金が所得控除になる」ことだと思います。したがって専業主婦(主夫)や厚生年金に加入せずにパートで働く主婦は収入があっても所得がないから、そのメリットを享受できないので、加入する意味がない、ということもよく言われます。
事実、iDeCoの加入者138万人の内、専業主婦である3号被保険者の数はわずか4万人あまり。ところが、iDeCoのメリットは所得控除だけではありません。運用益非課税や低コストの投信での運用、そして何よりも60歳までは引き出せないという制約があるからこそ、老後資産形成には最も適していると言えるのです。
だとすれば、専業主婦だからと言って老後資金をすべて夫の収入からの積み立てに頼るのではなく、自身のパート収入の中から老後資金を積み立ててもいいでしょう。
その場合、他の手段よりiDeCoの方が優れています。仮に30歳から、専業主婦の上限金額2万3,000円を毎月のパート収入の中から積み立てていけば、積立総額は60歳の時点では828万円になります。仮に年率2%で運用できた場合、元利合計は1,133万円となります。
しかも受け取る場合には退職所得控除が適用されるため、30年間積み立てたなら受取額に対して税金はかかりません。夫が定年になった時に受け取る退職金に対して、こちらは妻が受け取る退職金と考えてもいいのではないでしょうか。
所得控除があろうがなかろうが、老後資金をこしらえるのであれば、やはりiDeCoが最も適切な方法であることは間違いありません。だから決して専業主婦だからといって意味がないわけではないのです。
3.口座手数料だけで判断してはいけない
iDeCoに加入する場合、まずやらねばならないのは、どこの金融機関(運営管理機関)を使うかということです。多くのマネー誌でも金融機関選びの記事が出ていたりしますが、その場合、選ぶ基準の最初に出てくるのが「口座手数料」が無料かどうかということです。もちろん口座手数料は加入者にとってのコストですから安い方が良いし、かつ無料であるのならそれに越したことはありません。
しかしながら、最近は多くの金融機関で運営管理機関の口座手数料は無料化されており、その数は2019年10月末時点では、14社もあります(参考:NPO法人 確定拠出年金協会「iDeCoナビ」)。
口座手数料は定額ですから、残高が増えても金額は変わりませんが、投資信託で運用する場合の信託報酬(運用管理費用)は残高が積みあがっていくと、当然その金額も増えます。したがって、なるべく信託報酬の率の低い商品を選ぶことが大事で、そういう商品がラインナップされているかどうかは重要な要素です。
加えて、長期にわたる制度ですからコールセンターやWEBといった加入者インターフェースの良し悪しや将来の給付のバリエーションも重要なポイントとなります。何せ年金は受け取る時が一番大事です。税や働き方を考慮して受け取り方のバリエーション、すなわち選択肢が豊富かどうかはきわめて大切です。
4.企業型加入者だからiDeCoには入れない?
これは、残念ながら、現時点ではその通りです。もう少し正確に言うと、従業員拠出(マッチング)をやっているとiDeCoに加入することができません。では従業員拠出の制度がない企業であればどうかと言うと、法律的には可能ですが、そのためには規約を変更して会社側の拠出額を減らさなければならない場合が出てきます。
したがって、労使合意を得るのはほぼ不可能であるため、企業型確定拠出年金を導入している会社に勤めている人はiDeCoへの加入は事実上無理と言ってもいいでしょう。
しかしながら、現在、厚労省の社会保障審議会で議論されています。従来のルールを変更し、企業型の上限の範囲内であれば、その枠に達するまでは、個人がiDeCoに加入して拠出することを可能にしてはどうか、という案があります。「穴埋め方式」と言われている方法で、実現するかどうかは未定ですが、そうなれば企業型加入者もiDeCoに加入することが可能となるでしょう。
もちろん、これについては様々な意見があり、マッチングをもっと充実させるべきだという考え方もありますが、使っていない枠を使えるようにするということには一定の合理性がありますので、今後の動向には注目する必要があります。
このように一般的に言われていることや常識とされていることも少し突っ込んで考えてみると、必ずしもそれが正しいかどうかは疑問です。特にiDeCoの場合は、長い間ほとんど存在感がなかったものが、この数年で急速に拡大をしてきました。
今後も制度が改訂されていく可能性はあり、使い勝手の点でも一層の改良はおおいに期待できるかと思います。iDeCoの上手く使い老後資金を貯めながら、今後の動向にも注目していきましょう。
(大江 英樹)
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