投資格言「頭と尻尾はくれてやれ」を効果的に実践する方法
トウシル / 2021年5月13日 11時30分
投資格言「頭と尻尾はくれてやれ」を効果的に実践する方法
「頭と尻尾はくれてやれ」とはどういう意味か?
株式投資の世界では、昔から語り継がれている有名な投資格言というものが数多くあります。これらは現代でもとても示唆に富み、参考になるものばかりで、ぜひ個人投資家の皆さんにも知っておいてもらいたいものです。
今回ご紹介する「頭と尻尾はくれてやれ」も極めて有名なものです。株価が底を打って天井をつけるまでの動きを魚に見立てます。
底で買って天井で売る、つまり魚の頭から尻尾まで1匹まるごと食べるのが最も理想的です。ところが実際に株式投資をしてみると分かりますが、底値で買って天井で売ることなど、まずできません。
頭も身の部分も尻尾も全て食べようとすると、結局はうまくいかない、だから頭の先(=底値)で買おうとか尻尾の先(=天井)で売ろうとは思わないようにしよう。底値を確認してから少し高いところで買い、天井を確認してから少し安くなったところで売れば十分だ、ということをこの格言は表しているのです。
初心者が陥りがちな誤った考え方とは
ただ、株式投資を始めたばかりの初心者の方はこの投資格言を聞いてもおそらくピンとこないと思います。だから底値で買い、天井で売ることを無意識のうちに目指してしまいます。
でも、これは誤った考え方であることが、実際に株式投資をしてみるとすぐ分かると思います。
何しろ、底値だと思って買ったらさらに株価は下がってしまう、天井だと思って売ったらさらに株価は上がってしまう……という事態が続出してしまうはずだからです。
ですから、まずは「底値で買おう」「天井で売ろう」とは思わず、多少高くなってから買えばよい、売るのも少し下がってから売ればよい、と割り切ることが重要です。
底打ちが確認できてから買う
「頭と尻尾はくれてやれ」という意味は何となく分かったと思いますが、具体的にどうしたらよいかを知らなければ、実践で活用できません。その方法をこれから説明します。
頭と尻尾はくれてやれ、というのは、言い換えれば「株が下がっている途中に買わない」「上がっている途中に売らない」という意味です。ですから逆張りではなく順張りをしましょう、ということです。
多くの個人投資家は逆張りをしています。株価が大きく下がると「今が買い時だ!」と買い向かう人が多くいます。その後ほどなくして株価が反発すればよいのですが、本格的な下げ相場になると、買ったあとにさらに大きく株価が下がってしまうことがよくあります。
どんなに株価が大きく下がったとしても、下がっている途中はまだ底値は確認できていないのです。底値が確認できるのは、例えば25日移動平均線を下回ってずっと下げ続けていた株価が下げ止まって反発に転じ、25日移動平均線を上回ったタイミングです。
株というものは、時に私たちの想像をはるかに超えた動きをします。さすがに下げ過ぎだろうと思うところからさらに大きく下がることもあるのです。
ですから株価が大きく下がって魅力的な株価水準になったとしても、株価が下げ止まって上昇に転じるまでは手を出さないようにするべきというのが筆者の考えですし、筆者は実際そのようにして大失敗を回避してきました。
売るのも天井が確認できたらが原則
持っている株を売るときも同様の考え方です。株価が上昇している途中に「そろそろ天井だろう」と思って売ると、そこから株価がさらに2倍、3倍と上昇して悔しい思いをすることが多々あります。
「頭と尻尾はくれてやれ」の解釈として、株価が上昇している途中に欲張らずにほどほどの利益で売るべきだ。そこから株価がさらに上がったとしてもそれは尻尾の部分だからくれてやればよい、という説明をよく見かけます。しかし筆者はそれとは異なる見解です。
どこまで下がるか分からないのと同様、どこまで上がるか分からないのも株の特徴です。いったい誰が、2020年3月のコロナ・ショックで安値を付けた後、日経平均株価があっという間に3万円の大台を突破すると予想できたでしょうか。
ですから、株価が上昇している途中に「尻尾はくれてやれ」と思って売却すると、尻尾どころかほとんど身の部分すら食べることができなかった……という羽目になりかねません。
「利食い千人力」という言葉もありますから、利益を確保すること自体はとても重要なことです。でも、株価が上昇している途中に保有株を売るのであれば、株価がそこから仮に3倍、5倍、10倍になったとしても後悔しない、という気持ちをもって実行するようにしてください。
底値や天井でない可能性が高まったらどうするか
このように、底値を確認できてから少し高いところで売る、天井を確認できてから少し安くなったところで売る、というのが「頭と尻尾はくれてやれ」の実践法です。筆者はこれを「25日移動平均線超えで買い」「25日移動平均線割れで売り」というルールを用いて日々実践しています。
ただ、実際は「底値かと思ったらまだ底値ではなかった」「天井かと思ったらまだ天井ではなかった」というケースも多々起こります。このことに備えた対処法も必要となってきます。
例えば、底値に到達したと思って底値から少し株価が上昇したところで買った場合、底値と思っていた株価を割り込んだなら、まだ株価は底打ちしていなかったことになるため速やかに売却すべきです。
もし、25日移動平均線超えで買った場合、25日移動平均線が底値(と思っている株価)からかなり上(例えば10%以上)である場合は、底値を割り込むのを待っていると損失が大きくなってしまうので、25日移動平均線を割り込んだら売却、とするなどして損失が膨らまないようにするとよいでしょう。
まだ底割れしていないうちに行動するので少しフライングになってしまいますが、損失を拡大させないためにはこのやり方のほうが安全です。
また、天井に到達したと思って売却した場合も同様です。天井と思っていた株価を超えて上昇したら、まだ天井ではなかったことになるので買い直しを検討すべきです。
もし、25日移動平均線割れで売却した場合、天井(と思っている株価)が25日移動平均線よりかなり上にある(例えば10%以上)であれば、天井超えを待ってから買い直しをすると高値づかみのリスクが増してしまいます。そこで筆者はフライング気味に25日移動平均線を再度超えてきたら買い直し、としています。
「頭と尻尾をくれてやる」気持ちが、実は大きな損失を回避し、利益を大きく伸ばすためには必要です。ぜひこの考え方を身に付けてくださいね。
(足立 武志)
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