iDeCo、つみたてNISAに+αで、リスク回避も積み立ても自動化する方法
トウシル / 2021年6月8日 11時1分
iDeCo、つみたてNISAに+αで、リスク回避も積み立ても自動化する方法
投資「以外」の積み立てをする自動化もまた大事
積み立て投資の重要性について、インフォメーションを目にする機会が増えてきました。「全額買い! 全額売り!」が投資の全てだと考えられていた遠い昔のことを思うと、少額からの長期・積み立て・分散投資を行う器も整備され、また取り組む人が増えてきたことは喜ばしい話です。
一方で、「昔からある、当たり前の積み立て」に目が届いていない心配もあります。
なぜなら、積み立てという手法は、もともと定期預金や財形貯蓄などの「積み立て預貯金」から広がってきたものですが、今どきの職場では、「お前も積み立て、やっておけよ」というような、おせっかいな先輩は絶滅危惧種になってしまい、下手をすれば、パワハラだと言われ、ウザがられてしまう可能性があるからです。
財形貯蓄などは、労働組合系の金融機関である労働金庫と連携して、労働組合が「勤労者は財形をやっておきましょう」というような活動をしていることがありましたが、今ではこれも下火です。さらに、かつては先輩が職場にやってきて、なかば強制的に財形の申込書を書かせたものですが、今同じことをやったら、さすがに問題となってしまいます。
しかし、しぶしぶやっていた月1万円くらいの積み立ても、10年後には120万円になっているわけですから、結婚資金としても困らない金額になっています。計画的でなかった人ほど、「実はやっていた積み立て」に助けられます。
「預貯金積み立て」+「投信積み立て」のポートフォリオはなかなかいい
ところで、投資をする人は、積み立て定期預金のような金融商品を、投資より軽く考えてしまう傾向があるようです。
しかし、「資産全体のポートフォリオ」を考えたとき、定期預金のような安全性資産のポジションを取っておくことは、悪いどころか合理的、かつ戦略的に考えておきたいテーマの一つなのです。
まず、資産全体のリスクを落としたいなら、安全性資産を一定程度保有しておくことが一番有効です。リスク資産では市場のリスクは回避できませんが、定期預金保有分についてはそうした元本割れリスクをほぼ完全に回避できます(最近は金融機関の破綻リスクも後退しているので)。
そして、資産全体のリスク資産保有割合は、積み立て投資を継続していると自然と高まっていきますが、これに対する対策になります。
例えば、定期預金100万円に、毎月3.3万円のつみたてNISA(ニーサ:少額投資非課税制度)を継続していたとします。
スタート時点ではリスク資産保有割合は微々たるものですが、3年後には預金100万円+投資信託120万円とポートフォリオ全体に占めるリスク資産ウエートが逆転します(リスク資産ウエートは54.5%。ただし元本ベースなので、運用益によってはリスク資産ウエート60%超もあり得る)。
ここで、つみたてNISAを行いつつ、同時に月1万円の積み立て定期預金もやっておけば、3年後の資産額の割合はずいぶん違ってきます。定期預金136万円+つみたてNISA120万円が入金額ですから、リスク資産の割合は、まだ5割を超えません。
自分なりの投資割合を意識し、キープすることはきわめて重要ですが、「積み立て定期預金」の存在が、その調整弁として機能するわけです。
金額のバランスで、リスク管理の奥行きは深まる
理屈としていえば、iDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)や、つみたてNISAの枠は使い切ることが優先課題といえます。税制優遇は月単位、あるいは年単位で消滅し過去の税制優遇のチャンスを遡及(そきゅう)して活用することはできないからです(昨年のiDeCo枠を今年使って2年分を入金するようなことは不可能)。
しかし、自分の資産に占める投資割合が過剰になる恐れがあるなら、満額を入金することにこだわる必要はありません。むしろ、リスク資産への入金額を加減し、定期預金の積み立ても心がけるほうが重要です。
投資部分だけでリスクをコントロールする発想は旧時代のものです。「オレは○万円で○万円稼いだ!」というような感覚は、投資金額だけに着目しているから出るものです。
積み立て投資の時代、長期投資の時代には、「預金の積み立て」+「投資の積み立て」のバランスを意識することで、リスクのバランスを調整していくことがカギとなります。
簡単なことを言っているようですが、「すでにある預金額」+「預金の積立額」+「投資の積立額」の3要素を意識しながら、数年後の投資割合をマネジメントするのはなかなか奥が深いものです。そして、個人ごとのニーズに応じた調整の余地は相当あります。
「自分は何割くらい、投資をしてもいいのか」というイメージづくりをまずしておき、それに近づき、ズレないよう積立額のバランス調整をしてみてください。
社内の制度、メインバンクの仕組みを使って、「自動積み立て」を追加してみよう
積み立て投資のほうは、「積み立て投資信託」を普通に設定してもいいですし、「iDeCo」もしくは「つみたてNISA」で行う方法もありますが、預金の積み立てのほうはどうでしょうか。
財形貯蓄の活用
会社の制度としてチェックしてみたいのは「財形貯蓄」になります。こちらは会社の指定金融機関に積み立て定期預金をするわけですが、給与振り込みの時点で、貯蓄額は天引きされ、金融機関に直行しています。「振り込まれた手取りで1カ月暮らす」という感覚があると思いますが、貯金を織り込み済みにでき、負担感が軽くなるわけです。
財形は3種類あって、住宅財形と年金財形は利息非課税のメリットがあるものの、それぞれの目的のために使わなければなりません。老後資産形成としては年金財形、住宅購入資金準備としては住宅財形で積み立てするといいでしょう(ただ、現行の金利は低いので、あまりメリットがありませんが)。
もう一つ、使い道が自由なのは一般財形です。残念なのは利息非課税メリットがないことです。とはいえ、低金利ですから、ほとんど差はないので、まずはここからスタートしてみるといいでしょう。
財形は会社が実施しているかどうかによるので、未実施の会社では利用できません。制度がある場合は、ぜひ活用してみたいところです。
積み立て定期預金の活用
メインバンクに振り込み後のお金で積み立てを設定するなら「積み立て定期預金」ということになります。最近ではモバイルバンキングのページやアプリからも設定可能です。日付指定が自由であれば給与振込日翌日にしておくといいでしょう。
メインバンクの給与振込口座以外の銀行口座を、積み立て定期預金として設定することもできますが、資金移動の問題が生じます。自分でATMに行ってお金を下ろし、他行ATMに出かけて入金するような「手間」は絶対に避けるべきです。サボるのがオチで、貯まるものも貯まらなくなります。
積み立て投資信託の場合、指定銀行から無料で自動引き落とししてくれますが、ライバル銀行の間で無料自動振り替えをするサービスは限定的です。また、資金移動を無料でできても資金移動に数日以上かかることがあります。それでも高金利を獲得するチャンスがあるのなら、資金移動の自動化を利用してみてもいいでしょう。
積み立て定期預金と、積み立て投資は相性がいい組み合わせです。上手に利用してみてください。
(山崎 俊輔)
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