1,000万人の大台突破!会社員の5人に1人がやっていること:DC(確定拠出年金)20年史(その1)
トウシル / 2021年6月22日 6時0分
1,000万人の大台突破!会社員の5人に1人がやっていること:DC(確定拠出年金)20年史(その1)
確定拠出年金はこの秋、20周年を迎える
DC(確定拠出年金制度)は、2001年10月に施行されました。つまり、今年、2021年の秋に「20周年」を迎えることになります。
そこで、20周年の節目の10月までにかけて、今回から毎月1回、確定拠出年金と、私たちの投資環境について振り返る記事を書いていきたいと思います。
確定拠出年金制度は、日本版401(k)と呼ばれることもあるように、米国の401(k)プラン、およびIRA(個人退職勘定)制度を参考にデザインされ、確定拠出年金法案が国会提出されたのは、2000年3月のことです。
当時は多くの反論があり、法案の成立はたいへん難しいものとなりました。
「国が自己責任をいうのは国民の安心を守る役割を放棄することだ」とか「会社が退職金・企業年金の支払額を準備する責任を負うのが当たり前で、自己責任で社員に運用させるなど無責任だ」のような声が、たくさん上がったものです。
今では「自己責任」という言葉へのアレルギーもずいぶん減り、むしろそれは当たり前のことと理解されるようになりましたが、確定拠出年金が誕生した20年前、老後生活は「自己責任」というだけで、批判される世の中だったのです。
私は法案提出の前後あたりからこの制度と縁がありますが、20年を経て、普通の会社員が投資をする環境が整い、積み立て投資についての理解が得られるようになるとは、隔世の感を覚えます。
企業型とiDeCoの合計で1,000万人がほぼ確実に
確定拠出年金法は2001年6月に成立、同年10月に施行されました。
企業型DCが先行し、第1号の承認規約が同年12月から、個人型確定拠出年金(当時はiDeCo[イデコ]という愛称はなかった)がスタートしたのは翌年1月からのことでした。
さて、現状で数字をいくつかピックアップしてみると、「20年で確定拠出年金1,000万人」というタイミングにきていることが分かります。
まず企業型の確定拠出年金については約750万人の加入者がいます。これは2021年2月末段階の数字で、まだ今年4月にスタートした企業型DCの加入者が織り込まれていません。おそらく20万人前後くらいの増加があるのではないかと思います。
個人型確定拠出年金、iDeCoについては2021年3月末現在の数字が公開されており、約194万人となっています。こちらはここしばらく、月4万人以上のペースで伸びており、1年間で50万人増も期待できます。
これを単純合計すると、現状でも約950万人となりますから、企業型DCの加入者増のペース、iDeCoの加入者増のペースを考えると、2021年度中の1,000万人達成はほぼ間違いないところと思われます。
現在、会社員として厚生年金保険料を納めている人は約4,000万人、公務員が約450万人といわれていますから、働き手である現役世代の5人に1人くらいをカバーするところに近づいてきたといえます。
企業型DCは十分な普及規模、企業年金の一翼をしっかり担う
さて、普及規模について見てみると、企業型の確定拠出年金については、十分な規模を確保したといえます。過去について振り返れば、適格退職年金と厚生年金基金がそれぞれ1,000万人を達成していますが、その受け皿となった確定給付企業年金は2021年3月末時点の数字で約946万人となっています。
確定給付タイプの2制度を引き継いだ受け皿としては加入者数が半減している格好ですが、企業型DCの加入者を加えることで、普及率がなんとか維持されている格好です。
当時は批判が多かったものの(いや本当に多かった!)、確定拠出年金がなかったら、日本人の老後資産形成の不安は今よりも大きなものとなっていたはずです。
企業型の確定拠出年金は、中小企業でも大企業でも普及が進んでおり、多くの会社員の資産形成を支えています。次の10年は、確定給付企業年金の加入者数を超えられるかどうか、1,000万人を企業型のみで達成し得るかが目標となってくるでしょう。
iDeCoの進展著しいが、つみたてNISAには及ばず
iDeCoについては、この「iDeCo」という愛称そのものが大きな転換点となりました。
なにせ2002年1月にスタートしてから、2016年3月末までかけて約25.8万人しか利用者がいなかった「個人型確定拠出年金」という制度が、キャッチーな愛称と加入資格の規制緩和の実現により、多くの利用者を獲得するステージに入ったからです。
2018年3月末の数字が約85.4万人ですが、規制緩和前の14年間分の加入者数をたった2年で3倍にしたことになり、絶大な効果があったことが分かります。
さらにその後3年で倍増、2021年3月末には約194万人と200万突破を目前とするところまできています。規制緩和については、政策の意図がずばりハマったわけで、ここは大きく評価したいところです。
一方で、任意加入である類似の制度として「つみたてNISA(ニーサ:少額投資非課税制度)」と比べてみると、2018年1月スタートであったこちらは、わずか3年で300万口座を獲得しています(2020年末、約302.9万口座)。
この「300:200」という数字の違いは、まさにiDeCoの課題を浮き彫りにしています。
課題となる利用範囲の拡大と、分かりやすさのバランス
iDeCoと企業型DCについては「分かりにくさ」があります。
特に、iDeCoは拠出限度額が働き方によって異なり、複雑な体系になっています。できるだけ多くの税制優遇を付与したいという願いの表れですが、「誰でも年40万円」というつみたてNISAのシンプルさには、かないません。
しかも、次の法改正施行では、さらに限度額が複雑化します。企業型DCの掛金額、確定給付型企業年金の掛金額によっては、iDeCoの枠が一人ひとり違ってくることになります。
複雑な限度額管理は、加入を敬遠する動きになる懸念もあり、また手続きも増やす面倒くささもあります。転職、退職のたびに、変更届を出す必要があるからです。
それでもなお、iDeCoの魅力は大きいものがあります。掛け金に対する全額所得控除を得られるメリットはNISAにはないからです(受取時課税があるものの、非課税枠があるか、現役時代より税率が下がるため低率の課税で済み有利)。
だとすると、さらなる利用範囲の拡大(例えば、企業型DC加入者がiDeCoにも同時加入できるようになる)をしつつも、制度の分かりやすさについて、どう国民にアピールしていくかが問われていくことになりそうです。
米国では401(k)プランとIRAの普及が、国民の老後資産形成に強力な厚みをもたらしました。経済的に余裕を持ったリタイア層の誕生は社会の安定にも寄与し、経済的にも豊かな消費者層として活躍し続けます。
同じことは日本の確定拠出年金制度にも期待されています。制度発足から20年を迎え、まだまだ発展途上のステージにあるこの制度が、おそらく数十年先の老後の安心を形作る翼となることは間違いないでしょう<このシリーズは月1回で続きます>。
(山崎 俊輔)
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