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「第三次オイルショック」前夜!?今週の産油国会合に世界が注目!!

トウシル / 2021年11月2日 5時0分

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「第三次オイルショック」前夜!?今週の産油国会合に世界が注目!!

ガソリン、軽油、灯油はこの1年半でおよそ1.3倍に

 以下のグラフのとおり、ガソリン(ハイオク、レギュラー)、軽油、灯油の小売価格は、1年半前のおよそ1.3倍まで、上昇してきています。

 自動車の燃料に使われる3つの油種の変動率は、2020年4月から同年年末まで、ほぼ同じでした。しかし、2021年春ごろから、軽油の上昇率がレギュラーに比べて高くなり、ハイオクの上昇率がレギュラーよりも低くなりました。また、夏の終わりごろから、灯油の上昇率が高くなりました。

図:全国の4油種の小売価格(税込)の推移 2020年4月27日を100として指数化

出所:資源エネルギー庁のデータより筆者作成

 こうした動きを経て、2021年10月25日時点で、ハイオクは178.2円、レギュラーは167.3円、軽油は147.1円、灯油は1,910円(18リットルあたり)となりました。世界規模の問題だと報じられている原油高が、わたしたちの生活に直に、影響を及ぼしている訳です。

 2021年春ごろから、販売店は、原油価格急上昇の最中にあって、ハイオクの価格上昇率を(レギュラーよりも)下げたり、軽油の価格上昇率を(レギュラーよりも)上げたりするなど、油種間の価格上昇率を調整しながら、自社の収益向上とお客様の負担軽減の同時進行を、模索しているようです。

本来のガソリン価格は156円!?原油価格との連動性が低下している

 原油相場の急上昇が、ガソリンや軽油、灯油といった石油製品の価格上昇の、直接的な要因と言われています。石油製品の原材料である原油の価格が上昇すれば、原油から作られる製品の価格も上昇する、という話です。

 ここからは、こうした「連動」の話を一歩先に進めて、「連動の程度」に注目します。以下のグラフは、ガソリン価格(ガソリン税と消費税を除いた額)と、価格の単位が円の日本で主に使われている中東産原油の価格(ここでは先物価格を参照)の推移を示しています。

図:全国のレギュラーガソリン小売価格(諸税抜)と 中東産原油先物価格(中心限月)

出所:資源エネルギー庁およびブルームバーグのデータより筆者作成

 過去20年間の、これら2つの価格推移に注目すると、改めて、連動していること(ガソリンが原油から作られていること)がわかります。

 リーマンショック(2008年9月)前の史上最高値と、翌2009年初旬の安値を重ねると、同ショック前までの上昇時、同ショック後の急落時、世界的な金融緩和や「アラブの春(中東・北アフリカ地域の民主化の波)」などによって起きた上昇時、「逆オイルショック」の下落時、その後の反発時など、記録的な値動きの際、ほとんど2つは連動していました。

 ただ、2020年4月ごろからは、やや、連動性が低下したように見えます。2020年4月といえば、「珍事」とも言われた、原油価格の国際指標の一つであるWTI原油先物価格がマイナス圏に至ったタイミングです。この時、ガソリン小売価格は、原油価格ほど、下落しませんでした。

 このタイミングを機に、ガソリン小売価格の水準が、原油よりも高くなりました。その後、2つは大きく反発し、現在に至るのですが、まだ、差は埋まっていません。

 仮に2020年4月に、ガソリン小売価格が原油価格と高い連動性を保ったまま下落し、その後、反発したとすると、諸税を除いたガソリン価格は、今時点で1リットルあたり88円程度とみられます。これに諸税を含めた推定小売価格は156円です。つまり、167.3円という足元の小売は、推定価格よりも11円以上、高いのです。

 2020年4月に、ガソリン価格と原油価格の連動性が低下したのは、原油が一方的に下がり過ぎたためなのか、ガソリンが原油に追随しきれなかったためか、それともその両方なのか、議論の余地はありますが、原材料が原油である点(けん引役は原油である点)を考慮すれば、ガソリンが原油の下落に追随しきれなかったことが、大きいと言えそうです。

 なぜ、ガソリン価格が原油価格の下落に追随しきれなかったのでしょうか。精製コスト(原油を石油製品にする時のコスト)、輸送代、販管費、人件費のほか、脱炭素に対応するための新たな費用などの、さまざまなコストが膨らんでいたことが原因とみられます(「便乗値上げ」も否定はできないでしょう)。

 以下のグラフは、米国におけるレギュラーガソリン小売価格と原油価格の推移を示しています。日本と同様、リーマンショック前後の高値と安値を固定すると、現在、ガソリンが上振れしていることがわかります。

図:米国のレギュラーガソリン小売価格(税抜)と WTI原油先物価格(期近限月)

出所:EIA(米エネルギー省)およびブルームバーグのデータより筆者作成

 日米のレギュラーガソリン小売価格と原油価格の関係より、特に今年の春以降、ガソリン小売価格は、原油価格の動向だけでなく、消費国側の都合も反映していることがわかります。こうした、消費国側の都合は、原油生産国に、どのように映っているのでしょうか。

産油国の言い分「消費国のガソリン価格高は、産油国だけのせいではない」

 バイデン米大統領は、10月31日に閉幕したG20で、サウジアラビアとロシアに原油の増産を促したと報じられています。また、「1ガロン3ドルを超えると通勤だけでも家計に影響がでる」と、コメントをしたとのことです。原油高を抑制し、景気回復を加速させると同時に、低迷する支持率を回復させる狙いがあると、言われています。

 そのバイデン氏は、同じG20で、中国とロシアの気候変動対策が不十分だと、不満を述べたとのことでした。

 バイデン氏は産油国に、原油高を抑制すべく、増産をさせたいのか、温室効果ガスの排出を削減すべく、消費国に消費量の削減をさせたいのか(≒生産国に生産量の削減をさせたいのか。生産量は消費動向に応じて調整される)、焦点が定まってないように見えます。

 原油高抑制のための増産要請は短期的施策、温室効果ガス排出削減のための消費削減要請(≒生産削減要請)は長期的施策と、切り分けはできますが、これらを聞いた産油国側は、同じ人物が同じ会合で述べる言葉なのか、という疑問を呈さずにはいられなかったでしょう。

 このように、G20では消費国寄りの言葉が並べられたわけですが、産油国側は今、何を考えているのでしょうか。

 足元の、産油国側の一つの象徴的な動きに、「OPEC(The Organization of the Petroleum Exporting Countries:石油輸出国機構)」と「GECF (The Gas Exporting Countries Forum:ガス輸出国フォーラム)」の連携強化が挙げられます。

 OPECの資料によれば、G20開幕の3日前にあたる10月27日、昨年11月に続き2回目となるOPECとGECFの合同の会合が行われました。同会合の主催者はGECFで、GECFの事務局長はロシア政府でエネルギー関連の要職を務めた人物(ユーリー・センチュリン氏)です。

 会合では、石油と天然ガスが、今後も世界経済の発展のために重要な役割を果たすこと、今後も両組織が緊密に連携することなどが、話し合われたとのことでした。

 また、会合では「the prevalent reductionism and the cancel culture」(過度な単純化と、一要素だけに着目して、存在すべてを否定する考え方のまん延)という文言が用いられました。

 前後の文脈から、この文言は、世界中で「今すぐ脱炭素推進」→「今すぐ石油・ガス不要」→「即、産油国・ガス生産国悪」のような考え方がまん延していることを指していると、考えられます。

図:OPEC と GECF

出所:OPECの資料より筆者作成

 世界的大合唱となっている「脱炭素」が独り歩きをし、必要以上に、石油とガスが否定されていないか、冷静な検証が必要であると、彼らは警鐘を鳴らしているのでしょう。

 筆者が前回、「年内の価格見通し。金(ゴールド)、原油、銅が「脱炭素」で値上がりするワケ」で書いた通り、「脱炭素」には負の面もあります。

 ある意味、方向性が定まらないバイデン氏の発言は、消費国とて「脱炭素」を明確に定義づけられていないことを浮き彫りにしていると言えるでしょう。その意味では、現在の原油相場の動向のカギを握るのが産油国で、産油国次第で原油相場が動く、とする考え方は、説得力に欠けると感じます。

11月4日、OPECプラスは覚悟を示し「オイルショック」に突き進むか

 さしあたり、11月4日(木)、産油国のグループであるOPECプラス(※)側は、消費国側の要請に対し、一定の反応をすることになります。「第22回 OPEC・非OPEC閣僚会議」がその舞台です。

※OPECプラス…サウジアラビア、イラクなどOPEC加盟国13カ国と、ロシア、アゼルバイジャンなど非加盟国10カ国の合計23の主要産油国のグループ。世界の原油生産シェアはおよそ50%。2021年9月時点。

 以下のグラフは、OPECプラスの中で減産に参加している20カ国の原油生産量の推移と、彼らが定めた生産量の上限のイメージです。

図:OPECプラスの原油生産量(減産に参加している20カ国) 単位:万バレル/日量

出所:ブルームバーグ、OPECの各種資料をもとに筆者作成

 会合の最大の焦点は、「OPECプラスが、消費国の要請に応じて、過度な増産(予定していた日量40万バレルを上回る増産)を実施することを決定するかどうか」です。

 9月の会合の際、バイデン政権から寄せられた増産要請を、OPECプラスはのみませんでした。今回は、日本(公式に)をはじめ、公式・非公式の別はあれども、中国やインドなども、増産を要請していると報じられています。

 こうした世界的な、主要国が足並みをそろえた増産要請を、OPECプラスがのんだ場合、何が起きるのでしょうか。

 要請をのんだ場合、OPECプラスからの原油生産量が増加する思惑が強まり、原油相場は下落する可能性があります。のまずに突っぱねた場合、世界の石油の需給バランスが引き締まる観測が続き、原油相場はさらに上昇する可能性があります。

 副次的な効果・影響として、要請をのんだ場合、OPECプラスは「救ってやった」と消費国に恩に着せ、一時的な原油価格の下落を容認しつつ、来月の会合(会合は毎月予定されている)で再び計画通りに戻す(過度な増産をやめる)、などが考えられます。

 要請を突っぱねた場合は、追加増産を要請した日本や米国をはじめとした主要国とOPECプラスの対立が鮮明になります。そしてOPECプラスは、自身の存在を否定的に映す「脱炭素」への不満を世界に知らしめながら、さらなる輸出単価(原油価格)上昇の恩恵を享受することになると、みられます。

 およそ半世紀前、市場関係者や一般市民は、そうそうたる主要国の要請を突っぱねるOPECの姿を、「わが道を行く」ことを優先して原油相場を大暴騰させた「オイルショック」の時に目の当たりにしました。

図:11月4日(木)の会合の最大の焦点

出所:筆者作成

「自らの原油生産量とその価格は自分で決める」「欧米の石油メジャーに決めさせない」というゆるぎない意志が、彼らを「オイルショック」へと突き動かしました。

 今、「脱炭素」の大合唱の中にあって劣勢に立たされているからこそ、「オイルショック」の精神が沸き上がり、「あえて要請を突っぱねる」、展開が起きないとは言えないでしょう。11月4日の会合は、OPECプラスが本気で、脱炭素をうたう国を敵に回す覚悟があるか、本気度が示される会合と言えるかもしれません。

 筆者は今、「オイルショック」の「オ」の字くらいは、警戒してもよい時間帯にいると感じています。前回の「年内の価格見通し。金(ゴールド)、原油、銅が「脱炭素」で値上がりするワケ」で述べた原油相場の目先の方向性の考え方も、ご参照ください。

図:NY原油先物(期近 日足 終値) 単位:ドル/トロイオンス

出所:ブルームバーグのデータをもとに筆者作成

[参考]原油関連の具体的な投資商品

国内ETF/ETN

WTI原油上場投資信託 (東証)1690
NF原油インデックス連動型上場(東証)1699
NEXT NOTES 日経TOCOM原油ブル2038
NEXT NOTES 日経TOCOM原油ベア2039

投資信託

UBS原油先物ファンド

外国株

エクソンモービルXOM
シェブロンCVX
トタルTOT
コノコフィリップスCOP
BPBP

(吉田 哲)

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