夏は投資について子と語ろう
トウシル / 2022年8月9日 6時0分
夏は投資について子と語ろう
親子で始める金融教育
学生時代の夏休みといえば自由研究です。小学校の自由研究、最近ではロジックツリーをしっかり固めてからレポートを作るようなサジェストがあったりして、時代の変化を感じます(子ども向けのプリントをみてびっくりしました)。
レポートの作り込みにはアドバイスがあるとしても、やはり悩ましいのは「テーマ選び」でしょう。もし、子どもがテーマを選びかねているようでしたら、「投資」について考えてみるのはいかがでしょうか。
子どもと投資について語る、ということは「親は、投資をしている」と知ってもらうことでもあります。
そもそも、投資をしていることは恥ずかしいことでも何でもありません。親が子どもに投資を隠し事とする必要はありませんし、むしろ親自身が投資をしていることを子どもに示すことはよい金銭教育でもあると思います。
そして、子どもと投資について話すということは、自分自身の投資スタンスや理解を整理することでもあります。人に勉強を教えることが一番の勉強になる、とよくいいますが、まさにそれです。
それでは世代別に「子どもと投資について語る」を考えてみましょう。
小学生と投資について語る:生活に近いところから、投資の役割とは
小学生、といっても投資について考えるのは高学年向きだと思いますが、それでもベーシックなところから理解を深めていくことになります。
株価の推移や指標について学ぶというよりは、投資の本質と向き合ってみたいものです。企業への資金提供と経済活動の支援が、社会の発展やイノベーションを生み出し、その対価として株価の上昇があることなどを図で描いてみるといいでしょう。
投資は「企業の成長や発展」を生み出す源泉となるだけではありません。「社会の豊かさや発展の実現」にもつながっています。そして「投資家としてのリターンの獲得」と三方よし、というべき仕組みであるわけです。大岡裁き(いわゆる三方一両損)と対比しても面白いかもしれません。
いくつかの社会を変えたプロダクツを取り上げ、より具体的な商品、企業とリンクしての説明もいいでしょう。企業博物館やIRが充実している会社であれば、詳しいヒアリングもできるかもしれません。
SDGs(持続可能な開発目標)の考え方も絡めると自由研究として深みがでてきますが、手を広げすぎないようなバランス感覚も欲しいところです。
中高生と投資について語る:教科書の知識を補完し世界を広げる
中高生の場合、学校の教科書も高度化してきますし、本格的な自由研究となります。高校では自由研究課題はないこともあるでしょうから、主に中学生の視点で考えてみます。
近年、社会の教科書が驚くほど充実しています。投資についても前向きに捉えたり、SDGsの考え方が積極的に盛り込まれていたりして、驚かされます。一方で、実際の株式投資や投資信託の購入については、時間的余裕がなくて触れる余裕がないこともあります(金融機関やNPOなどの出張授業もまだ全ての学校をカバーしきれていません)。
中学生なら、親が実際に行った売買の事例なども紹介するとおもしろそうです。子どもにも「企業選び」「購入」「売却」まで経験させてもいいでしょう。実際に子どもの証券口座をつくるかどうかはご判断をお任せします。
今後、個人の資産運用に大きな役割を果たすのは投資信託です。投資信託の仕組みや役割について理解を深めてみるレポートも面白そうです。投資信託協会などの提供する啓発コンテンツを活用してみるといいでしょう。
また、中学生レベルなら、いろんな投資スタイルがあること、多様な投資対象があることも触れてもいいでしょう。短期的なトレードをどう捉えるか、FXなどの投機的なスタイルと株式投資をどう対峙(たいじ)するかなど、広げられる余地は大いにあります。
大学生と投資について語る:成人なら自分のお金で投資をするのもいい
さすがに大学生ともなれば、親子で夏休みの自由研究は卒業でしょう。しかし、違うステージで子どもと投資について話し合うことができるのは大学生の子との会話かもしれません。
高校の金融経済教育、あるいは大学での授業などがかなりステップアップしていますから、大人と同じレベルで話し始めても会話が成立します。
経済学部でなくても、企業の実態を踏まえた投資の意味も理解できます。具体的なイノベーションについても理解できます。GAFAMに限らず、10年前と比べて社会を便利で豊かにした企業への投資が生み出す価値を語る話題はいくらでもありそうです。
大学生となればもう成人年齢に達していますし、自分で自分の証券口座を開設し投資をすることも問題ありません。NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)口座も来年以降は18歳到達者の口座開設が可能になる予定です。
実際のお金を投じた投資に踏み込んでみるステップも考えられます。投資信託を軸に、金額を控えめに設定すれば、お年玉くらいの金額でも十分に投資ができるはずです。
自分自身の投資体験談を話してみるのもいいアプローチです。できれば失敗話もしてあげたいところ。リーマンショックのとき自分がどう対応したか(うまく対応できなかったか)なんて話は生きた教材となるはずです。
FXや仮想通貨取引などの投機的アプローチについては、くぎを刺しておくことも考えられます。CMだけを見ていると、スタンダードな投資がどこにあるのか分からなくなり、「投資デビューの選択肢はFX」というように誤解してしまうことがあるからです。
帰省時や旅行時などは大学生の子どもと一緒になる時間が取れます。顔を見るのも久しぶり、なんてこともあるかもしれませんが、このチャンスを「投資について語るタイミング」としてもいいでしょう。
子どもとお金の話で向き合ってみよう
私の父親は社内持株会をやっていて、子ども(私と弟)の高校・大学の入学時期となると解約しては入学金をやりくりしていました。私が知っているのは郵便ポストに解約・入金の通知を見つけたからです。
それを父親に質問したら、ちょっとうろたえてはぐらかされてしまいました。今考えると、学費準備で心配させたくないという親心だったのかもしれませんが、お金の教育としてみれば「子には隠す」という方向だったのは事実です。
子育てにはお金がかかりますし、親はそのために相当の苦労をします。部分的に子どもに奨学金を取ってもらうこともあるでしょう。そんなことも率直に話せたら、それは素晴らしいことだと思います。
教育資金の計画的準備まで話せば、ライフプランニングの重要性と取り組みまでテーマが広がりますが、まずは「資産運用とは何か」「株式投資で私たちは何を手に入れるのか(それは経済的リターンだけではない)」ということを話し合ってみてください。
(山崎 俊輔)
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