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不動産の上昇目立つ!バリュー物色に新しい流れ?(窪田真之) 

トウシル / 2024年4月1日 7時45分

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不動産の上昇目立つ!バリュー物色に新しい流れ?(窪田真之) 

※このレポートは、YouTube動画で視聴いただくこともできます。
著者の窪田真之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
バリュー株物色に新しい流れ? 不動産株上昇

3月末の日経平均は4万円台を維持

 先週(3月最終週:営業日3月25~29日)の日経平均株価は、1週間で518円下がって4万369円となりました。

 3月28日に3月期決算企業の配当落ち約260円があったことを考えると、実質的な下げ幅は258円程度と小幅でした。その前の週(3月18~22日)の日経平均が配当取りの買いもあって1週間で2,180円上昇していたことを考えると、先週の日経平均は堅調であったと評価できます。

 以下の要因が、日本株が堅調な理由と考えています。

【1】米景気が想定以上に堅調
【2】米国株(S&P500種指数)の最高値更新が続いていること
【3】円安が進んでいること
【4】日本の企業業績は、円安、米景気堅調、リオープン(経済再開)効果で良好
【5】日本銀行はマイナス金利を解除したもののハト派姿勢維持と解釈されていること
【6】米FRB(米連邦準備制度理事会)もいずれ利下げに転じると見られていること

 中でも、円安が外国人の日本株買いを招いている効果が大きいと考えられます。最近、円安なら日経平均上昇、円高なら日経平均下落となる傾向が顕著です。

日経平均と、ドル円為替レートの動き:2023年1月4日~2024年3月29日

出所:QUICKより楽天証券経済研究所が作成

 年初より、「円安→日経平均上昇」が続いてきました。1ドル150円前後まで進んだ円安に、日本株の動きを支配している外国人投資家の日本株買いを招く効果がありました。以下二つの理由によります。

【1】円安は日本の企業業績にプラス
【2】円安になると、ドル建て日経平均が下落し、外国人は日本株を安く買える

 ただ、円高にふれる局面では、日経平均は急落しています。これからも、為替動向に、日経平均が敏感に反応する展開が続くと想定されます。

不動産株の上昇目立つ

 先週、日経平均が反落する中、不動産株の上昇が目立ちました。日本の大手不動産には、保有する賃貸不動産に巨額の含み益があり、含み益を勘案すると買収価値から割安な銘柄が多いことに、スポットライトが当たり始めています。

 今になって、不動産株が注目される理由として、以下が考えられます。

【1】日本の地価が底入れ、上昇し始めていること
【2】日本の上場不動産各社には、保有不動産に巨額の含み益があり、含み益を勘案すると株価は割安と考えられること
【3】株価割安な企業に対して、東証が改善策を求めていること。今後、ガバナンス改善によって、株価を意識した経営が増えてくる期待があること

 国土交通省が発表した2024年1月1日時点の公示地価(全国・全用途平均)は、前年比2.3%の上昇でした。バブル期の1991年(前年比+11.3%)以来、33年ぶりの高い伸びとなりました。国際比較で割安となっていた日本の株価、物価、賃金に加え、地価にも上昇の波が押し寄せ始めています。

公示地価(全国・全用途平均)1月1日時点の前年比騰落率(%):1972~2024年

出所:ブルームバーグより楽天証券経済研究所が作成

割安な不動産株に見直し余地

 不動産価格が上昇し始めたことにより、買収価値(純資産価値)対比で割安になっている日本の不動産株が改めて見直されると予想しています。

 金利復活で割安なメガ銀行株が見直されたように、不動産価格の上昇復活で、買収価値対比で割安な不動産株が見直されると予想しています。すでに大きく上昇したメガ銀行や大手総合商社を少し利益確定売りして、不動産株を少し買ってみても良いと思います。

賃貸不動産の含み益1,200億円以上の29社、うち上位10社

  コード 銘柄名 産業分類 含み益
単位:億円
1 8802 三菱地所 不動産 4兆6,339
2 8830 住友不動産 不動産 3兆7,367
3 8801 三井不動産 不動産 3兆2,626
4 9020 JR東日本 電鉄 1兆5,867
5 9432 NTT(日本電信電話) 情報通信 1兆3,707
6 9042 阪急阪神HD 電鉄 5,324
7 8804 東京建物 不動産 5,264
8 9005 東急 電鉄 5,259
9 8267 イオン 小売 4,638
10 9531 東京ガス ガス 4,492
出所:各社最新の有価証券報告書より楽天証券経済研究所が作成

賃貸不動産の含み益上位4社の含み益:2013年3月期(期末)~2023年3月期

出所:各社有価証券報告書・決算短信より楽天証券経済研究所が作成

買収価値と比べて割安と考えられる銘柄をピックアップ

 保有不動産の含み益を勘案した実質PBR(株価純資産倍率)が0.7倍を割れている銘柄を、「買収価値が高い株」と呼ぶこととします。賃貸不動産の含み益が1,000億円以上で、実質PBRが0.7倍以下の7社をピックアップしたのが、以下です。

賃貸不動産の含み益1,000億円以上、かつ実質PBR0.7倍以下の7社:2024年3月27日時点

  コード 銘柄名 含み益
:億円
実質PBR
:倍
1 8841 テーオーシー 1,102 0.37
2 8830 住友不動産 3兆7,367 0.59
3 8804 東京建物 5,264 0.61
4 8905 イオンモール 3,255 0.61
5 5901 東洋製缶GHD 1,158 0.62
6 8802 三菱地所 4兆6,339 0.67
7 9302 三井倉庫HD 1,104 0.70
出所:各社有価証券報告書およびQUICKより楽天証券経済研究所が作成。
実質PBRの計算方法は3月28日のレポートを参照。このレポート末尾の「著者おすすめのバックナンバー」に掲載

 この中で、一番投資価値が高いと私が考えるのは、三菱地所(8802)です。ついで、住友不動産(8830)テーオーシー(8841)イオンモール(8905)の投資価値が高いと考えています。

 テーオーシー(8841)に対して、2007年に、敵対的TOB(経営陣の合意のない公開買付)がかかったことがあります。当時、ミニバブルと言われた不動産ブームの中で、テーオーシーの割安な株価に注目して、買収合戦が繰り広げられました。

 事の発端は、2007年4月に株価800円でMBO(経営陣による買収)が発表されたことです。これにダヴィンチ・アドバイザーズが株価1,100円で対抗TOBを発表しました。その後、TOB価格は1,308円まで引き上げられました。

 ところが、経営陣が買収防衛の活動を行ったために、ダヴィンチのTOBは不成立になり、テーオーシーの株価は下落しました。さらに2008年にリーマンショックが起こると、不動産価格も株価も急落しました。

テーオーシーの月次株価推移:2004年1月~2024年3月

出所:QUICKより楽天証券経済研究所が作成

バリュー物色に変化が起こる可能性も

 2021年以降、日本株市場で、バリュー株(割安株)の上昇が目立っています。バリュー株にはおおざっぱに分けて2つの種類があります。

【1】収益価値・配当利回りから割安な株:配当利回りの高い、PER(株価収益率)の低い銘柄が多い
【2】純資産価値から割安な株:PBRが1倍を割れている銘柄が多い

 これまで、バリュー株の上昇は、上記の【1】、特に大型の高配当利回り株に偏っていました。純資産価値(買収価値)で割安な【2】の株価はさえないままでした。

 この流れが少し変わる可能性もあります。短期的な株価上昇率が高い大型の高配当利回り株が買いにくくなる一方、【2】のバリュー株が見直される可能性があると思います。

 最近の株価上昇率が高い大型の高配当利回り株を少し売って、三菱地所やテーオーシーなど純資産価値から割安なバリュー株を少し買ってみたいと考えています。

▼著者おすすめのバックナンバー

2024年3月28日:三菱地所に追い風!公示地価2.3%上昇、33年ぶりの高い伸び(窪田真之)

(窪田 真之)

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