ウクライナが勝てない現実と西側メディアの虚実 メディアは即時停戦への指針を示すべきだ
東洋経済オンライン / 2023年11月15日 14時0分
潮目が変わる時期がある。今回のイスラエルとガザの紛争の後、ウクライナ問題に関する西側の大手メディア報道の流れは大きく変わった(日本の報道だけはそうでないようだが)。
2022年2月から、ウクライナ擁護とウクライナ支援で動いていた西側の主要メディアは、すべてのニュースを反ロシアで固めていった。それは、19世紀ロンドンの『タイムズ』紙が行った「反ロシア」の世論操作とよく似ていた。
西側のニュースソースは、ウクライナ政府とアメリカ政府に依存していた。だからこそ、一方の当事者側の希望的観測だけが1人歩きし、現実に起こっていることは十分考慮されず、一方的な方向からのみメディアは発表し続けてきた。
それは、ウクライナへの支援を西側の国民に納得させるために、都合よく行われた操作でもあったといえる。
「ウクライナ善人説」が闊歩した結果
結果的に西側では、「ウクライナ善人説」が闊歩し、「民主主義を守る正義の戦い」と位置づけられ、ウクライナ支持の声は日増しに増大していった。
こうした戦争報道は、しばしばわれわれを迷妄にみちびく。負けている戦いが、勝っている戦いに変貌し、人々に勝利を確信させ、無謀な戦争の拡大へと駆り立てる。そこで失われるのは尊い人命であるが、好戦的議論が戦争を継続させ、停戦のタイミングをずらしていく。
ウクライナの戦争責任者、陸軍の司令官ザルジニーのインタビューが、『エコノミスト』誌や『タイムズ』誌に掲載された。そのインタビュー記事は、2023年6月4日から始まったウクライナの攻勢が、結局多くの犠牲をともなって成功しなかったことを明らかにしていた。
戦争当事者が戦争の最中、自らの失敗を認めるなどということは通常ではありえない。しかも、勝利を確信させ、さらなる武器援助をゼレンスキー政権が拡大しようとしていた矢先である。
西側メディアが真のジャーナリズムに立ち返ったのか。いやそうではない。イスラエルとガザの紛争という新たなる戦争が起き、アメリカも、二兎を追うことが財政的に不可能になってきたからであった。
早速ウクライナへの支援のストップが問題になった。もう少しでの援助で勝利が得られれば、援助の切り捨てなどはありえない。とすると、勝利はありえず、もはや負け戦であり、支援が無駄であることを認めざるをえなくなったということかもしれない。
これはいわば勝利を信じてきた人々にとって青天の霹靂であり、正義の勝利を信じた人々は戸惑いを隠せないはずだ。金の切れ目が縁の切れ目という言葉のように、停戦はやむをえないことなのか。
2023年6月攻勢の経緯
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