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「中国の肺炎拡大」免疫低下以外に懸念される要因 見落とされている「別の問題」を医師が指摘

東洋経済オンライン / 2023年11月30日 7時20分

肺炎というと酸素を吸入して、人工呼吸器につながれるような重症コロナ肺炎を思い浮かべるかもしれないが、マイコプラズマ肺炎は通常は軽症ですむ「歩ける肺炎」ともいわれる病気だ。

感染しても、風邪に似た軽度の症状を引き起こす程度。咳が長引くこともあるが、大多数の人は自分の免疫力でも回復するし、通常は酸素吸入も入院も必要なく、多少症状が強くても、飲み薬を服用しながら家で療養するだけで治ることも少なくない。

しかし、今回は中国の子どもたちでは重症化し、入院が必要な患者が集団発生した。マイコプラズマ肺炎は大人にとっては問題なくても、特に免疫システムが未熟な小児では重症化するリスクが高い。

中国の小児医療センターは病気の子どもたちであふれ、医師に診てもらうまで700人以上列に並び、13時間待たされる家族もいたとも報じられている。ソーシャルメディアには、混雑した待合室や廊下で、点滴を受ける子どもたちの写真や動画が数多くアップされている。

もちろん、一般の診療施設が不足している中国で、心配した親が大病院に集中したという、日本と異なる医療事情も関係しているだろう。

免疫力の低下だけ原因ではない

中国で今回のアウトブレイク(集団感染)が発生した理由はまだ明らかになっていないが、新型コロナ対策によって約2年間病原体の流行が抑えられていたことを挙げる向きが多い。

つまり、今回の冬シーズンの感染症患者の増加がこれまでと異なるのは、「新型コロナ対策によってさまざまな病原菌に曝される機会が減ったことで、多くの人々の免疫力が低下し、病原菌への感受性(かかりやすさ)が増したからではないか」と見られているわけだ。

新型コロナ対策として、世界中で行われたロックダウンや、そのほかの措置によって、季節性の病原体が流行する機会が減少したことはよく知られている。

日本でもしばらくインフルエンザの流行発生が止まっていた。いいことのよう聞こえるかもしれないが、病原体に対する免疫力を培う機会が低下したという見方もできる。この現象は「免疫の負債」とも呼ばれ、人々が一般的な病原体に対する抵抗力を失ったことを示している。

実をいうと、中国で生じている今回の感染症患者の増加は、それほど意外なことではない。ほかの国に比べて中国は長期にわたる厳しいロックダウンを課していたため、昨年12月に制限が解除されたあとに大規模な感染の波が来ることは、以前からすでに予想されていたものだ。

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