灘→東大からの「脱落エリート」彼らの数奇な人生 なぜ年収・安定より「おもろい」を優先するのか
東洋経済オンライン / 2023年12月9日 10時0分
その青松氏を、もう1人の脱落エリートである田内学氏が絶賛する。
ゴールドマン・サックス証券(GS)で採用担当もつとめていた田内氏は、YouTubeチャンネル「トマホークTomahawk」の動画で青松氏と共演している。GSでの採用試験を学力自慢のYouTuberたちに解かせる企画だったが、田内氏は正解数がもっとも少なかった青松氏を一番評価する。
「彼(青松氏)は、正解は少なかったが、間違えた問題もその本質を捉えていた。むしろ、想像力を働かせて、問題文の外側にある条件を読み取ろうとしたから間違えた。1つ高い次元で俯瞰しているようにも感じられた」
自分では「ソロプレーヤー気質」と分析する青松氏が、医師よりも高い次元で自身の能力を生かせるのが創作活動なのだろう。
大学を出てから16年勤務したGSを辞めた
田内氏は、東京大学、大学院とどちらもストレートで修了。得意の数学を生かすために、GSに入社して金利のトレーダーになった。彼もまたエリートコースを走り続けたが、16年間の勤務の末、突如、そのコースを自ら降りる。彼の決断の背後には何があるのだろうか。
「世界最強の投資銀行」に入った田内氏は、リーマンショックも乗り越え、精力的に仕事を頑張っていたそうだ。しかし、自分の仕事が“他人と交換可能な仕事”であると感じ、自身の存在意義について考えるようになっていく。17年目に休職し、子どもと一緒に『スプラトゥーン』や『フォートナイト』をして日々を過ごしながら、自分の生き方を見つめ直したそうだ。
最終的に退職を選んだのは、2人からの言葉がきっかけだった。
昔から交流のあった禅寺のお坊さんに言われたのは、「あなたの経験を社会のために生かしなさい」という言葉。それを聞いた田内氏は、国際金融の最前線で考えてきた年金や財政問題の解決方法について世の中に伝えたいと思ったそうだ。
とはいえ、何をすればいいかわからない。そのとき運命に引き寄せられるように知り合ったのが、カリスマ編集者の佐渡島庸平氏だった。
彼からは、次のような言葉をかけられたそうだ。
「田内さんの考えをわかりやすく言語化して本を書いたらいい。内容が正しければ、安倍さんにだって伝わりますよ」
安倍さんとは、当時の総理大臣、安倍晋三。その話を聞いて、「おもろい」と感じた田内氏は、GSを躊躇なく辞めて、佐渡島氏のもとで本を書く修業をする。
そうして完成した経済書『お金のむこうに人がいる』は、実際に安倍氏の目に留まり、政治家の勉強会などに頻繁に講師として呼ばれるようになったそうだ。
灘→東大→YouTuber…そして作家になった2人
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