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灘→東大からの「脱落エリート」彼らの数奇な人生 なぜ年収・安定より「おもろい」を優先するのか

東洋経済オンライン / 2023年12月9日 10時0分

受験という「ゲーム」を突き詰めてきた現在の彼の行動原理は、そこから一歩発展して「他のゲーマーがやっていないことをしたい」というクリエーター精神である。

「高尚なジャンルとされ、多くの人がアートとして取り組んでいる短歌に、土足で乗り込んでいくのが面白い」と語る青松氏は「短歌のルールのギリギリ外側にあるものを使っている」と自身の作品について語るが、その珍しいことばさえも違和感なく歌全体に溶け込み調和させる役割を担っており、爽快な読後感へ導くのである。

「火花放電 僕に子供が生まれてもネーミング・ライツは買わなくていい」

「十年後の僕はロレックスをはずしてつまらないことで笑う 笑え」

短歌集『4』より

「ブームに乗るんじゃなくて、ブームを作るっておもろいですね」と田内氏は目を細める。

「ネーミング・ライツ」「ロレックス」といった伝統的な短歌に似合わない固有名詞が、若い人たちの興味を引く。「YouTubeが流行っているからYouTuberになろう」は簡単だが、彼はそれにとどまらず、マイナー分野の人口を増やすための仕掛けを考えているのだ。彼のファンである若年層が想像しやすい言葉を使った作品を届けることで、短歌を若者にとって身近な存在にしようとしたのである。

実際に彼の短歌集は、紀伊國屋新宿店1店舗で1000部近い驚異的な売り上げを達成したという。囲碁ブームを作った『ヒカルの碁』や、競技かるたの人口を増やした『ちはやふる』のような現象を、彼はいま、1人で作っているのである。

この青松氏の思考・感性は、彼のYouTube活動にも通ずる「人の心」への関心が大きい。同作品には恋愛の話も多く収録されているが、「恋愛という難題には情報量が多い。それがおもろいんです」と彼は言う。

しかし、心中は複雑だ。学費を払ってくれている両親や医師として育てようとしている大学の先生方に筋を通せておらず、この活動を続けていいのかという迷いがあるようだ。

好きなことに社会性を持たせる

ここで筆者は、六代目三遊亭円楽氏が、伊集院光氏に伝えた言葉を思い出していた。

「時間を忘れるくらい好きなことに、少しの社会性を持たせれば、それで食える」

彼ら2人の話を聞いていると、どちらも社会の尺度では測れないことを見つけて打ち込んでいるように思えるが、そこに社会性が備わっていることを見逃してはならない。

彼らにとっての「おもろい」を追求することは、自分たちだけではなく、他の人にとってもおもろいこと……周囲の人間に影響を与え、連鎖し、ひいては社会への貢献にもつながることを目指しているのだとわかった。

ゴールドマン・サックスに16年勤務して退職。

東大の医学部に在籍しながら3年連続で留年。

非合理にも見える彼らの選択は、「問題を解くこと」、そして「社会性を持つこと」という「おもろい」を求める姿勢が関係しているのだと筆者は感じた。

彼らはこれから自身の創作活動を通して、何を目指していくのだろうか?

筆者は少しでも彼らの考え方に近づくため、さっそく書店で彼らの書いた2冊の本を手にして会計まで向かった。

濱井 正吾:教育系ライター

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