灘→東大からの「脱落エリート」彼らの数奇な人生 なぜ年収・安定より「おもろい」を優先するのか
東洋経済オンライン / 2023年12月9日 10時0分
こうしてお伝えしてきた2人の事例は、世間の想像する「エリート」とは異なる。医師へと続く道をあえて踏み外そうとしている25歳と、「世界最強の投資銀行」を辞めた45歳。親子ほど歳の離れた2人はYouTubeで意気投合し、現在、何の因果かともに作家業に打ち込んでいる。
そこには、大勢の人が求める安定という道を進むよりも、「おもろい」難題を見つけて解決を目指す灘出身者の共通点が見出せる。
しかし、話を聞き進めていくと、どうやら彼らの言う「おもろい」とは自分たちの満足を求めることだけではなく、より深い意図があった。
10月に上梓された小説『きみのお金は誰のため:ボスが教えてくれた「お金の謎」と「社会のしくみ」』には、田内氏の思いが詰まっている。
この小説を「人との繋がりが大事ということを伝えたい作品」だと評する青松氏に、田内氏もうなずく。
年金問題にしても、物価上昇の問題にしても、お金の問題に見える。解決するためには投資でお金を増やそうと考える。しかし、お金だけ見ていると失敗してしまうと田内氏は言う。
「問題解決の糸口は、お金自体ではなく、お金によって人々がどのように繋がっているか。それがわかれば、経済は難しくないし、何をすべきか見えてくるんです」
『きみのお金は誰のため』を完成させるまでに、修業も含めて4000時間以上費やしたそうだが、「そういう時間は、一番おもろいじゃないですか」という田内氏は人生を楽しんでいるように見えた。「今度は、岸田総理に読んでもらいたいですね」と彼は笑って言った。
YouTuberをしているのも、自身の書いた本や自身の考えをより広めて注目を集めるためである。
後日、筆者が実際にYouTubeで田内氏について検索していると、自民党の西田昌司参議院議員の動画に行き着いた。彼は、岸田総理に今すぐ読ませたい本として、田内氏の『きみのお金は誰のため』を挙げていた。
情報量が多い「人間」の面白さを追求
一方、青松氏も今年8月にナナロク社より初の短歌集『4』を出版している。
実は現在、学生を中心にエンタメの世界で活躍する彼が、YouTuberになる前から熱中していたのが芸術性の高い短歌であった。
短歌に熱中するのも「ことば」を大事に扱い、こだわる特性があるためだろう。彼がYouTube活動を始めたのも、「マイナーな短歌をやっているからこそ、今度はその反対の一番チャラくて有名になることをやってみよう」と思ったことがきっかけであった。
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