ド文系でも腹落ち「微分」を成り立ちから理解する ズボラな発想から緻密な予測をする数学が生まれた
東洋経済オンライン / 2023年12月11日 11時0分
微分・積分は「現代社会の礎」と言われるほど重要な数学理論であり、理解すれば「世界の見方がガラリと変わる」とも言われています。本稿は『見るだけでわかる微分・積分』より一部抜粋・編集のうえ、微分の成り立ちをたどることで理解を深めていきます。
ついに微分の登場! 戦争と大砲から生まれた数学
現代社会を支える微分積分ですが、その成り立ちをたどることで、より理解を深めることができます。ここでは、微分の成り立ちについてお話ししたいと思います。
微分の考え方が登場してきたのは、16~17世紀ごろのこと。実は、微分が発展する原動力になった最初のニーズは「戦争」でした。当時は大砲で敵を攻撃するのが最も効果的な戦いの手段だったのですが、砲弾を正確に敵に当てるために数学の力が必要だったのです。
もともと大砲は、軍人が勘と経験で撃っていましたが、それだと外すことも多くて困っていました。
数学を使って砲弾の届く距離などを正確に計算することができれば、命中率を格段に上げることができます。そのため、砲弾の軌道を正確に知りたいというニーズがあったのです。
この研究テーマで大きな成果を挙げたのが、ガリレオ・ガリレイです。彼は、砲弾の軌道を水平方向と垂直方向の2方向に分けて考えるとよいことに気付きました。
図表2-3に、砲弾の軌道についてのガリレオの考え方をまとめました。
まず、撃ち出された砲弾は、撃ち出された方角にそのまままっすぐ飛んでいこうとします。しかし、重力があるので、砲弾はだんだん下に落ちていきます。
この、「まっすぐ飛ぶ」運動と「下に落ちる」運動という2種類の動きが合成されて、砲弾の軌道が決まると考えたのです。
この研究がきっかけとなって、砲弾の軌道は放物線(=ものを投げたときのアーチ状の軌道)と呼ばれる数式で表されることがわかったのです。
砲弾の軌道がわかれば、砲弾がどれだけ離れた相手に当たるかどうかも計算で出せます。つまり、どれくらい近づけば敵に命中させられるかが正確にわかるということなので、これは戦略的に大変有利になります。
砲弾の“進む方向”を知るには?
砲弾の軌道の研究はさらに進みます。
どれだけ遠くまで届くかが計算できるようになったわけですが、今度はさらに、砲弾がどの方角へと飛ぶかも計算したいというニーズが出てきました。というのも、砲弾が進む向きは時間がたつと変わっていくからです。
図表2-4のように、砲弾の進む方向(図中の矢印)はたえず変わっていきます。砲弾が敵の城や船に命中するとき、どの方向から当たるのかによってダメージも変わってくるでしょう。
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