VWの中国向けEV、プラットフォームから現地開発 販売伸び悩みに危機感、開発期間を3割短縮へ
東洋経済オンライン / 2023年12月14日 16時0分
ドイツ自動車大手のフォルクスワーゲン(VW)が、中国でEV(電気自動車)の現地開発を加速している。
【写真】VWは安徽省合肥市にEVの開発・生産の一大拠点を築こうとしている。写真は研究開発子会社VCTCの完成予想図
同社の中国法人は11月24日、中国の研究開発子会社でエントリークラスのEVのプラットフォーム(車台)を開発し、中国市場に投入すると発表した。現地開発への切り替えにより、新型車の開発サイクルの30%短縮を目指す。
新プラットフォームの開発は、VWが2023年5月に安徽省合肥市に設立した全額出資子会社のフォルクスワーゲン・チャイナ・テクノロジー(VCTC)が担う。合肥市にはVWが75%、中国の江淮汽車が25%を出資するEV生産の合弁会社があるほか、中国の車載電池大手でVWが25%を出資する国軒高科(ゴーション・ハイテク)も本社を置く。
新型車を2026年から続々投入
VW中国法人によれば、新プラットフォームは(ドイツで開発された)「MEB」をベースにした、中国市場向けのEV専用プラットフォームとなる。それを採用した新型車を2026年から続々発売する計画だ。
MEBは「モジュール化電動プラットフォーム」を意味するドイツ語の頭文字を取ったもので、VWが開発した初のEV専用プラットフォームだ。同社はMEBを採用した第1号モデルの「ID.3」を2020年に発売し、その後も複数のモデルを追加してきた。
ところが、ID.シリーズに対する市場の反応はVWの期待値に届かず、とりわけ中国市場では売れ行きが伸び悩んだ。
中国の自動車市場ではEVシフトのスピードが非常に速く、消費者がEVに期待するニーズも欧米市場とは明らかな違いがある。財新記者の取材に応じたある中国メーカーの技術部門責任者は、VWの思惑が外れた背景を次のように解説した。
「ID.シリーズ(のデザイン)を見た中国の消費者は、それがVWのクルマだとすぐにわかるが、『EVらしくない』と感じるだろう。(自動運転機能など)クルマのスマート化の面で、中国の新興EVメーカーやアメリカのテスラに大きく見劣りするからだ」
VWの開示情報によれば、同社が2023年1月から9月までの期間にヨーロッパ市場で販売したEVは34万1000台と、前年同期比60.9%増加した。ところが、同じ期間の中国市場でのEV販売台数は11万7000台にとどまり、前年同期比の増加率はわずか3.9%だった。
ドイツの開発チームと調整不要に
エンジン車を含めたクルマの総販売台数において、中国はVWにとって世界最大の市場だ。EVの伸び悩みを座視するわけにはいかない。
VCTCが開発を主導するエントリークラスのEVについて、VW中国法人は「完全に現地化した開発プロセスと(中国が強みを持つEV向けの)部品調達基盤を組み合わせ、収益力を向上させたい」としている。
「中国の開発チームは、時差があるドイツの開発チームとの調整が不要になった。新車開発の効率をさらに高め、中国市場への投入サイクルを縮めていきたい」。VW本社の取締役で中国事業の責任者を務めるラルフ・ブランドシュテッター氏は、そう意気込みを示した。
(財新記者:安麗敏)
※原文の配信は11月25日
財新 Biz&Tech
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